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婚約破棄された令嬢、マッチョ売りに転職しました!〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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19.筋肉令嬢、マッチョ売りを解雇される

『ほれ、これを積み上げるのじゃ!』


 私はトカゲさんに言われた通りに、外壁を作っていく。


「トカゲさんって思ったよりも便利ですね」

『ふぉふぉ、わしを便利って言うのはリリナぐらいだ』


 トカゲさんは土属性魔法が使えたため、真面目な豚さんのようにレンガをひたすら作っていく。

 豚さんのレンガと違うのは、元々の魔力量が異なり、一つ一つが大きいのと頑丈なところだ。

 それを私が積み上げて、トカゲさんがさらに魔法で補強すれば簡単に外壁ができていく。

 私は外壁に登って遠くを見渡す。


「みんな朝から元気……って、ずっと働いてたわ!」


 よく見ると離れたところに町はいくつもあり、近くにある町は朝からバタバタしていた。

 そう、気づいた時には太陽が昇ってきていた。

 昨日は気づかなかったが、この国は私がいた帝国よりも、太陽が出るのも入るのも早いようだ。


「トカゲさん、日が上がってきたよ!」


 外壁の下にいるトカゲさんに声をかける。


『もっと急ぐんだ! わしらの凄さを見せつけるぞ!』


 私とトカゲさんのさらに作業ペースを早めていく。

 すでに旧セラフからセラフにかけての外壁はでき、セラフの周りを囲んだばかりだ。

 あとは旧セラフを囲む外壁を用意すると、外壁は完成する。


「リリナ、何をやってるの?」


 セラフの近くの外壁を作っていると、突然声をかけられた。

 この声は――。


「ルシアン様!」


 私はすぐに姿勢を正して頭を下げる。

 そこにはガレスさんとアシュレイもいた。

 まさか私の仕事が間に合わなかったのを指摘するために来たのだろうか。

 気づいたら朝になっていたからね。

 ルシアン様に指摘されるなら、いくらされても構わない。

 むしろ大歓迎だ。

 ただ、解雇だけはやめて欲しい。

 これで仕事がなくなれば、マッチョ売りからただの令嬢になってしまう。


「くくく、今にも食い殺されそうな顔をしてどうしたの?」


 きっと人には見せられない顔をしているのだろう。

 私はそっと視線を外して、顔を背ける。

 そんな私にゆっくりと近づき、ルシアン様は私の前で立ち止まった。

 本当に間に合わなかったんだ……。

 まるで胸の奥がぎゅっと握り潰されているようだった。

 ルーカス様に婚約破棄された時すら、感じたことのない気持ちに襲われる。


「しっかり体は休めるんだよ」


 ただ、ルシアン様からかけられた言葉は違っていた。


「へっ!? 解雇は……」

「解雇? リリナは私に解雇されたいのかい?」


 私は全力で首を振る。

 首を振りすぎて、周囲に土埃が巻き上がるほどだ。


「嫌です! ルシアン様の側でマッチョ売りをやらせてください」


 それが私の覚悟だった。

 あの時筋肉以外を失って、路頭に迷っていた私に声をかけてくれたのがルシアン様だ。

 ルシアン様の騎士……いや、側付きマッチョ売りとしてのルシアン様の筋肉となり、支えとなり、お守りしたい。

 この筋肉が役に立つなら、ルシアン様に喜んで捧げるつもりでいた。


『「「ブフッ!?」」』


 どこかから吹き出すような笑い声が聞こえてくるが、私の気持ちは本物だ。


「くくく、君は私の側付きマッチョになりたいんだね」

「はい!」


 側付きマッチョが何かはわからないが、とりあえず頷く。

 力なら誰にも負けない自信があるから、間違いではないだろう。


「ははは、ガレスさん側付きマッチョってなんですか」

「アシュレイ、俺に聞くな。もう静かに見守ってやれよ」

『側付きトカゲ……それも良さそうだな』


 私が大事な話をしているのに、みんなして笑ってひどいわ。

 一瞬だけ鋭く睨みつけると、静かに視線を逸らせた。


「私が自ら解雇することはないから気にしなくてもいい。それで夜中に大きな音が聞こえたんだが――」


 夜中に大きな音がしたのか。

 何かがあったのか思い出そうとするが、作業に集中しすぎて私の記憶にはない。


『あー、さっきリリナが暴走しておったな』


 トカゲさんは私のせいにしたいようだ。

 夜中……何があったか記憶を遡っていく。


「それなら仕方ないな」

「リリナだもんな」


 ガレスさんやアシュレイもトカゲさんの言葉をそのまま受け取っている。

 いくら何でも――。


「あっ、豚さんに力を見せた時かな? その時に旧セラフの外壁を壊して……それならトカゲさんのせいじゃないですか!」


 私は一部の外壁を壊しただけで、ほとんどはトカゲさんがジタバタして壊したはず。

 そもそも外壁を作り直したのは、トカゲさんのせいだからね。

 視線がトカゲさんに集まっていく。


『ムムム……』


 トカゲさんは鼻息を荒くして、足をジタバタしたものの、目は泳ぎ、尻尾は震えて、足はすでに旧セラフの方に向いていた。


『……お前ら覚えておけよ! あとで迎えにいくからな!』


 そう捨て台詞を残して、トカゲさんは風のように逃げていった。

 そうなると残された私に視線が集まってくる。


「ルルル……ルシアン様、そんなに見つめられると恥ずかしいです」

「リリナは何をやったのかな?」

「私は……あっ、作業の途中でしたわ!」


 もう、セラフ側の外壁ができているから問題はない。

 私がここに残る理由はもうないのよ。


「おほほほ!」


 そう叫びながら、私は優雅な貴族の嗜みとして、トカゲさんを全力で追いかけた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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