森林に潜むアンノウン
ネクロスでは、ゼロとシュトルムが地下の訓練場で戦闘訓練を行っていた。
シュトルムは双剣で畳み掛けるがゼロはコンバットナイフ一本で全ての攻撃をいなしていた。
「くっ! てぇやぁあああ!! のわ⁉」
ゼロはかわすと同時に足を引っかけ、シュトルムはバランスを崩して勢いのまま前方へ飛んで行った。
「いったた……」
「前よりも俺の動きに付いて来れる様になったな」
すると、キャヴィルが駆け寄り、二人に革の水筒を手渡した。
「前回よりも三分も長く戦えてましたよシュトルム!」
「計五分。はぁ、いつになったら追いつけるの~!」
水を一気に飲み干すシュトルム。そしてゼロがアドバイスをする。
「片方の剣で押さえてる間、もう片方の剣で相手の死角から攻撃してみろ。その際、相手に感づかれないように。もし気づかれた際には玉でも蹴り上げろ」
「……それが自分にやられる事でも?」
「そうだ」
すると、エイドが訓練場に入ってきた。
「おおちょうどいいタイミングだったみたいだな。依頼だ」
四人は会議室に移動した。そこには既に、コマンド、スカウト、アナリューゼの三人が集まっていた。
「来たか。それじゃ、内容を略して説明するぞ」
コマンドは一枚の紙を手に取った。
「暗昼の大森林の北東付近にてアンノウンの雌個体が一体出現。そこで男を襲っているとの事だ」
「男を? なんで?」
頭を傾げるシュトルム。
「男は性的に襲うみたいだ。気に入ったら生かして気に入らなかったら、殺す。んで、女は死ぬか立ち去るか選ばせるみたいだ」
コマンドがそう説明するとゼロが首を鳴らす。
「っ……とりまそいつを殺しやいいんだろ?」
「まあそうだな。さて、スカウトは対象の位置を把握次第伝達。アナリューゼはスカウトからの情報を元に分析し、エイドに伝達。そして、エイド、シュトルム、キャヴィル、ゼロは、暗昼の大森林に向かえ」
「「「「「了解!」」」」」
「なのです!」
ゼロ以外は返答し、キャヴィルは仮面を被った。そして全員が持ち場へ向かった。
ー暗昼の大森林ー
「やっぱ暗いなあここ」
シュトルムが先陣を切って進む。
「気配、感じ取れないです。エイド~何か伝達はありました?」
「いや、まだだっと、噂をすれば」
エイドの右耳に魔法陣が展開した。
「こちらスカウト。対象らしき存在を発見。十時の方向に向かってくれ」
伝達を聞いたエイドが三人に伝える。
「十時の方向だ!」
四人が同時に駆け出す。そして向かった先に居たのは桜の様な色をして、風になびく髪が特徴の可憐な少女だった。
「うん? ふ~ん、今度は随分と食べ応えのありそうなオスが来たね~。でも…メスは邪魔ね」
突如体から蒸気が吹き出し、まるで兎の獣人の様な姿へと変態した。そして変身中何故か服が消えていた従来のアンノウンとは違い、残っていて髪もそのままだった。
「おっ、変わっても可愛いじゃん」
エイドの言葉に笑顔になるアンノウン。
「ふふ! 嬉しい事言ってくれるじゃん。後で可愛がってあげる。でもその前に、メスは死ぬか立ち去るか、選んで…」
シュトルムが自身気に答える。
「はん! 立ち去るわけねえだろ! あたしらはてめぇを殺しに来たんだよ!」
「そう、じゃ死んで」
アンノウンはシュトルムに急接近し攻撃。シュトルムは咄嗟に腰に付けた短剣で止める。
「へぇ、私を殺しに来たって言うだけはあるね」
するとアンノウン目掛けて蛇腹剣の先端が飛んでくる。
「おっと、危ない危ない。すごい武器使うねって、もう一人どこ行った?」
ゼロが居なくなった事に気づくが、ゼロは既にアンノウンの真後ろに接近していた。
「っ⁉」
アンノウンは間一髪の所で避けるが、キャヴィルに左腕を切断される。
「くっ…」
「ごめんなさいマスター…片腕しか切れなかったのです……」
「気にするな」
しかし驚いた。俺の奇襲に反応するとは…。
「ふむ」
アンノウンの腕は再生し、シュトルムとキャヴィルの二人との激闘を繰り広げる。そしてエイドと、いつの間にかに移動していたゼロが木に上り、観戦していた。
「特訓の結果出てんな、なあゼロ?」
「ああ。……エイド、コマンドにこう伝えてくれ」
ゼロはエイドに何か伝える。
「まじか…。まさかお前からその言葉が出るとはな。……ああコマンド? 実は……」
エイドは伝達魔法でゼロの提案を伝える。
「……それ本当にゼロの提案なのか?」
「俺も耳を疑ったさ。でもマジみたいだ」
「そうか、お前の判断に任せると伝えてくれ」
「あいあい~。お前の判断に任せるってさ」
それを聞いたゼロは木を飛び降り、アンノウンへ歩みを進めた。
「三尺」
ゼロの言葉に反応するようにゼロの左肩付近に穴が出現し、その亜空間から三尺刀が出現した。
「二人共、後は俺に任せろ。事情はエイドに聞いてくれ」
「何その武器。ていうか三人で来なくていいのぉ?」
無言のままゼロが急接近し、右腕を切り落とす。
「っ⁉」
速⁉ 硬化が遅れた…!
