第7話 恋愛バトル
カモミールとあみが友達になった。
女子同士、話が合うのだろう。
俺のコミケの話なんて聞いてくれやしない。
いいんだ。
俺にはおたく仲間がいるからな。
「カモちゃんは、今いくつなの?」
「えーっと内緒」
カモミールは俺と話す時より、話し方が若干柔らかい感じがする。
気を張っていたのだろうか。
「アニメのフリー〇〇は1000歳越えているんだって!カモちゃんは…」
「流石にそれは無いよ…500くらいだし。あみは16歳なんだっけ」
「まだまだ子供だよー」
「でも、もう少ししたら、あみも結婚できる年齢だよね」
あみの顔が火照って赤くなる。
「ちょ…ちょっと何言ってるの?ま、まあそういう事もあるかもだけど、先の話だよ」
珍しく慌てているな。
あみもいつかは結婚するんだよな。
温かい目で見守っていると、
「裕也、アンタも他人事じゃないからね!」
指さして名指しされた。
俺もいつかは結婚するだろうが。
想像も出来ない。
まだ、高校生だしな。
「ユウヤとあみくらいが丁度良いよね。こういうのお似合いっていうの?」
「何、馬鹿な事言ってんの…そんな訳ないじゃない」
あみがこちらをチラチラ見ている。
何か言いたそうだが。
「俺たちは、まだ高校生だし、結婚は早いよ」
あみはコクコクと頷く。
「そうか?異世界ではこのくらい普通なのだけど」
*
「裕也ー宿題手伝ってー」
あみは一旦家に帰り、宿題を抱えて持ってきた。
随分ため込んでいたな。
「何かくれ。手伝う報酬が欲しい」
「んー。わたしのキスなんてどう?」
全く冗談が過ぎる。
どこかのラブコメじゃあるまいし。
あみは、テーブルに宿題を置いた。
「却下だ。お菓子とかジュースで良いよ」
「なによ。折角、勇気を出したのに」
「あみ。おぬし、ユウヤが好きなのか?」
「そ、そんな訳ないじゃない…冗談キツイわ」
「そうか…気のせいか。なら私がユウヤと付き合っても構わないな?」
あみのシャーペンを持つ手が止まる。
二人して勝手に決めないでほしいのだが。
「俺の意見は?」
「「ちょっと、黙ってて」」
二人に押しとどめられた。
何なんだ一体…。
ぼーっとしていると、ふいに頬に柔らかいものが当たった。
「カモちゃん!裕也にキ、キス…」
カモミールの柔らかい唇が、俺の頬に当たっていたらしい。
「私はユウヤを初めて見た時から、気に入っている。多分、ユウヤも私の事を嫌いでは無いだろう?」
心臓が早鐘を打っている。
ドキドキして病気だろうか。
顔が熱い。
「ほら、顔が真っ赤だ。体は嘘付けないな」
すうーっと、カモミールの指が俺の体をなぞる。
ゾクゾクしてきた。
嘘ってなんだ?
カモミールは何を言っているんだ?
「裕也はわたしの…だもん」
あみが泣きそうな声で呟く。
スカートを両手で握りしめていた。
「ユウヤ、よく考えるんだな。私にするか、あみにするか…どちらも選ばないのは無しだぞ」
「何でこんな事になったんだ…」
あみが俺を好きだって?
言われてみれば、そうだ。
俺は今まで、気が付かないふりをしていたんだ。
「好き…」
好きかと言われるとどうなのだろう。
あみは妹のような愛情はあるが…。
「裕也…ごめんね」
「何でお前が謝る」
カモミールは部屋に閉じこもってしまった。
カモミールもカモミールだ。
何も焚きつけるようなことをしなくても良いのに。
「わたしが、裕也に勇気を出して告白していれば…」
幼馴染の恋愛。
よくある話だ。
俺はあみの事をそういう対象で見られない。
「ごめん…俺、あみの事…女として見られない」
「そっか。そうなる気はしてたんだ。裕也って優しいけど、恋愛って感じじゃなかったものね」
テーブルには、手つかずの宿題のテキストが載っている。
「宿題…手伝うから、許してくれ」
「嫌だ。許さない。オレンジジュースとポテチ」
俺は冷蔵庫からオレンジジュースをコップに注ぎ、新しいポテチの袋をあみに差し出した。
「キスしたら許してあげる」
「それは…」
「冗談よ。じゃあ、裕也はカモミールの事が好きなのかな?」
「何でそうなるんだ?」
あみが駄目だからって、何でそういう話になるんだ?
意味が分からないよ。




