第112話 パレード
≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!推定妖魔出現数は12,000から15,000体!!東京第一高校の特技科生徒は特装具を着用、特装器所持の上、第1格技室に再集合せよ!!繰り返す!対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!――≫
(12,000から15,000体だって?!今までより5割増えてるじゃないか!!)
だが、驚きはあるが剛に焦りは全く無かった。
これまで3年に渡り4人で鍛え上げて来た戦技と特技。
更には入間が製作した比類無き性能を誇る特装器と特装具。
Aランク妖魔であるワイバーンですら討ち倒す事が出来る4人にとって、数は全く問題では無かった。
問題となるのは――やはり、天道光である。
特装具を身に纏い、特装器を手にして第1格技室に駆け込んだ剛は直ぐに翔、希美、奈緒と合流し、クラスごとに整列しようとしたところを御魂に止められる。
「神野くん、星野さん、本田くん、鈴木さん。4人は混戦になる前に直ぐ出動してください」
現在の状況と4人の実力を充分に把握している御魂としては、特に剛や希美が得意とする大規模遠距離特技が使える状況と言うのが妖魔の数を減らすのに最も有効と考え、先行して出動するように指示する。
「分かりました。行こう、みんな」
剛を先頭に希美、翔、奈緒は第1格技室から屋外に躍り出ると、妖魔の大群が闊歩する西新宿の路上に駆け出していく。
〈溶岩弾!〉
〈火炎矢!〉
〈華炎嵐 !〉
〈空気矢!〉
右から剛、希美、奈緒、翔の順に並びながら妖魔の群れに駆け寄り、持ち場となる方向に向けて特技を発動させると、それぞれが30体から50体を超える妖魔を一度に殲滅していく。
ただ、今回出現した妖魔の数は推定12,000から15,000。全体の2%にも満たず、妖魔側からしたら蚊に刺された程度でしかない。
(だが、その蚊が最も多くの人間の命を奪っている……蚊の一刺しから、全体を崩していけば良い!)
剛は駆けながらハルバート型の特装器を高く掲げ、赤の法力を込めて特技を発動させる。
〈隕石群!!〉
西新宿の高層ビル群の間の開けた空に100を超える黒い点が現れると、即座に灼化して赤い燦きを放つと音を超える速さで落下して地面に衝突し、周囲は溶鉱炉のような熱と爆風を超える衝撃波に満たされる。
サイクロプスやケルベロスを含む200体を超える妖魔がその熱で、生じた炎で、放たれた衝撃で、存在を手放して灰に塵にと消し去られていく。
その様子を目の端に捉えた希美は長剣型の特装器を上空を旋回するワイバーンに向け、黒の法力を込めて特技を放つ。
〈法力吸引!〉
希美が放った特技はワイバーン3体を効果範囲に捉えるとその生命力とも言える法力を奪い去り、以前であれば瀕死に近い状態に陥らせていたが、4月にトーイチ入学と同時に入間の手によりアップグレードされた特装器の増幅力によって効果は倍増しており、捕らえられたワイバーンはその場で生を失い落下しながら塵と消えていく。
すると希美は奪い取った法力に自らの法力を加え、特装器の切っ先を最も妖魔の存在が濃い場所に向けると、特技を発動させてそれを静かに置く。
〈――重力特異点――〉
特装器の先端から発せられた黒い霧は妖魔の密集地帯で渦を巻きながら収束し、野球のボール程の大きさになると形容しがたい凶悪なまでの重力を生じさせ、妖魔を含めたあらゆる物を吸引して重力の井戸に強引に突き落としていく。
特異点に強引に引き寄せられた妖魔は数十Gと言う途轍もない重力に曝され、その暴力的な重力に逆らう事が出来ずに圧壊して塵も残さず吸い込まれていく。
