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Limitless  作者: 神 賢一
第二章 Through the Dark

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第21話 Where is my word?

「はい。剛くん、反省会です」

 1年Cクラスの教室に戻った二人だが、翔の声が4月の陽気に対して2月の冷気に感じる温度をはらんでいる。

 翔は剛の席の一つ前の席の椅子に黒板を背にして座っている。それに対して剛は自分の席の椅子に正面を向いて……翔と向き合う形で座っている。


「はい……で、何でしょうか……」

「何でしょうかぁ?!!自分が希美タンに何言ったか覚えてますかぁ?!」

 バンバンと翔が机を叩きながら剛を詰める。その様子に引き気味になった剛は顔を引き攣らせながら先程の自分の発言を思い返す。

「えぇぇぇっと……まずは自己紹介をして……」

「盛大に事故った、事故・・紹介でしたねっ!」

 えぇー、と剛は心の中で不満を表すが口にするより前に翔が畳みかける。

「Cの剛って何よ!苗字はどこ行った?シーの?しいの?今希美タンの頭の中ではキミは『しいのごう』でインプットされてる可能性が高い!」


 うぐっ、とぐうの音も出ない剛に翔が更に追い打ちをかける。

「で、その後何て言ったの?一字一句正しく思い出せる?!」

「それは……手合わせを……模擬戦をお願いしようと誘って……」

「で、何て言ったんだっけ?」

「星野さん、俺と付き合ってよ、だったかと……」

「そーれーのーどーこーにー!手合わせとか!模擬戦とか!含まれてるのよ!只のナンパよナンパ!!」


 自分のやらかしに徐々に気付いた剛は頭を抱えたくなるが、翔の追撃は止まらない。

「そして最後に言った言葉、思い出してみなさい!!」

「あー……えーと……キミと、やりたいんだ、だったかな……」

「変態。変質者。女の子に『やりたい』なんて言っちゃう剛ちゃんはめぐみんにシバかれると良いと思うんだ」

「翔、それは酷ぇ……」

「お前の発言の方が酷過ぎるわっ!!」



 翌日。

 さすがに二日連続で翔と一緒になると言うことは無く、剛は一人で武蔵小金井駅から中央線快速で新宿駅に向かう。

 電車に乗っている時間は30分程度だが、西新宿のトーイチまでは新宿駅で降りてから徒歩で15分以上歩くことになる。このため、自宅から駅までの徒歩の時間も加味すると始業のホームルームの開始時間の8:20から1時間ほど前の7:15頃には家を出ることになる。

 車窓から流れる中央線沿線の景色を眺めていると、武蔵小金井駅から新宿方面へ4駅目となる、1年前に厄災に見舞われた吉祥寺の駅前が見えてくる。

(本人にとっては一回限りなんだろうけど……俺はここで何回……何十回、希美に助けられたのか……)


 その希美に対しては、昨日、翔から指摘された事を思い返して赤面する想いであった。

(これは……希美に謝っておいた方がいいかなぁ……)

 何となく顔を合わせ辛い剛ではあるが、時間が経てば経つほど遺恨を残すような気がしている。

(うーん……また変な事を言い出さないように、何を言うか事前に考えおいた方がいいかな……)

 あれこれ考え込んでいる間に電車は新宿駅へと到着しようとしていた。



 トーイチ2日目の最初は特装器、特装具の製作を行ってもらうための、特装科3年生からのヒアリングが行われた。

 ヒアリング内容は個性の色に始まり、希望する特装器、特装具のスタイルや、武道の経験から果ては食の好みと言った何が関係あるのか不明な内容までに渡る。

 剛は以前から決めていた通り、特装器はハルバード――穂先まで2mから3m程の槍に斧頭と突起が付いた中世から近代のヨーロッパで歩兵が使用していた武器と、特装器が重くなる分特装具は動きやすく軽装な物を希望した。

 緑の個性と重量武器の相性は良く、法力を込めるだけで数倍の重さで敵に叩き込む事ができる。その代わり、赤の法力による火炎系や青の法力による冷却系の追加効果は望めない――もっとも剛にはそのような個性は無いのだが。

