第17話 複数婚?
「えっと…どうしよう。裕也」
「俺に訊くなよ」
カモミールの衝撃発言に俺たちは驚いていた。
異世界ではそういうのが当たり前なのか。
複数婚というと、一夫多妻制の中東あたりが近い感覚なのだろうか?
「とりあえず、家に帰るね。またね裕也」
「お、おう」
俺も混乱している。
少し休息したい。
リビングに行くと、カモミールに声を掛けられた。
「あれ?あみ帰っちゃったんだね」
「ああ、多分疲れたんだろう」
主に精神的にだな。
気を遣うだろうから、カモミールには内緒にしておいた方が良いな。
「まあでも、一緒に暮らせたら楽しいよね」
「…そうだな」
まあでも、修羅場にならなくて良かった。
争いごとは苦手だからな。
*
俺は自室でベットに寝転がる。
昼間の事が思い浮かんだ。
「あいつ…急にキスしてくるとか…何考えてんだ」
柔らかい唇の感触。
温かいぬくもり。
思い出したら胸がドキドキしてきた。
「俺って…案外ちょろいのかもな」
何にしてもあみが、カモミールと喧嘩にならなくて良かった。
それだけは救いだった。
*** 中嶋あみ 視点
わたしは、昼間の事を思い出し、顔が熱くなった。
「わ、わたしってば一体なんて事を…」
いつものわたしなら絶対にしない。
っていうか、なんでしちゃったんだろ。
今思えば、愛実に上手くのせられた気がする。
自室のベッドの上に置いてあるスマホを見ると、愛実からメッセージが届いていた。
「良かったね♡…か」
まあ、結果的には良かったのかもしれない。
冷静になって思えば、カモちゃんと喧嘩になってもおかしくない状況だったのだ。
裕也を取り合うのは必然だった。
幸いにも、そうならないで済んだけど。
「異世界人で助かったわよ…」
価値観の違いってやつなのだろう。
日本人のわたしには、全く理解できないけど。
「今回に限っては、良かったわ」
*
「お姉ちゃん、夕飯出来たって…って疲れた顔してどうしたの?」
妹の声がしたので、部屋の入り口に視線を向けると、心配した様子の琴子が眉を下げていた。
「何でもない」
「そう?じゃあ、先、下行ってるね」
琴子は階段を下りて行く。
色々ありすぎて、今日の事は琴子にも言えないな。
わたしは、ベッドの上で寝転がり天井を眺めた。
*** カモミール・ルムフェ視点
翌朝、俺はリビングにノートパソコンを持っていった。
試しに複数婚と検索してみる。
ネットで調べたほうが解かりやすいし、説明しやすい。
「複数婚が重罪?」
「そ、日本だと犯罪になるんだよ。えっと、禁固2年以下の懲役らしい」
パソコンの画面を指さしながら、カモミールに伝える。
思っていたより、複数婚って重罪なんだな。
全然知らなかったよ。
「アメリカでは複数婚を認める州があるのか…」
外国は日本とは違うらしい。
流石、アメリカと言うべきか自由の国だもんな。
あれ?じゃあ浮気とか不倫とか…そういうのも無いのだろうか?
世の中、知らない事も結構あるものだな。
「アメリカっていう国に行けば別に問題ないんじゃ?」
「まあ、確かにそうなんだが…」
お金が…と思ったが、俺には十分な資金があったりする。
飛行機代は結構な額だが、全く問題ない。
俺は、致命的な勘違いに気が付いた。
「あれ…ていうか、そもそも複数婚にならないよな。カモミールとは結婚できないんだし」
犯罪にすらならなかった。
何で複数婚って思い込んだのだろう。
「ごめん、カモミール。全く問題なかったわ。そもそも俺はカモミールと結婚が出来ないのだから関係なかった」
「じゃあ、あみと一緒に暮らしても問題は無いんだね?」
あみ。
俺は、あみとの昨日のキスを思い出していた。
ああああっ。
もう!
「どうしたのユウヤ。なんか顔が真っ赤だけど」
「なんでもない」
あみと面と向かって、話し合わないといけないな。
全く、どうしてああなったんだか。