300体を超える妖魔を道連れにした特異点は臨界点に達すると、月にまでも届きそうな圧倒的な光を放ってその姿を散らしていく。
剛と希美とは逆方向になる東に向かった翔と奈緒は、北通りと東通りが交わる新宿警察署裏交差点に、サイクロプスやトロルを含んだ300体を超える妖魔が屯しているのを目にすると、奈緒がハンマーで小型妖魔を纏めて消し飛ばすと、奈緒が獲り零したゴブリンや飛来するグレムリンを翔が細かいステップを刻みながら討伐する。
議事堂北の交差点に差し掛かったところで奈緒がハンマーを高く掲げ、赤の法力を特装器に練り込む。
〈爆裂!!〉
奈緒が特技を発動すると交差点に設置されている信号機のリングの中央上空5m程に赤い光点が渦巻くように現れ、次の瞬間半径30mに達する巨大な爆炎が交差点のリングを巻き込みながら周辺を劫火に包み込む。
爆心付近に居た100体を超える妖魔は爆炎が発生すると瞬く間に煙も残さず焼失し、その周辺に居る100体以上の妖魔も爆裂の炎に襲われて燃え上がって灰と化し、爆炎から逃れた妖魔も爆風に身を晒されて弾き飛ばされてビルに衝突して原形を残さず塵と消えたり、爆発の影響で損壊したビルから落下した瓦礫に頭上から襲われて押し潰されて、爆裂の劫火と爆風が収まった後には1体の妖魔も見る事が出来なくなった。
だが、剛達4人が倒した妖魔の数は1,200を超えた程度で、漸く全体の1割程度となる。
剛や希美、奈緒が強烈な特技を発動させて生じた空白地帯も、他の場所に居た健在の妖魔が列を成して歩んできて空白を埋める。
安全な場所から遠巻きに眺めていた人々は、宛ら妖魔のパレードが行われているような感覚に捕らわれていた。
(今のトーイチ生なら数だけの妖魔に後れを取る事は無いだろうが……だがここまでの数となると厄介だな……)
先行して出動した剛達から遅れて、徐々にチームアップしたトーイチ生が西新宿の路上に繰り出してきているが、自分達の20倍を超える妖魔の数の暴力に気圧され気味になっている者も見受けられた。
「希美!!」
剛は単に名前を呼ぶ。だが、希美はその想いを即座に受け止める。
「分かったわ!剛!!」
〈溶岩|弾〉bullet》!!〉
〈細氷!!〉
真逆とも言える剛と希美の個性が発動し、灼熱なのに極寒と言う誰しも理解できないその場が生まれ、本能のみで生きており思考を持たない妖魔はその奔流に巻き込まれて消し去られる。
トーイチ生がいるとは言え、ありうべからざる妖魔の大群を目の前にして剛と希美は100体でも200体でも持てる力で亡き者にする。そのためにハルバードの特装器を。片手長剣の特装器を。振るい続けるのであった。
剛も、希美も。特装器を振るい特技を繰り出し、更なる妖魔を消し去っていたその時であった。
西新宿駅直結の40階を超える高層ビルが、突如崩壊した。
その場にいる誰もが、何事が起ったのか、何者が成し得たのか……
圧倒的な破壊の[力]を、その禍々しい[圧力]を、そして近づけば……死。それ以外を感じることが出来ない、そんな理解不能な存在を何百人もが見とめていた。
だが、剛と希美は違う。何者が、何を行ったか。確信を持って駆け寄って行く。
(ここだ!これからだ!俺が何度も転生した事の理由、目的。成し遂げなければいけない理由が、目の前に現れる……天道!俺が、キサマを、討つ!!)
飄々と吹き荒ぶ風の向こうに、小さき恐ろしき悍ましき猛き忌わしき存在が、剛に向かってニマニマとした笑みを浮かべていた。
「ボウヤの方かぁ。女の方が絶望に導くには面白そうだったが、致し方無い……死ね。絶望の淵で死ね」
剛は天道のその言葉に、凶悪な笑みを返して宣言する。
「命乞いをするのはお前の方だ、天道光!俺は、お前を討つ!そのためにここに来た!……行くぞ!!」