 そして翔はと言うと、青の個性を活かすためにレイピアのような細身の剣と急所と大きな関節をしっかり護るパーシャルなアーマーを希望していた。

(そう言えば翔が特技を使うところって見たことが無いな……)

 剛としては生まれながらの個性持ちである翔がどう言うスタイルで戦うのか、今更ながら興味を持つのであった。



 授業は午前4限、午後2限の6限で行われ、今は6限目が終了し、就業のホームルームも終了した放課後である。

 そして剛は疲れ果てた状態であった。

(まさか授業初日から格技……それもみっちり1時間休み無しでやるとは……)

 剛達のCクラスは6限目が格技の授業であり、各自の力量を見極めるために木剣を使用しての100回の素振り――これは剛にとっては比較的楽なメニューであったが――や、25mダッシュ20本、反復横跳び5分間、10分間の3km走をほぼ休憩無しで行われたため、余程体力自慢の生徒以外はほぼ全員ぐったりとしていた。

「かけるー、生きてるかー」

 剛はフラフラになりながらも翔に近づいて声を掛ける。

「むーりー、もう死んじゃう。剛ちゃん家までおぶって行って」

 机に突っ伏したまま翔は無茶な事を言う。

「共倒れになるだけだよ。それより、Aクラスに行くけど翔はどうする?」


 足元が覚束ない状態で、剛は翔を伴って2日連続で1年Aクラスの教室に向かった。

 二つ隣のクラスなので距離にしたら15m程でしかないのに四苦八苦しながらAクラスのドアの前に辿り着くと、そのタイミングで逆のドアから希美が出て来て剛達と反対の方向に歩き出す。

「星野さん、待って!」

 重くて痛む足をそれでも前に運びながら、剛は希美に駆け寄る……と言う訳には行かず、普通に歩く速度で近付くのがやっとであった。

 掛けられた声に振り返った希美は剛の姿を見止めると露骨に嫌そうな顔をする。

「何、ですか?」

 氷点下まで冷え切ったような希美の声を聞いた剛はびくっ!と身をすくませるが、目的を果たすために身を引き締めて希美に正対する。

「星野さん、昨日はごめんなさい」

 そう言うと剛は直立した状態から綺麗に90度頭を下げる。

「始めて話をする緊張から、後で翔に指摘されたら自分でも何を言ってるのか分からない事を言ってしまって。大きく誤解を与えてしまったと思うし、気分を害したと思っています。本当にすみませんでした」


 はぁっと息を吐いた希美は呆れたような表情をして――実際に呆れていたのだが――剛に向き直る。

「それでお終い?分かったから私は行くけど」

 その声で許されたと思った剛は下げてた頭を上げ、表情を明るくして希美に昨日伝えたかった事を話す。

「星野さん!俺と立ち合い……模擬戦に付き合ってください!!」

「お断りします」



「まあ、剛ちゃん、何だ……その、気を取り直そうぜ」

 うの体でCクラスの教室に戻った剛は、分かりやすい位落ち込んで机に突っ伏していた。

 秒殺どころか瞬殺……少しは考えてもらえるだろうと甘い考えだった剛は、突き付けられた現実に言葉も無く項垂れていた。

 その状態を生温かく(・・・・)見ていた翔は剛に声を掛ける。

「だからと言って、諦めちゃうの?」

 その声に漸く顔を上げた剛は、キッと翔を睨むように見上げる。

 その様子を見て翔は言葉を続ける。

「諦めたらそこで試合終了ですよ」

「お前は安西先生かよ……まあ、諦める気は無いし、受けてくれるまで何度でも頼んでみるさ」

 そう言うと剛は立ち上がり――疲労からよろめきながら――カバンを掴み、顔で翔を促す。


「帰ろうぜ。電車の中で作戦会議だ。ストーカーはまだ始まってもいないからな!」


第21話 『Where is my word?』 ザ・シャムロック

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