第2話 異世界へ来たエルフ
俺は、自宅のリビングで、彼女と話をしていた。
「分かったぞ。キミも日本に憧れてやってきた口だな?」
日本に憧れる外国人。
アニメやマンガで来る人がいるとテレビで見た事がある。
きっとそういう事なのだろう。
「いや…ちょっと待て。言っている意味が分からないのだが」
「なあに恥ずかしがらなくても良い。こんな耳まで付けちゃって…こっちの方がよっぽど…」
俺は、女性の耳を引っ張った。
「痛っ!」
あれ?本物?
「これじゃまるで…本物のエルフみたいじゃないか」
涙目で、彼女に睨まれる。
「異世界人っていうのは勝手に耳を触ったりして…謝る事もしないのか?」
「ご、ごめんなさい」
どういう事だ?
彼女は本物のエルフなのか?
てっきりジョークだと思っていたのだが。
「えっと…」
しばらく気まずい空気が流れた。
「私はカモミール・ルムフェ、見ての通りエルフ族だ」
「俺は、松永裕也…高校生をしている」
「高校生?」
「学校で勉強をしているんだよ」
「学校か…魔法学校のようなものか」
だいぶ違うが、納得したらしい。
「どうやら、異世界へ来てしまったようだな。しばらくお世話になるからよろしく」
「はああ?どうしてそうなるんだよ?」
「君がここへ連れてきたんだろう?どうせ戻れないのだし、住ませてもらっても良いじゃないか。私は魔法が使えるから何かと便利だぞ」
図々しいエルフだ。
「俺は困っていたから助けただけだ。両親が生きていたら他人に親切にするだろうからな」
「…そうか。ご両親が…」
「勝手に住めばいいさ。俺は一人暮らしだし、襲われても良いのならな」
「私が襲えるとでも?魔法で返り討ちにしてくれるわ」
右手にはいつの間にか魔法の杖が握られていた。
ていうか、どこから出した?
「収納魔法が使えるようだ。あっちで入れておいたポーションも入ってる。何も支障がないな」
仕方が無いので、俺は母が使っていた部屋を案内した。
食いぶちが一人増えたところで、大したことない。
「部屋は片づけていない。好きなように、勝手に使ってくれ」
まあ、そのうち外に出て働いてもらえばいいか。
アルバイトくらいなら、外に出しても大丈夫だろう。
深夜、彼女の部屋のドアノブに触れようとしたら、バチン!と弾かれた。
見えないもので覆われているらしい。
まあ、本当に襲うつもりはないのだがな。
学校が始まったら、カモミールはお留守番だ。
それまでに、日本での常識を教えておいたほうが良さそうだな。
「「ピンポーン」」
朝っぱらから何だ?
昨日は遠出をしたので、疲れて早めに寝てしまったようだ。
あれ…何か大事な事を忘れているような…。
自室に戻らずにリビングで寝てしまっていたらしい。
疲れすぎだろ。
俺。
玄関に行ってドアを開けると、一人の短髪の少女が立っていた。
「何だ、あみか」
「何だはないでしょう?昨日からラインにメッセージ入れたのに、返事がないんだもの。何かあったのかって心配したじゃない」
スマホに通知がきていたのか。
スマホはテーブルの上にある。
「夕飯でも一緒にどうかなって思ってさ。東京に行って疲れただろうから」
あみ、中嶋あみは隣に住む幼馴染だ。
あみのご家族は、俺の両親が亡くなって何かと俺の事を心配してくれている。
昨晩もそういった感じなのだろう。
もう大丈夫なんだけどな。
「心配しなくても、もう一人でやっていけてる。ご両親にもそう伝えてくれ」
あみは何とも言えない表情を浮かべた。
「そう?無理しないでね。何かあったら連絡して」
「心配してくれてありがとな」
あみは隣の家に戻っていった。
俺はそんなに頼りなく見えるのだろうか?
もう三年も経つのだし、気を遣わなくてもいいのだけど。




