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婚約破棄された令嬢、マッチョ売りに転職しました!〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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24.謎の咆哮 ※別視点

「えっ……グリフォンとの繋がりが消えた……」


 俺は魔法陣の前でグリフォンを操っていたはずなのに、突然繋がりが消えた。


「おい、それはどういうことだ」


 ウラギールの代表、ギルティ様は俺に詰め寄ってくる。

 ただ、それは俺も聞きたいところだ。

 グリフォンは何年もかけて、パスを繋いできた仲間だ。

 それが何の拍子か一瞬にして途切れたのだ。


「申し訳ありません。突然のことで――」

「使えないやつめ!」


 ギルティ様は俺の襟元を掴むと、そのまま投げ捨てるかのように押し飛ばす。

 俺がいなければ何もできないウラギール代表のくせに……。

 そんなことを思っていても、俺にできるのはギルティ様の命令に従うことだけだ。

 それがウラギールで生まれた俺の家系が唯一存在する理由。

 そして、大事な妻と娘が人質になっているからこそ従うしか選択肢はない。


「まさか、セラフのルシアンが俺たちに牙を剥いたのか……」

「ギルティ様、もう一度チャンスを頂けませんか?」


 俺にはまだ従える魔物がいる。

 グリフォンに比べたら弱いが、そいつらを使えばどうにかなるかもしれない。


「なんだ……まだいたのか」


 まるで俺を虫ケラのようにギルティ様は見つめてくる。


「ははは、アースドラゴンも扱えないお前がどうにかできるのか?」

「くっ……」


 俺の先祖はアースドラゴンを操り、かつてセラフを壊滅させた。

 その結果、ウラギールの一族が当時のセラヴィア連邦王国で国王の座を得たという。

 ギルティ様は俺を使って、あの時のようにセラフを追い詰めるつもりだった。

 だから、俺もグリフォンに旧セラフにアースドラゴンや他の魔物がいないか確認させたのだ。

 アースドラゴンまでは操れなくても、他の魔物なら操れるかもしれないからな。

 それに旧セラフから、魔物の集団がセラフに襲ってきても何も違和感がないとギルティ様は思ったのだろう。


「私にはダークホース、ヘルハウンド、シャドウキャットがいます!」

「ブレーメンよ、そんな愉快なやつらを集めて音楽隊でもするつもりか?」


 ギルティ様は俺の魔物を小馬鹿にして鼻で笑う。

 俺の魔物は引っ込み事案なだけで、別に弱いわけではない。

 元々闇に潜むやつらだからな。

 卑怯者と言われたら仕方ないが、それが俺の戦い方でもある。


「今度こそ――」


――ドオオオオオオン!


 突然、爆発音が聞こえたとともに、地面が大きく揺れた。

 何が起きたのかわからず、周囲は驚きの声と悲鳴にに包まれる。


「おい、何があったんだ!」


 その中でもギルティ様は人一倍戸惑っていた。

 それはギルティ様の表情から見ても、一目瞭然だった。

 今までウラギールの代表が狙われることがなかったからな。


「まさかアースドラゴン……いや、それはないか」


 頭によぎったのは先祖が操ったと言われるアースドラゴンだ。

 いまだに旧セラフ以外でも見かけたという情報を聞いたことがある。

 今頃操られていたことに対して、報復でもしにきたのだろうか。

 長生きするアースドラゴンにしたら、100年や200年前は最近と変わらないからな。


「お前ら警戒を強めろ!」

「「「ハッ!」」」


 ギルティ様の指示に騎士たちはすぐに周囲を警戒し、状況確認のために動き出した。


「おい、ブレーメン!」

「はい!」


 俺はすぐにギルティ様の元へ駆け寄り、片膝をついて頭を下げる。


「お前の魔物は隠密行動が得意だよな?」

「はい」

「じゃあ、言わなくてもわかるだろ」


 きっとこの原因を探ってこいということだろう。

 ウラギールから近いのはセラフだ。

 命令に背けば、妻と娘に何が起きるかわからない。

 ……だが、本当にこれでいいのだろうか。

 このままじゃ操られている魔物と同じになる。


「……いや、生き残るしかないんだ」


 自分に言い聞かせるように呟いて、影にいる仲間に声をかけた。


「お前ら行くぞ」

『ヒヒィーン!』

『ガウ!』

『ニャー!』


 声をかけると、嬉しそうに鳴き声が返ってきた。

 ……ごめんな。みんな。

 こんなことに仲間を使うのは申し訳ない。

 だが、そうでもしないと妻と娘は助けられないからな。

 俺も仲間を追いかけるようにウラギールを後にした。



 その晩は特に何者かの攻撃はなく朝になった。

 日差しも出てきて、周囲が明るくなったことで魔の森から旧セラフの状況が確認できる。


『ニャニャ!?』

「シャドウキャットどうしたんだ?」


 木の上から周囲を確認してもらったが、見たことないほど焦っていた。

 俺はシャドウキャットと視野を共有して、旧セラフを確認する。


「なんだこれは……壁?」


 旧セラフを確認したつもりだが、魔の森のすぐ近くに謎の壁のようなものができていた。

 それもとてつもなく遠くまで壁が存在している。


「アースドラゴンの仕業か……」


 アースドラゴンの仕業なら、何が目的なんだろうか。

 ウラギールを襲った時に、壁で囲んで逃げ道を塞ぐつもりだろうか。

 だが、誇り高いドラゴンがそんな陰湿なことをするはずがない。


「……くっ!?」


 風が止まり、森の空気が一変した。

 重たい何かに押しつぶされるような感覚が襲ってくる。


「私の心臓が保たないわよおおおおお!」


 突然、魔物の雄叫びのような声が聞こえたと思った瞬間、魔の森は謎の突風に襲われた。


 私の心臓だと……?

 ドラゴンがそんな感情を語るはずが――いや、古の伝承では知性ある個体もいたと聞く。

 まさか、本当にアースドラゴンが蘇ったのか……?


『ニャアアアア!?』

「シャドウキャット!」


 俺は飛ばされそうになっているシャドウキャットを捕まえて、木の後ろに身を潜める。

 あれがアースドラゴンの咆哮だろうか。

 どこか人間が話したようにも聞こえたが、アースドラゴンの知能があれば言葉も話すはず。

 俺は周囲の警戒を強めながら、状況を確認しているが、咆哮は収まることを知らない。

 まるで怒りを鎮めているような気がする。

 それと同時に魔の森の異変を感じた。


「あっちには妻と娘がいる!」


 魔物たちはアースドラゴンから逃げるように、ウラギールに向かって行った。

 ウラギールにはしっかりとした外壁があり、騎士もいるから問題はないだろう。

 それよりもまずはアースドラゴンの情報を集める方が先だ。

 何も情報なく帰れば、家族の命はないからな。

 その後も魔の森はアースドラゴンの咆哮や暴走で木が投げ出されたりと、命懸けの調査が続いた。

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