第8話 告白した後
「ちゃんと、告白した?」
俺とあみがリビングで宿題をしていると、カモミールが戻ってきた。
「玉砕した…お家帰りたい」
自分の顔を手で覆うあみ。
耳が赤い。
「よしよし…まずは、宿題が終わってからだな」
「そうやって直ぐ、わたしを子ども扱いする…」
俺はあみの頭を撫でる。
随分と夏休みの宿題を残したせいで、終わるのに時間が掛かかりそうだな。
「お昼、家で食ってくか?カレーで良ければ」
「実は昨日、ウチ…カレーだったんだよね…」
湯煎した、レトルトパックをご飯にかける。
最近は電子レンジでお手軽にできるが、あまりレンジは好きじゃないんだよな。
「カレーってレトルトかぁー」
「文句言うなら食わなくて良いぞ」
今度、市販のルーを買ってもきても良いか。
ジャガイモと、玉ねぎとニンジンを切って肉を入れてぶちこんで…。
人が一人増えた事だしな。
俺は、人数分の麦茶を用意した。
「お米の消費量、相変わらずえげつないね。お米、家から貰って来ようか?」
「流石に、悪いから良い」
たまに、ご馳走になるくらいが丁度いい。
親しいとはいえ、お米まで貰うのは気が引ける。
最近は値段が上がってきて、金額がとんでもない事になってるし。
ネットとスーパーで、値段を比較しつつ安い方を買っている。
「カレー足りないな。納豆でも食うか」
俺は冷蔵庫から、納豆を取り出してご飯にかける。
カモミールは、ねばねばの豆を不思議そうに見ていた。
*** カモミール・ルムフェ視点
不思議な関係。
あみは普通の女子だ。
ユウヤとは幼いころからずっと一緒だったとか。
ああいうのを幼馴染って言うらしい。
少し羨ましい。
エルフとして生きてきて、寿命が短い人族は早くに亡くなってしまう。
好きな人が出来ても、ずっと一緒には居られない。
好きな人の子供が欲しいな。
なんて願うのは贅沢だろうか。
「玉砕した…お家帰りたい」
あみはちゃんと告白したらしい。
恋は思うようにいかないのが、むず痒い。
気持ちを切り替えるのは…大変だろうが、早く良い人を見つけてほしい。
カレーという食べ物をご馳走になった。
初めて食べる…辛くて不思議な味だ。
あみの家では昨日食べたらしい。
一般的な家庭の味なのか?
ご飯と言われる白いつぶつぶを食べる。
柔らかくて甘い。
不思議な食感。
ユウヤは男の人だから食事量が足りないらしい。
ご飯は沢山あるみたいだけど、カレーが無くなってしまった。
ねばねばした豆をご飯にかけて食べている。
不思議な匂いのする豆。
面白い。
*** 中嶋あみ視点
告白しても、いつもの裕也だ。
恥ずかしくて顔を手で覆っていたら、頭を撫でられる。
うん、分かってた。
わたしの存在は妹なんだなあって。
でも、優しいから勘違いしちゃってたんだよね。
もしかして好きなんじゃないかって。
恋愛的な好きじゃなかったけどね。
この関係はずっと続くだろう。
わたしが結婚するまで…かな?
カレーを食べる裕也。
足りないって納豆をご飯にかけ始めた。
レトルトがもう無くなっちゃったらしい。
カレーのレトルト、後で買って来ようかな。
お米だと高くて遠慮するだろうから。
裕也の視線が、優しくカモミールさんを見ている。
納豆を不思議そうに見ている彼女。
裕也は自分の気持ちに気が付いていないみたい。
カモミールさんも裕也の事を見つめている。
とてもじゃないけど、エルフのお姉さんには敵わないわ。
美人で優しくて…思いやりがあって…。




