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Limitless  作者: 神 賢一
第二章 Through the Dark

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第28話 everlasting dream

 希美が剛に対して驚愕し、恐怖とも言える感情を深めていた……そのタイミングだった。

 ≪対妖魔警報発令。対妖魔警報発令。妖魔出現場所は渋谷区代々木。推定妖魔出現数は500。特技科の生徒は特装具を着用、特装器所持の上、第1格技室に集合せよ。繰り返す。対妖魔警報発令……≫

 校内放送を聞いた剛と希美はお互いを見て頷く。

「星野さん、行こう!」

「はい、行きましょう!」

 二人は席を立ち上がり、本来なら食器はセルフサービスで片付けるのだが緊急事態と言う事でテーブルに置いたまま、食堂の出口から格技棟に向かって走り出す。


 格技棟のロッカールームで剛は特装具を取り出して装着し、特装器を右手に持ち、第1格技室に急ぎ足で向かう。

 既に何人も格技室に来ており、担任教師を目印にクラス単位で到着した順に3列縦隊で整列する。

 剛が1年Cクラスの列に並んだのとほぼ同じタイミングで希美も1年Aクラスの列に並び、目が合うと希美は無言で軽く頷く。

(希美にとってはトーフの時も特務実習は経験しているのだろうけど……俺としては、これが……初陣になる訳だ。)

 恐怖心なのか、武者震いなのか剛にも判別がつかなかったが、ブルッと身を震わせる。

 剛が列に並んで3分程でほぼ全員の特技科生徒が第1格技室に集合したようで、壇上に教員が上がりマイクで説明を始める。


 妖魔が現れた場所は代々木緑道――甲州街道から南に50mほど入り込んだ場所――に500体程が密集して出現しているらしい。トーイチから直線距離にしておよそ800m、走れば4~5分で到着する距離である。

 そこまで3学年5クラス、1クラス30人から32人の総勢約460人が3年Aクラスを先頭に、3列縦隊を保ったまま第1格技室から速歩で現地に向かう。

 剛達1年Cクラスは最後から3番目に出発し、その際に1年Dクラスにいる桐野と目が合う。

 桐野は左手に日本刀を模した特装器を下げ、灰色の戦国武将の甲冑のような特装具に身を包んでおり、剛に向かって右手を軽く掲げた。

 その桐野に対して剛は空いている左手を軽く掲げて返礼とする。

(やはり桐野は日本刀か……いや、仮初にも剣道経験者の俺がハルバードを選択している方が例外、だろうなぁ……)

 隊列に遅れないように剛は速歩で第1格技室から議事堂通りに出て南下する。


 現地に到着すると既に2年生、3年生が妖魔が居る場所から100m位の距離で包囲網を敷いていた。

 今回の特務実習は大型・強力な妖魔は出現しておらず、Dランクのオークが15体程いる以外はEランクのゴブリン・オークのみで構成されており、討伐の難易度は低いと言う判断から1年生――特にトーフ以外からの外部組――に実戦を経験させるため、上級生は支援に回ることになった。

 チームアップは5人1組で、同じクラスではなく経験者と未経験者を組み合わせるため、AクラスからEクラスまで同じ出席番号の者でチームを組む事になった。

 剛はD組の桐野と同じ組となり、翔は希美と同じ組となっていた。

 基本的にチームリーダーはAクラスの生徒が勤め、トーフ卒業生や武道――特に剣道の経験者を中心にフォーメーションを組み立てる。

「神野くんと桐野くんは剣道部、で合ってるよね?」

 桂と名乗ったAクラスの男子生徒が確認してくるが、剛は首を振って訂正する。

「桐野は主将だったから充分経験者だけど、俺は3年生の1年だけしか部にいなかったから期待に応えられないと思うよ」

 ふむ、と桂は少し考えるが、それに対して桐野が口を挟む。

「いや、神野は目が良い。攻撃されても見切りができるから充分戦えると思う」

 その言葉を聞いて、剣を持つ桂と桐野が前衛、剛とBクラスの北村と言う女子生徒が中衛、Eクラスの男子生徒の金森が後方警戒に決まった。全クラスが到着し、チームアップし、フォーメーション決めまで2分。フォーメーションが決まったチームから順に割り当てられた方面から妖魔との戦闘に入って行った。


