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Limitless  作者: 神 賢一
第六章 悪の華

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第103話 Don't Stop Me Now

 入間にメンテナンスとアップグレードを依頼していた特装器を手にして、剛達4人は驚きの表情を隠せなかった。

 希美の長剣は刀身が15cm程長くなっており、それでいて以前よりバランスが更に良くなり振った際の違和感は感じられなそうな仕上がりである。

 翔のレイピアも10cm程刀身が延長されており、元は片刃だった物が諸刃に変更されていた。

 奈緒のハンマーは1割程ヘッドが拡大されており、より一撃の威力が増す造りになっている。

 そして剛のハルバードは柄が20cm程長くなっており、対して斧頭は2、3cm程幅が狭くなりうねりが大きくなっていた。


「どうだどうだ?見た目や武器としての性能だけでなく、妖魔の生体を部品として使える場所が今までより増えているから特技の威力も増しているぞ。後で試してみるが良い」

 そう言うと入間は腕を組んで胸を自慢げに反らす。

「特技の威力も増しているって……」

「ああ。パワーゲインが今までは5倍くらいだったと思うが、7倍……いや、8倍くらいになっているはずだ」

 剛の問い掛けに入間は事も無げに答えるが、4人はその答えに驚愕して言葉を失う。これまででも他の特装器に比べて倍近い特技の増幅を見せていたのだが、それが3倍近くまで向上していると言うのである。

 入間はニヤリと笑みを浮かべると、剛、希美、翔、奈緒の順に顔を眺める。

「まあ、第3か第4の格技室で実際に試してみれば判るさ。どうせこの後行くんだろ?」


 元から考えていたため入間の言う通りと言う訳ではないのだが、4人は入間の元を辞した後に学食で昼食を取った後、第4格技室に向かった。

 30m程先に的がある射撃場型のブースに入ると、先ずは剛から特技の威力を確認する事にした。

(5倍くらいが8倍くらい……今まで12個だった事を考えると……)

 剛は特装器を的に向けて法力を込め、大きく息を吸い込んでからふっ!と鋭く息を吐く。


 〈溶岩(lava)(bullet)!〉


 特技が発動すると20個の拳大の溶岩が発生して次々と的に衝突していく。

 従来を遥かに凌駕するその威力に、剛は思わず右腕で目を覆ってしまっていた。

(……本当に途轍もない威力になっているじゃないか……あの人こそバケモノだよ……)

 その後希美が火炎矢、翔が空気矢、奈緒が爆裂――を発動させようとして翔にチョップを喰らい、仕方なく奈緒も火炎矢を発動すると、やはり今までの倍近い本数の矢を生み出した。

「これは……状況によっては威力をかなり絞らないと、かえって危ないですね……」

 希美の言葉に剛と翔、そしていつもならふざけた言動をする奈緒ですら、神妙な面持ちで頷くしか無かった。



 トーイチに入学して暫くの間は特装器のアップグレードを試す機会に恵まれなかった。

 剛は自分の過去――前世以前の記憶と照らし合わせ、ゴールデンウィークが明けた日の5月6日に代々木緑道での特務実習までは都内に対妖魔警報が発令される事はないと知っているのだが、昨年の三校合同夏季特別講習が行われた日のように過去の記憶と一致しない妖魔出現が発生しており、油断はできない状況である事を理解していた。

 いつ発令されるか分からない対妖魔警報に向け、剛達はトーフ在学中も行っていたように毎日のように――と言うより本当に登校日は毎日――放課後は模擬戦か特技訓練を行い、更に技術に磨きをかけて行った。


 ゴールデンウィークに入ってからも、特に家族での予定が無かった剛達4人はトーイチに集合し、模擬戦を繰り返していた。

「あれぇ?今日って彼ぴっぴの誕生日じゃなかったっけ?」

 本格的にゴールデンウィークに入った土日を過ぎた月曜日――5月3日、奈緒が思い出したかのように口にする。

 トーフ時代は流石に休みにしていたのだが、トーイチに入って初めて祝日であるその日も模擬戦を行っていたため、初めて4人で顔を合わせたタイミングであった。

「あ、うん……そうだよ」

 急に言われて気まずそうな感じで剛が答えると、奈緒は更に思い付いたように言葉を続ける。

「そして、明後日は希美んみんの誕生日でしょ?」

「えっ?えぇ、はい。そうですよ」

 希美も急に振られて少し驚きながら返答する。


 すると奈緒が満面の笑みで腰に手を当てて胸を張った。

「よ~~し!じゃあ明日は彼ぴっぴと希美んみんの真ん中バースデーのお祝いだ~~♪」

((真ん中バースデー??))