アンノウンは跳んで下がり、再生を始めるが、ゼロが猛攻を仕掛ける。それに対し、アンノウンは何とか攻撃を防ぐのに精一杯だった。
「くっうう…しつこい男は嫌われるわよ! っ⁉ あぶなっ⁉」
やばい…このままじゃ本当に殺される‼
アンノウンは咄嗟に逃げ出そうとするが、ゼロに後ろから刺された。その後に足を切断され、仰向けに倒れた。そこに、ゼロは心臓を避けるように胸に刀を突き刺した
「がはっ‼」
アンノウンはゼロに向かって口を開く。
「やめておけ。一式は溜めが長い、その間に心臓を斬るのは容易い」
「くっ……」
「お前には利用価値がある。選べ、死か、従うか」
「えっ…」
なんで? でも、従えば生きれる。
「し…従う‼ 従うから‼ ころさないで……」
涙目で必死に懇願するアンノウン。するとゼロは刀を抜き、背中に隠すよう回し、それに合わせるように亜空間が出現し、そこに収納した。
「ではさっさと再生して立て」
するとアンノウンは体を再生し、人間の姿に戻った。
「えっと…あんた達はな……」
聞き終える前にゼロに気絶させられ、そのまま担ぎ上げられた。
「終わったか。んじゃ戻ろうぜ」
エイドに皆が同意した。そして、スカウトが合流し、ゼロが問う。
「周りに人影は?」
「特になし。このまま撤退しても問題ないよ」
「そうか。ではキャヴィル、頼んだ」
「はいです! <次元亜道>」
すると空間に蜘蛛の巣の様な亀裂が広がり、中心から吸い込まれるように開いた。そして、中は道の様な異空間が続いていて、キャヴィルに続いて皆が入っていった。すして<次元亜道>は時間が巻き戻るように閉じた。
ーネクロスー
「う…ん……うん? ここは……」
ネクロスにあるベッドで目が覚める少女。
「あ! 目が覚めたのですね! 少し待つのです! マスター!」
キャヴィルはゼロを呼びに部屋を出た。
しばらくして、ゼロとキャヴィルが部屋に入って来た。
「起きたみたいだな。立てるか? 立てるならついてこい」
廊下を歩き、どこかへ向かう三人。その間、少女はソワソワした様子で辺りを見回していた。
「ねぇどこに向かってるの?」
「地下だ。そこに他の奴らが待ってる」
そして三人は、訓練場に入った。
「お待たせなのです!」
訓練場で待っていた他の構成員が一斉に少女の方を見つめる。少女は圧を感じ、固唾を飲み込む。
「さてと、名前を聞こうか」
コマンドが少女に問う。
「……ナタリー」
「ナタリーか。苗字は?」
するとナタリーはしかめ面となり、拳を胸に当てる。
「それはちょっと、言いたくない…」
ナタリーは目をそらした。するとコマンドは少し考えむ。
「……そうか、なんか訳ありみたいだな。まあいいか、とりあえずよろしく。だが、まだ現時点ではお前は利用される立場だ、そこは忘れるなよ。はい、解散」
その瞬間、一人、また一人と訓練場を出る。
「……えっと…これで終わり…?」
「そうだ…」
「ちなみに私って奴隷のような扱いって事?…」
ナタリーは心配そうに問い、ゼロは淡々と答える。
「まあ似たようなものだな」
「そう…だよね…」
肩を落とすナタリー。すると、キャヴィルが慰める。
「大丈夫です! ちゃんと成果を出せればその内認めてくれるのです!」
「うぅ…あんたいい子ね~名前は?」
キャヴィルに抱きつくナタリー。
「む~キャヴィルです~」
「……言っておくが、キャヴィルは千年以上生きてる」
ナタリーはゼロの方に振り向く。
「噓でしょ?」
「マスターも同じくらい生きてるのです」
「……ちなみに…他の皆は?」
キャヴィルを抱きしめたまま体が硬直して、ゼロに問うナタリー。
「安心しろ、他の奴らは普通に人間で普通にアンノウンだ」
「……私って…本当にヤバい所に来ちゃった?」
自分のこれからが不安になるナタリーであった。