 妖魔との戦闘経験がある桂が真っ先に切り込み、左側を桐野が支援、その後ろを剛が右、北村が左で包囲されるのを防ぎ、金森は小まめに背後を確認しながらついて来る。

 正面のゴブリンを桂が2体切り伏せた後、左から低い姿勢で突進してきたコボルトを桐野が逆袈裟の要領で切り上げると、桐野はうっと言う呻き声を上げた。

「桐野!どうした?!怪我でもしたのか?!」

「いや……手の、感触が……な……」

 斜め後ろの剛をチラっとだけ見た桐野は険しい顔をしており、直ぐに前に視線を戻す。

 剛は桐野の態度を不審に思ったが、その理由は直ぐに分かるようになった。

 桐野が1体のゴブリンを相手にしている時に後ろから別のゴブリンが顔を出してチームに向かって来たため、剛は反射的にハルバードの先端の穂先でゴブリンの胴体を貫く。

「うっ!」

 剛の手にはゴブリンの肉体を貫いたと言うぐにゃっとした感覚……剣道で面や胴を竹刀で叩いたようなパシン!と言う感覚とは全く違う、生き物を――妖魔が生き物なのか甚だ疑問ではあるが――斬り、突き、叩く感触……蚊やコバエを潰すのとは全く違う感覚に剛は唾棄するような嫌悪感を抱いた。

 胴体を貫かれたゴブリンはその一撃で命を失ったようで、燃え尽きた灰のように崩れて直ぐに跡形も無くなる。

(これが……妖魔を、倒す……って事か……)


 フォーメーションをスイッチして全員が最低1体は倒し終わったところ周りを見ると、妖魔は既に2~30体程度まで減っていた。

「よし、僕たちはこの辺で終わりにして、後は近いチームに任せよう」

 額の汗を拭いながら桂が戦闘終了を宣言する。

 僅か15分程の戦闘ではあったが、初めての妖魔との戦闘――下手をすれば命を落とすこともある――を経験した剛や桐野はかなり疲弊していた。

 中学時代の剣道の試合は3分。それの5倍の時間、しかも命を懸けた真剣勝負である。疲弊度は単純比較できるものではなく、肉体的にも……何より精神的に消耗していた。


 臨時のチームは解散し、剛がクラスの集団に戻ると既に翔が戻って来ていた。

 翔はと言うと……剛達に比べると全然疲れた様子を見せていない。

「そっちは……大した事無かったのか?」

 翔に尋ねると呆れたような顔で答える。

「あー……何つーか、出る幕無しと言うか。一薙ぎ一薙ぎで5体以上の妖魔を消し飛ばすんだぜ……とんでもねぇや」

 聞けば希美は1人で50体を超える妖魔――その中にはDランクのオークも含まれる――を倒したと言う。

「想像はしてたが……やっぱり凄いな、星野さんは……」

 とは言え、何十回も希美が戦う場面に遭遇していた剛からすると、想定の範囲内と言えた。


 トーイチに戻った剛達は、特務実習が昼休みの時間帯に行われたこともあり、5時限目の残り時間は休憩に充てられた。

 格技棟のロッカールームでロッカーに特装器を仕舞い、特装具を外して壊れているところが無いかチェックして問題無い事を確認してロッカーに格納した。

「剛ちゃんの事だから、星野さんと一緒に戦いたいから俺と変わってくれーーって言うかと思ってたよ」

 茶化しながら翔が剛に話し掛ける。

「ははっ、そうしたいのは山々だったけど、こればっかりは代わってもらう訳にも行かないだろ?」

 そう言うと剛はロッカーの扉を閉め、翔と一緒にロッカールームを出ると、反対側のロッカールーム――女子生徒用の――から出て来た希美と奈緒にばったり出くわす。


「翔から聞いたよ。想像通りと言うか、かなりの活躍だったみたいだね」

 剛が希美に声を掛けると横から奈緒が茶々を入れる。

「あーーっ、翔んるんダメじゃーん。男のお喋りは嫌われるんだよーー」

うるせえよ。つーかその呼び方いい加減止めろ」


「あの二人はお約束ね……神野くんは大丈夫だったの?」

 希美が翔と奈緒を見遣り、剛に声を掛けて来た。

 その言葉に剛はニヤッと笑って答える。



「この程度でビビッてたら、君の隣には立てないだろ?」

第28話 『everlasting dream』 浜崎あゆみ

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