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婚約破棄された令嬢、マッチョ売りに転職しました!〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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21.筋肉令嬢、鶏がうるさいです

「なんか……要塞みたいだな」


 アシュレイは長く続く外壁を見て、ボソッと呟いた。


「くくく、アシュレイって面白いね」


 子どもみたいな顔でキラキラした瞳で言うから、つい私も笑ってしまった。


「ななな、急になんだよ!?」


 私に見られてアシュレイも恥ずかしかったのだろう。

 顔を真っ赤にしてそっぽ向いている。


「だって、面白いんだもん。要塞にしては脆いよ?」


 今回はトカゲさんの土属性魔法で作ったレンガを元に外壁を作ったが、それが要塞に見えるって――。


『ななな、なんだって!?』

「「「えっ……」」」


 まさかアシュレイ以外にルシアン様やガレスさん、そして作った本人のトカゲさんすら驚いていた。


「外壁って普通はアダマンタイトを混ぜて作るでしょ? あれって山を掘らないと出てこないから大変なの……どうしました?」


 なぜかみんな私の顔をジーッと見ている。

 トカゲさんも走りながら、振り向いているぐらいだ。


「やっぱ元からおかしいよな……」

「もう何を言っても、事実に聞こえてしまう……」

「何も考えないことが一番だな」


 またアシュレイには変な人だと思われているし、ルシアン様とガレスさんには呆れられているようだ。

 だって、プロテイン公爵家の屋敷はアダマンタイトを混ぜて外壁が作ってあるから。


 むしろ屋敷の壁はほとんどアダマンタイトですよ?


 そうでもしないと、私たちが訓練している間に屋敷を吹っ飛ばしてしまうからね。

 ここにも山がたくさんあるから、アダマンタイトが出てくるといいな。

 オリハルコンやミスリルだと、武器を使わない私には必要ない――。


「あっ、ルシアン様にプレゼントしたら喜んでくれるかも!」


 私じゃなくてもルシアン様なら喜んでくれそう。

 ミスリルのフォークやスプーン、オリハルコンのナイフとかがあれば、食事ももっと食べやすくなるだろう。

 ワニやカメを食べる時って、硬くて剣も中々通らないから、そういう時に便利なのよね。


「何かまた変なこと考えていそうだな……」

「私も何をプレゼントされるのか怖くなってきた……」

「きっと普通ではないものだから、気にしなくてもいいだろう」


 私が何をプレゼントするか気になっているのだろう。

 せっかくだから、引越し記念とかで渡せたらいいかもしれない。


『そろそろ着くぞ!』


 トカゲさんのおかげで、すぐに旧セラフに着きそうだ。

 ただ、まだみんな寝ているのか、周囲は静かなままだ。


「ガレス……あれはなんだと思う?」

「鳥系の魔物……あいつはグリフォンじゃないか!?」


 ルシアン様とガレスさんは、何かに気付いたのか注意深く見ていた。

 私も視線を向けると、町の中で楽しそうに叫んでいる鶏がいた。

 きっとみんなより先に目を覚まして、起こしているのかもしれない。


『クァクァクァ、オラが征服したぜい!』


 羽をバタバタさせているから、寝不足は治ったのだろう。

 急に宙から降ってきたから、よほど寝不足だったと思う。

 それにしても、ガレスさんはまた鶏をグリフォンとか言っている気がした。

 私からしたら、どこからどう見ても鶏にしか見えないんだけどね……。


「あれは鶏ですよ……?」

「「ニワ……トリ……?」」


 私はこくりと頷く。

 プロテイン公爵家のメイドも『チキン』って名前で鶏を飼っていたけど、姿形そっくりだもんね。


「……考えるのはやめた方が良さそうだね」

「きっとリリナが手懐けているはず」


 鶏だってわかってくれたのだろう。

 ルシアン様とガレスさんは、どこか優しく微笑んで旧セラフに着くのを待っていた。


「リリナ、もう俺はお腹いっぱいだぞ?」

「ふふふ、仕事する気満々ですね!」


 アシュレイが私の肩を叩いていたため、私も優しく叩き返しておいた。

 朝からたくさん食べるほど、ルシアン様の護衛をやる気があるのだろう。


『クァクァクァ、オラがここいらで最強の――』

『ついたぞ』


 トカゲさんが止まると、私たちはトカゲさんの背中を降りていく。

 目の前には鶏が振り向いて、出迎えてくれた。


『クゥエエエェェェ! アーシュドラャゴン!?』


 耳がキーンと鳴る。

 まるで金属がぶつかりあったような、甲高い音が頭の奥に響いた。

 なぜか鶏はトカゲさんを見て驚いている。


『この慌てっぷり……久しぶりに感じるぞ……』


 トカゲさんはジーッと私の方を見つめてくる。

 ここまで運んでくれたことの褒美が欲しいのだろうか。

 私はトカゲさんの体を優しく撫でておいた。

 小刻みに揺れていたのは、よほど嬉しかったのだろう。


「それであなたは元気になったのかしら?」

『クゥエ? オラは元から元気……いや、セラフを破壊するのがオラの目的だったぞ!』


 鶏は何かを思い出したのだろう。

 ただ、その言葉にルシアン様やガレスさんは警戒を強めた。


『お主、ウラギールに操られておったのか?』


 そんな鶏をトカゲさんは確認していた。

 すると、大きくて太い足がその場でふらふらとしていた。

 やはりまだ寝不足なんだろうか。


『ウラギール……? ……クゥエエエエェェ!』

 

 突然、目が血走り、破裂するような声で鳴き出す。


「やはりウラギールの仕業か!」

「ルシアン様、離れてください」


 どうやら私以外の人たちは、ウラギールって言葉を知っているようだ。

 それにトカゲさんすら知っている。

 ただ、こんな至近距離で鶏に鳴かれると、さすがに私でも耳が痛い。


「もう、うるさいよ!」


 私は少しジャンプし、鶏の頭を軽くペシッと叩く。


『グハッ!?』


 せっかくルシアン様を旧セラフに案内したのに、これじゃあ台無しだ。

 それに寝不足なら今は寝たほうがいいだろう。


「さぁ、ルシアン様! 鶏は寝不足でしたので、少し眠らせておきました」

「あっ……ああ」


 どこか戸惑っているルシアン様を、早速町の中へ案内することにした。

 もちろん私も町の中を散策するなんて、初めてだけどね。

 鶏さんの声でゴブリンたちも目を覚ましたから、聞きながら移動すればいいだろう。


「ガレスさん、これって……」

「ああ、ウラギールが確実にルシアン様を狙ってきているってことだ」

「二人とも行きますよー!」


 何を話しているのかうまく聞き取れなかったが、ガレスさんとアシュレイはどこか深刻な顔をしていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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