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「梨羅ちゃん。俺と付き合ってください」


 高校時代、友人に誘われた集まりに彼はいた。

 他校の生徒と集まってカラオケやボウリングに行く――いわゆる合コンに近いノリ。仲の良い友人が計画したから、私も半強制的に参加した。


「良かったら、連絡先交換しない?」


 カラオケで友人の歌を聴いているとき、隣に彼が座った。友人とは中学の同級生らしく、友人とのエピソードを楽しそうに話してくれた。気さくで優しく、私もカラオケだということを忘れて盛り上がった。

 二人で何度か出かけて、三回目のデートで彼から告白された。イルミネーションが綺麗な場所で、私たち以外にもデートで来ている人がたくさんいた。

 彼はそっと私の手を取り、静かに返事を待った。


「私もずっと気になっていました。私で良ければお願いします」


 一緒にいて楽しかったから、告白を断る理由なんてなかった。

 ありがとう、と彼は私を優しく抱きしめる。彼のいつもつけている、私の好きな爽やかな香水の匂いが鼻に届いた。

 その日から私たちはめでたく付き合い始めた。後から友人に教えてもらったけど、彼はそれなりにモテるらしい。そんな人と付き合えるなんて私はなんて幸せ者なんだろう。そう思えるくらい、彼の人柄は良かった。私の行きたいところや、やりたいことをとにかく優先してくれる。優しくて、気配りができる人だった。

 彼と高校は別だったけど、できるだけ予定を合わせてデートを重ねた。カラオケやカフェやショッピングモール、ときどき背伸びをして高いレストランにも行った。

 デートのときに彼はいつも私より多く――ほとんど彼が払ってくれた。たびたび私は申し訳ない気持ちと、彼に甘えたくないという気持ちに襲われた。


「梨羅、バイト始めたの?」

「家の近くのカフェでね。いつも払ってくれるのが申し訳ないなって思って」

「いやいや、付き合ってんだから当たり前だろ」


 彼のそんな優しいところが私は好き。でも、彼氏だからって甘えてちゃいけない。


「私は対等な関係でいたいの。バイト代が貯まったら、もっといろんなとこに出かけたいな」


 それから交際は続き、受験シーズンに入った。


「梨羅、合格おめでとう。保育士って梨羅にピッタリだな」


 私は保育系の大学への進学が決まった。保育士になるのが幼い頃からの夢だった。親戚にも小さい子がいて面倒を見ていたし、それもあって子供と関わるのは好きだった。職業体験で保育園に行ったのが決め手だったかもしれない。


「受験が終わったら色んなところに出かけようね」

「俺も、梨羅とたくさんデートしたいな」


 私の頭に優しく手が置かれる。彼の包み込んでくれる手の暖かさに、私はいつもほっとしていた。

 彼は一般入試を受けるため、今までより会う回数はぐっと減ってしまった。私は彼とまた楽しい時間を過ごしたくて、バイトのシフトにたくさん入った。間もなくして、彼も無事に第一志望の大学に合格した。

 彼との交際は高校を卒業しても続いた。会えないときは電話をたくさんした。長いときは深夜まで電話をした日もあった。電話越しの彼の落ち着いた声が、いつも私を安心させてくれた。

 彼は大学入学と同時に一人暮らしを始めて、私はときどき彼の家に遊びに行った。それもあってか、彼の家に私のものが少しずつ増えていった。

 大学はとにかくレポートと日誌、実習に追われる日々。あまりにも忙しくて、私はよく落ち込みそうになった。そんなときは彼が支えてくれた。彼がいてくれたから、私は大学生活を乗り越えることができた。


「梨羅とはおじいちゃんになっても一緒にいたいな」


 無事に保育士の資格を得て、就職決定のお祝いでいつもよりいいレストランに連れて行ってもらったとき、彼は言った。

 彼の言葉の意味を分からないほど、私も鈍感ではなかった。


「俺はまだ大学生だし、もう少し先の話だけどさ。でも、梨羅とは一生一緒にいたいと思ってる」


 彼は照れくさそうに頬をかく。


「卒業したら、俺と結婚してください」


 私は思わず泣いてしまった。念願の保育士になれて、達成感と感動で満たされていて、そこにさらに幸せが重なるなんて。

 一生を誓える人と出会えるなんて、私はなんて幸せなんだろう。

 優しい彼が、私の人生を変えた。

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