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第9話 リア充

「気持ちいいーー」


俺たちは榛名湖へ来ていた。

高崎市内は自然が少なくて、エルフには居心地が悪いだろう。

湖はキレイ…とはいえないが、気分転換になるだろう。

以前からあみと約束していた場所に、三人で遊びに来ていた。


高崎駅からバスに乗って、湖に到着した。

水面に流れる風が涼しい。


「日本にも、自然はあるのだな」

「群馬は田舎だからねえ」

「車が欲しいな」


早く18歳にならないかな。

免許取ってあちこち行きたい。

安い車を買って、草津の方とか行ってみたい。


隣に居るのは…。

俺は無意識にカモミールの姿を思い浮かべていた。


「裕也バイクは?カッコ良くない?」

「危ないから嫌だ」


事故ったら、死にそうな気がするし。

のどかな風景を眺めていると、パカパカと馬が馬車を引っ張っている。

カモミールが馬車を指さした。


「あれは?」

「観光客用の馬車だな。乗ってみるか?」


「えー暑い、アイス食べたい」

「確かに暑いな。じゃあアイス買うか」


涼しいところに来ているはずなのだが、暑い。

今日は高崎の気温が40度近くなると言っていたか?


「アイスとは何だ?」

「デザートだよ。食べてみれば分かる」


近くの店お土産店で、定番のバニラのソフトクリームを買う。

ちょっとした食べ物も売っていた。

昭和レトロな店構えだ。

ここだけ時代に取り残された感じ。


「冷たい!甘くて美味しい…」

「味は…まあまあね」


カモミールは初めての食べ物に感激し、あみは、ブドウ味のソフトクリームを食べていた。


自転車もあるのか。

湖をサイクリングするのも良いな。

あ、でもカモミールは運転できないか。


「自転車があるんだね。裕也とカモちゃんで二人乗りに乗れば良いじゃない。わたしは普通のに乗るから」

「手漕ぎボートもあるぞ」


思っていたよりも、楽しめそうだ。



*** 松永裕也のクラスメート視点



「あれ、松永じゃん。女二人連れて生意気」

「本当だ。信じられない…」

「あの子は、隣のクラスの中嶋さんか?ショートカットで可愛いと噂の」


車の座席から、松永を発見した。

今日は兄貴の車で、榛名湖へと遊びに来ていたのだ。

隣に居るのは、ボーイッシュな感じの可愛い女子。

おれのクラスでも人気がある子だ。


「直紀の友達か?声を掛けてくか?」

「いや、いい。兄貴、車を出してくれ」


友達二人と、家路に帰る。

夏休み開けて、学校に来たら聞いてやる。


「どっちかは彼女かな?」

「さあ?」

「女の子二人と一緒なんて羨ましいな。弟の友達と一緒にドライブなんてオレだって嫌だ。オレも彼女欲しい…」


兄貴が、運転席で愚痴っている。


「兄貴は大学で彼女居ただろ?」

「カノンとは別れた。居たらお前たちと一緒に来ないよ」


兄貴はおれと違い大学ではモテている。

全く、どの口が言ってるんだか。



*** 中嶋琴子(あみの妹)視線



「ただいまー」


夕方になり、お姉ちゃんが帰ってきた。

今日はお隣の裕也さんと榛名湖へ行ってきたらしい。

デート?だと思うのだけど、本人は違うって否定した。

何が違うの?


「裕也には振られたの…」


振られた相手と、数日経たずに一緒に遊びに行くとか。

どうかしてる。

話を聞いた限り、二人きりじゃなくてもう一人いるらしいのだけど。


まあ、それなら分からなくもないか。

友達とお姉ちゃんと裕也くんで遊びに行ったのなら。


「楽しかった?」

「…まあ、ね」


含みのある言い方だ。

振られたっていってたけど、まだ諦めていないのかも。


「わたしは裕也にとって妹枠らしいのよね」

「なにそれ?好きにならないけど、ずっと一緒って事?ひどくない?!」

「分かってたけど…辛いなぁ」


何だ、全然平気じゃないじゃん。

無理して遊びに付き合うつもり無かったのでは。


「ぽっと出の女子に裕也を奪われるなんて…嫌だったんだけど…。カモちゃんなら仕方ないのかな…」


裕也さんに文句を一言、言いたいけど…お姉ちゃんが止めそうだ。


「え?カモちゃん?誰それ」

初めて聞く名前だ。


「カモミールさん。異世界出身のエルフなんだって」

「な、なにそれ!面白そう!」


あたしの怒りは、裕也さんからカモミールさんへの興味へと変わっていった。



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