 剛と希美は顔を見合わせた。一部女子などでは知られたイベントなのだが、剛も希美もそう言ういわゆる陽キャ的な事情は極めて疎く、奈緒が言ったような事は全く頭の片隅にすら無かった。

「ふーん……真ん中バースデーか。悪くねぇんじゃねぇか?」

 剛と希美は翔の顔を瞬時に見る。何お前知ってんだ、と言う顔を向けるのだが、当の翔は涼しい顔で口を開く。

「まぁそんな特別な事する必要もねぇだろ。みんなでメシ食いに行くだけでも良いんじゃね?」


「え~~っ、デートだよ~~デート~~!」

 翔が言ったメシ食いに行くだけ(・・)と言う言葉に奈緒が不満を漏らす。

「だからお前は誰とデートする気だよ」

 翔が突っ込むと奈緒は顎に指を当ててん~と考えると、顎に当てていた指を立てて笑みを浮かべる。

「希美んみんと彼ぴっぴと翔んるん!」

「ちょっと何言ってんのか分かんない」


「まあでも、お昼を学食ではなく外で食べて、どこかに出掛けるだけでも気分転換には良いかもしれませんね」

 不毛な会話を繰り広げる翔と奈緒を取り成すように提案する。

「そうするとどこに行くか、だな……」

 少し思案した剛は、前世においてゴールデンウィークが明けた土曜日に4人で出掛けた事を思い出した。

「そうだな……中野に行ってみるとかどうだろう?」


 中野、と言う具体的な場所を聞いて3人は思案する。希美は兎も角、意外な事に翔も奈緒も殆ど中野には行った事が無かった。

 とは言え二人は中野がサブカルチャーの街である事を情報としては知っており、暇を持て余す事は無さそうだと考える。

「中野、か……悪くねぇんじゃねぇか?」

「美味しい物いっぱい食べられそうでいいねぇ~~」

 翔と奈緒の答えに剛は満足そうに笑顔を浮かべて頷くと、希美の方に向き直る。

「希美もそれで良いかな?」

 剛から尋ねられて、希美としては正直良く分からない場所なので委ねる事にする。

「ええ、構わないです。何があるのか楽しみですね」



 翌日、5月4日――

 その日は1日休みとして、模擬戦は週末土曜日に振り替える事にしたため、朝10時に中野駅北口で待合せにしていた。

 12、3分前に到着した剛は待合せ場所で辺りを眺めていると、中野サンモールに足早に向かう奈緒の姿を目にする。

(これは……入口直ぐのたい焼き目当てだな……)

 前世と変わらぬ行動を見せる奈緒に対して剛は可笑しみを感じ、苦笑しながらその後姿を見送る。

 数分経つと翔が、そして希美が待合せ場所に現れた。


「奈緒は……まだかしら?」

 希美が辺りを見回すが、当然奈緒は既にサンモールに向かっているため見える範囲には居なかった。

「じゃあ、行こうか」

 剛が希美と翔を促すが、奈緒がいない事で希美が声を上げる。

「剛、ちょっと待って。奈緒がまだ来てないわ」

 その当然の疑問に、剛はニヤッと笑って答える。

「大丈夫。行ってみれば分かるから」


 目的の場所は中野サンモールのアーケードに入って1分どころか15秒程で辿り着く。

 丁度開店したばかりのたい焼き屋で奈緒がたい焼きを買い終わり、店から出てくるとかじり付こうとするのが目に入った。

「ほらね、居たでしょ?」

 見付けられた奈緒は状況が理解できず、たい焼きを齧り付こうとした姿勢のまま固まってしまった。


「何で分かったの?!剛、あ、あんたエスパー?!超能力者?!」

第103話 『Don't Stop Me Now』 Queen

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