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Limitless  作者: 神 賢一
第六章 悪の華

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第106話 Judgment

 剛は初夏の日差しを避けるように、西新宿の地下通路をトーイチに向けて歩いていた。

 国立東京第一高等学校――トーイチ――に入学して既に二か月が経過しており、暦は6月も中旬に入っていた。

 この日は第2金曜日――6月11日。前世までの記憶を頼るのであれば、明日は戸山公園箱根山地区に妖魔が出現する予定となっている。

(屋外模擬戦では露骨すぎる……だが、何かの方法で新宿周辺に居ないと緊急の特務実習すら参加できない……)

 屋外での模擬戦を理由に現場近くに誘い出す手段は昨年の吉祥寺の災禍で既に使っているため、同じ手段でまた妖魔が出現するとなると流石に全員裏があると考えるであろう。 そのため、剛は希美達をどう言う理由で誘い出すか、数日前から悩んでいたのであった……


「剛、明日は土曜日で本来休みですが、模擬戦に付き合ってもらえませんか?」

「えっ?!」

 その日の昼休み、いつもの4人で学食で昼食を取っていた時に希美が声を掛けて来て、その内容に剛は驚かされる。

 数日前からどう言う理由を付けて希美達を誘おうか迷っていたのに、希美の方から誘って来たのは僥倖ではあるが、余りのタイミングの良さに驚きを禁じ得なかった。

「あ……えっと、明日は空いてるから、大丈夫だよ。朝からで良いのかな?」

 剛の答えに希美は黙って頷く。


「えぇ~~っ、あたし明日は家族で出掛ける予定~~」

「悪ぃ剛ちゃん、俺も母ちゃんからの頼みで朝霞の爺ちゃん行かなきゃなんねぇんだ」

 二人の言葉に剛はあれっ?と思う。前世までであれば戸山公園の屋外模擬戦に二人とも参加していたのだが、今回に限って何故か二人とも参加できないと言う。

「えーっと……そうすると希美と俺の二人だけって事になるのか……?」

 恐る恐ると言った感じで剛は希美の方に視線を向けるが、希美は澄ました顔のままである。

「二人に用事があるなら仕方ないですが、私は別に剛と二人で問題無いですよ」

 事も無げにそう言う希美に剛は唖然とするのであった。



 翌日6月12日土曜日、午前9時前――

 剛が格技室の端末前に到着すると既に希美が来ていて、第7格技室の予約を済ませていた。

「おはよう、希美。待たせたみたいだね」

 希美は首を軽く傾げて微笑む。

「おはようございます、剛。まだ時間前ですから大丈夫ですよ」

 二人は挨拶を交わすと学食に向かって昼食の予約を行い、格技棟に戻って第7格技室で模擬戦を始める。


 準備運動を済ませた後に先ずは剛と希美の二人で模擬戦を実施し、二人の存在に気付いた上級生が手合わせを依頼して来たので順に1対2や1対3で模擬戦を行い、1時間程で一通りの相手との模擬戦を終了した剛と希美は少し休憩を入れていた。

「そう言えば……何で希美は今日模擬戦を行おうと思ったの?」

 昨日から疑問に思っていた事を剛は尋ねる。

 剛の疑問に希美は首を傾げて暫しの間思案すると、真顔で剛を見据えて口を開く。

「ここ数日、剛が何か考え込んでいるのは分かってました。それが何なのか……余り他人に言えないような事であれば、二人っきりで話した方が良いと思いまして」


 その言葉に、剛は模擬戦用の木製ハルバードを強く握りしめて俯く。

(やっぱり……気取られていたのか……)

 暫しの間その状態を崩さない剛からの答えを、希美は静かに柔らかい視線で待ち続ける。

 剛が顔を上げて希美の方に視線を向け、口を開こうとした時であった。

「ここにいたのですね、神野くん、星野さん」

 剛と希美が声の主に目を向けると、普段とは違う厳しい顔をした御魂が駆け寄って来ていた。

 御魂は剛と希美のすぐ近くまで駆け寄ると、声を潜める。

「特装を準備してください。特務実習で出動します」


 特装具を装着して特装器を手にして地下駐車場に向けて駆けている中、剛はやはり妖魔が出現したかと思い、希美は剛が気にしていたのはこの事かと納得する。

 剛と希美が地下駐車場に到着した頃、漸く校内にアナウンスが響き渡る。


 ≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区戸山!推定妖魔出現数は2,000から2,500体!!校内にいる特技科生徒は特装具を着用、特装器所持の上、地下駐車場に集合せよ!!繰り返す!対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区戸山!――≫


