第27話
うーん。トイレのスライムが何処で買えるのか聞いてみたいところだが、今、トイレの話題は無いよね。
そこで、朝の山道であった話をしてみることにした。
「……うん、ちょっとね。実は、今朝、森から下ってくる途中で、ちょっと怖いことがあって」
その言葉に、メリッサさんとカイさんも手を止めて耳を傾けてくれた。ユイナちゃんも目を丸くして動きが止まっている。
「最初は遠くから犬のような遠吠えが聞こえて……気のせいかとも思ったんだけど、しばらくしたら、今度は『ウゥー』とか『ガァルル!』って、明らかに複数の何かが威嚇してる声がしたの」
「それって……野犬? いや、群れてたの?」メリッサさんが目を見開いた。
「姿は見えなかったけど、音と気配がすごくて……怖くてその場から動けなくなっちゃって。その後、何かと戦っているような物音がしたと思たら、突然『ギャン!』って叫び声がして、それから全部、森の中を駆けて逃げていったの」
「……何かに追い払われた……みたい」
カイさんが腕を組んで低く唸るように言った。
「うん、私もそう思ったの。なんていうか……あの場の空気が急に軽くなったというか。助けられたような、そんな感じだったの」
「そんな怖い思いしてたなんて……! 大丈夫? 怪我とかは?」
「ありがとう、ユイナちゃん。何ともないけど……でも、これまでこんなことなかったから、ちょっと心配で……」
「このあたりに魔獣なんて、出るはずないと思ってたけど……村の周囲の警戒を見直した方がいいかもしれないわね」
メリッサさんも少し険しい顔になる。
「ん。俺も……あの道、通ったけど……見たことない……」
カイさんがつぶやくように口を開いた。
「でも、魔獣って言っても子供だったら目立たないこともあるかもよ?」とメリッサさんが言葉を継ぐ。
「……護衛、考えた方がいい」とカイさんは心配そうな目で私を見た。
「そうね……でも、『ギャン』の後は、危ない感じはしなくなったんだ。何となく、もう大丈夫って……そんな気がしたの」
私の言葉に三人は顔を見合わせ、しばし沈黙が流れた。
「……気をつけるに越したことはない……」とカイさんは小さく言った。
「リセさん、一人で山道を歩くのはちょっと心配だよ。ねえ、何か護身用の道具とか持ってる? 笛とか……火打石とか……」
「ん。それが良い。今から笛作って来る」
そう言うなり、カイさんは店を飛び出していった。
あー、この話題もお茶会には向いていなかったな。うーん、でもこれは相談しておいた方が良いから仕方がないな。
メリッサさんも、そろそろ帰ると言うので、メリッサさんにトイレのスライムについて聞いてみると――なんと! スライムは狩人に依頼して捕まえて来てもらうそうです。
ん? あれ、そうなると森の家のスライムってどうなっているんだろう。今まで気が付かなったけど、そもそも森の中の家は、この店よりも古くから無人だったんだよね。
という事は、家のスライムさんは、既にお亡くなりになっているのでは??
そんな事を思いながら、メリッサさんを見送った。
「ねえ、ユイナちゃん、家のトイレのスライムも特に何もしていなんだけど、ひょっとして、既に居ないとかかな?」
「え! そういえば、そうだね。でも、特に臭っていないんだよね?」
「う、うん。まあ」
な、なんちゅう会話だ。だけど、仕方がない。ファンタジーな世界でもトイレは大事なんだ!
「森の中の家は、おじいちゃんが管理していたから、何か知っているかな? あ、ここも空き家になってから、おじいちゃんが管理していたから、聞けばなにか分かるかも。リセさんはカイさんを待ってるんでしょ。その間に私が、おじいちゃんに聞いてきてあげるよ! ちょっと待ってて」
そう言うと、ユイナちゃんは村役場に行ってくれることになった。村役場は広場の近くにあるので、ここからはすぐの所だ。
「トイレは深く掘られているので、ちょっと覗いても真っ暗で見えないんだよね。この世界には懐中電灯のような物はないのかな? 火のついた何かを落とすのは危ない気がするしね。むむむ。仕方がない、おとなしくユイナちゃんとカイさんを待つとするか」
とりあえず、やることが無くなったので、店の中の掃除をしていた。
「ただいまー」
ユイナちゃんが元気よく店の扉を開けた。
「おかえりー。ノアさんに会えた?」
ユイナちゃんは、無事、ノアさんに会うことが出来てスライムの情報を持って帰ってくれた。結論から言うと、店にも森の家にも、ちゃんとスライムは居るらしい。ノアさんとカイさんが定期的にくず野菜やら雑草やらを適当に放り込んでくれていたそうです。
あー、そうすると、メリッサさんではなく、カイさんに聞けばわかったんだね。おしい!
などと話していると、カイさんが戻って来た。
そこで、一応、スライムについて聞いてみると、ノアさんが店のトイレを担当してくれていて、カイさんは森の家のトイレに雑草やら、木くずやらを放り込んでくれていていたようだ。
あ、そういえば、さっき野犬の話をした時に、あの道を通ったとか言っていたね。そうかスライムの餌やりに通っていたんだね。
「それでね。さっきの山道の話だけど、おじいちゃんに話したら、一度猟師の人たちに見回りに行ってもらうように言ってくれるって、ただ、明日は村の市だからね。それ以降になるって言ってたよ」
「え、明日は市場が開かれるんですか?」
「ん。……そう……町から人が沢山来る」
おお、そうか、あれか。エマちゃんが前に言っていた村の市か。
「ねえ。せっかく市が開かれるなら、私もハーブティーとか売れないのかな? 販売するのに許可と居るのかな?」
「ううん。そんなのは特にないよ。前もおばあちゃんが編み物を売っていたよ。適当に開いている場所に敷物をひいて商品を並べるだけだけど」
ふーむ。ノリはフリーマーケットに近いのかな。まあ、フリマは店出すのに勝手には出せないけどね。
「へー。じゃあ私もやってみようかな。本当は屋台と出せたら良いんだけどね。来年とかは、移動式の屋台を用意して移動販売をしようかな」
「ん? 移動式の屋台……とは?」
ふっふふ。カイさん、気になったみたいだね。
あ、そうだった。組み立て式の家具とか無いのか聞いてみようかと思ったけど、まずは、屋台の方だね。
それではと、移動式の屋台を説明してみた。私の思っている屋台は縁日で出ている屋台の方では無くって、駅前とかに出ていた
ラーメン屋とかおでん屋の屋台って言えば良いんだろうか……
そういえば、最近は見たことが無かったな。今時はあまり無いのかな??
えっと、とにかくリヤカーに小さなお店をみたいなものを乗っけている感じで、移動時は人力で引っ張っていくんだ。
もちろん私だって詳しい事は分からないから、ある程度折り畳みが出来て、こんな感じっとザックリとした説明してみた。
たぶん、カラ袋もうまく使えば重量も軽減出来るしね。




