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婚約破棄された令嬢、マッチョ売りに転職しました!〜筋トレのために男装してたら、王子の護衛にされました〜  作者: k-ing☆書籍発売中


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11.筋肉令嬢、魔物と手合わせする

 アクアナッツを求めて、ジャックとともに旧セラフに向かった私は言われた通りに突き進む。

 途中、尻尾から毒を撒き散らす虫もいたが、私の速さに追いつけなかったようだ。


「うおおおおおお! すげー!」


 そんな中、ジャックは私に抱えられて楽しそうにしていた。

 手足をバタバタさせると、まるで飛んでいるような気分になるらしい。

 私って子どもの頃には父様や兄様より、速く走れるようになったから、そんな経験もしたことなかったわ。


「あそこが旧セラフだよ!」


 着いた場所はいかにも魔物の住処と思わせるような雰囲気が醸し出されていた。

 感じる魔力も私が屋外訓練をしていた場所と近いし、すでにゴブリンがたくさんいる。


「アクアナッツはどこかな?」

「アクアナッツはあそこにたくさん生えている木だよ!」


 アクアナッツは幹の太い木にたくさん実っていた。

 ただ、採取するには木に登らないといけないようだ。


「ジャックはどうやって手に入れたの?」

「僕はその辺に転がってるやつを持って帰ったよ!」


 魔物がいる足元を見ると、確かにいくつかアクアナッツが転がっている。

 たまに旧セラフの外に飛んでくるのをバレないように隠れながら持ち帰るらしい。

 ジャックを鍛えたら、暗殺部隊に配属もできそうだね。


「じゃあ、中に入っていくよ」

「はぁん!?」


 ジャックは驚いているが、元々私は直接旧セラフに入って、魔物と手合わせをするつもりでいた。

 アクアナッツはそのおまけだ。

 私は旧セラフの入り口に立ち、大きく息を吸う。


「私はリリナ・プロテインと申します! 正々堂々と手合わせをお願いしたいです!」


 声に反応してか、旧セラフにいる魔物たちの視線が私に集まる。


「リリナ、危ないよ! アイツら、オーガだよ!」

「えっ、何言ってるの? あいつらはゴブリンだよ!」


 私は呆れたように笑った。

 もしかして、ジャックは初めてゴブリンを見るのだろう。

 それなら勘違いしてもおかしくないわね。

 オーガってとても強い魔物のはず。

 こんなところにいたら、私だって相手にならないわよ。

 ただ、私の言葉に反応したのか、ゴブリンたちは怒ってその場で足を地面に打ちつけている。

 あの知能の低さこそゴブリンの証拠だ。

 私はジャックが手合わせの邪魔にならないように、縁に置いてゴブリンの元に向かう。


「さぁ、誰から相手になってくれるのかしら?」


 ゴブリンは各々ポーズを決めて、己の筋肉を披露してきた。

 私が決めていいってことかしら?

 

「んー、どれも筋肉の出来がいまいちね」


 ただ、私の手合わせ相手としては、物足りないような気がする。

 ゴブリンたちの筋肉は盛り上がっている。

 それでも、筋肉が引き締まっているわけでもなく、魔力も集まっていない。

 まるで筋肉を膨らませただけで、張りはあるけど、中身がない。

 そんな筋肉では、見せかけばかりで力は出ないだろう。


『オマエ……コロス……』


 その中でも一際体格が大きいゴブリンが出てきた。

 少し話せるところからして、知能は他の個体と比べて高いようだ。

 ゴブリンは私の目の前にきて見下ろす。

 きっと俺の方が強いって優越感に浸っているのだろう。


「やっぱりバカですね」


 私は片手をゆっくりと持ち上げて、指先を二、三度くいっと折り曲げる。

 口元には余裕の笑みを浮かべて、ゴブリンを挑発する。


「まだ来ないんですか?」

『グアアアアアアアアア!』


 挑発に火がついたように、ゴブリンは顔を歪めて咆哮する。

 ゴブリンは勢いよく手を振り上げる。

 私を押し潰すかのように、その拳には躊躇も迷いもなかった。


 私はこれを待っていたんだ。


 ゴブリンの拳に合わせて、私は指を広げて受け止める。


――バンッ!