「特別警報だって?!」

 そのアナウンスに剛は驚愕する。前世までであれば戸山公園箱根山地区に出現する妖魔の数は300体程度で、その数であれば特別警報では無く通常の警報。

 だが、今回出現した妖魔の数はその7倍から8倍で、小金井公園の八分の一程度の広さの箱根山地区に同程度の妖魔が出現したと言う事は、すぐに公園の外にも妖魔が溢れだすと言う事である。

 これまで繰り返して来た転生の中で何十回も訪れていた場所だけに剛は良く知っているが、公園の周辺には団地・アパートや戸建て住宅、大学キャンパスに研究施設などがひしめいており、討伐に時間が掛かればその被害は甚大なものとなり得る。


「我々が先行して数を減らします。その後校内にいる特技科生徒で包囲して被害を食い止め、SUAD本隊の到着を待ちます」

 赤色灯を灯してサイレンを鳴らし、現場に急行する装甲輸送車の中で御魂が説明する。

「でも、御魂先生は何故特別警報が出る前にその事を……?」

 希美に尋ねられた御魂は漸くいつものニコニコ顔を眼鏡の奥に取り戻す。

「私は現役のSUAD隊員でもあるんですよ。妖魔出現の速報は詳報が得られる前に、即座に私の所に連絡が来ます。困ったものですねぇ」


 箱根山の真北当たりまで来ると既に路上にまでゴブリンやコボルドが溢れ出しており、装甲輸送車は十数体の小型妖魔を跳ね飛ばして停車し、後部ハッチを開けて御魂、剛、希美の順で飛び降りる。

「私は北に向かいます。神野くんと星野さんは南側の妖魔をできるだけ討伐してください!」

 再び真顔に戻った御魂が二人に声を掛けると花の広場と呼ばれる方に駆けながら特技を放ち、妖魔を駆逐していく。

 顔を見合わせた剛と希美は頷くと、箱根山方面に走りながら特装器を振るう。


 〈溶岩(lava)(bullet)!!〉

 〈(diamond)(dust)!!〉


 素早く数を討ち減らす事を優先した二人は遠距離範囲殲滅型の特技を素早く発動させて、青々とした葉を茂らせた木立に紛れる事も無く存在している妖魔を数十体ずつ殲滅していく。

 小型妖魔を討伐しながら先へ進むと、箱根山の山頂付近に人影のような物が視界に入る。

「剛!あれを!」

「……修羅か?!」

 剛は剛力斬で近場の妖魔を纏めて弾き飛ばすと特装器を掲げて法力を込める。



 〈隕石(meteor)(swarm)!!〉



 箱根山の上空に無数の黒い点――入間の改装により威力が向上し、100個近い隕石が発生して瞬く間に赤く熱を放ち、音を超える速度で落下し始める。

 すると山頂に居る妖魔と思しき存在は真っ直ぐ腕を上げて掌を上空に向けると、その1m程上に半径10m程の黒い円盤を生み出す。

 落下してきた隕石はその黒い円盤に衝突するが、激しい衝撃波を放つも突き抜ける事が出来ずに、円盤の外に落ちた隕石だけが地面を坩堝に変えていく。

「防がれただと?!」

 剛はこれまで必殺の特技として発動してきた隕石群が防がれた事に驚愕し、忌々し気な視線を箱根山頂に向けた。


 〈飛翔(leaping)(slash)!〉

 一瞬手を止めてしまった剛を横目に、希美は特技を発動させて20体程の妖魔を空気の刃で切り裂く。

「剛!これで相手は暫く山頂から降りられないわ!その間に他の妖魔を倒しましょう!」

 希美から発破を掛けられて剛は気を取り直し、箱根山の麓に群がる妖魔を討伐するのであった。

第106話 『Judgment』 BREAKERZ

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