 乾いた破裂音が周囲に響いた。

 だが、音が大きいだけで、思ったよりもゴブリンの拳は拍子抜けするほど軽かった。


『グワッ!?』


 ゴブリンは受け止められて、驚いているのだろう。

 それに私の方が手が小さいから、尚更びっくりしているね。


「やっぱり筋トレが足りないですよ」


 私はそのままゴブリンを持ち上げる。

 ふわっと浮く感覚にゴブリンはあたふたとしていた。


「せっかくだから錘にさせてもらいますね」


 そのままゴブリンを抱えた状態で、一歩前に踏み出す。

 そういえば、まだランジをしていなかったわね。

 脚やお尻を鍛えるにはちょうど良い筋トレなのよ。


『グヌヌ……』


 ゴブリンはどうすれば良いのかわからず戸惑っているようだ。

 それはそれで錘として役になっているから問題ない。


『オレヲ……ドウスルキダ……』

「何もしないわよ!」


 初めはうるさかったのに、今では静かに錘になっているようだ。


「……999……1000!」


 素早く目標の最低回数だけこなした。

 筋トレは決められた負荷でやらないと意味がないからね。

 ゆっくり錘になったゴブリンを下ろすと、なぜか怯えていた。


『ハヤク……コロセ……』


 チラッと周囲を確認すると、他のゴブリンも同じような反応をしており、一箇所に集まっていた。


「ん? なんで殺すの?」

『オレハ……マケタ……』


 どうやらここのゴブリンも負けたら、命を差し出すタイプなんだろう。

 だが、怯えさせてまで命を奪うつもりはない。

 それに――。


「せっかくだから、筋トレ仲間にならない? 私がアドバイスをしてあげるよ」


 筋トレは黙々と一人で行うものだけど、お互いに高めながらアドバイスするのも効果が出る。

 私なら足りない筋力に対して、的確に筋トレのアドバイスができるからね。


『ナニガ……モクテキダ……』


 目的と言っても、私は手合わせがしたかっただけで……。


「あっ!」

『ヒイィィ!?』


 声を上げただけで、びっくりさせてしまった。

 元々はアクアナッツを採りにきたんだ。


「アクアナッツを分けて欲しいんだけどいいかな?」


 私は木に実っているアクアナッツを指さす。


『ソンナノデイイノカ?』

「うん!」


 ゴブリンは仲間のゴブリンに指示を出すと、次々とアクアナッツを運んできた。

 その数は数えられないほど、山積みになっていく。

 さすがにジャックを抱えていたら、腕は一つしかないため、持って帰るのに時間がかかるだろう。

 私は近くにあるアクアナッツの木に手を触れる。

 うん、これなら代用できそうだ。


「少し借りるね」


 幹を指で軽く掴むと、ベリッと剥がしていく。

 木とかの幹って表面を剥がせたりするんだよね。

 ある程度の繊維感があれば、結構便利に使える。


『ナアアアアアニイイイイイ!?』


 だけど、ゴブリンは驚いていた。

 そんなにアクアナッツの木も硬くないんだけどね?


 私はそのまま繊維を簡易的に編み込んで、大きな網を作っていく。

 そこにアクアナッツを入れて運べば問題はないからね。


「よし、これぐらいなら持って帰れる」


 私は網に山積みになったアクアナッツを載せて、そのまま担ぎ上げる。


「すげええええええ!」


 隠れて見ていたジャックも近づいてきた。

 なぜかジャックにもゴブリンは怯えていたが、ジャックはまだそこまで力は強くないからね?


「じゃあ、また今度来るね!」

『ナンデダ……』

「せっかくの錘を見つけたんだもん!」


 筋トレ道具は大事にしないといけないって、我が家では当たり前のように教えられた。

 だから、錘のゴブリンには優しくしてあげないといけない。

 だが、私の言葉を聞いたゴブリンは呆れた表情をしていた。

 思ったよりもゴブリンって表情豊かなんだね。


『オマエ……イツカエル……』

「もうすぐ帰るわよ?」


 やっと筋トレ仲間ができたゴブリンは、私がいなくなるのが寂しいのだろうか。


『ハヤクカエラナイト……アイツガクル……』

「あいつ……?」


 どうやらあるやつを私に合わせたくないのだろう。

 それはゴブリンよりも錘になるのだろうか。


『アースドラゴン』

「ふぇ!?」


 どうやらここにはアースドラゴンが住んでいるらしい。

 ただ、それを聞いて逃げるような私ではない。


「ふふふ、手合わせできないかしらね……」


 アースドラゴンと手合わせって中々できることじゃないからね。

 この機会を逃したら、これからの人生でないだろう。

 私は担いでいたアクアナッツを下ろす。


『オイ……ハヨカエレ……』 

「いやよー! 私、アースドラゴンに手合わせしてもらうわ!」

『ハァー』

「きっと、アースドラゴンは下半身が仕上がっているんでしょうね……ふふふ」


 私はアースドラゴンと手合わせするために、帰ってくるのを一緒に待つことにした。

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