<称号>
「<無魔素魔法>……魔素を使わずに…か……魔素ってなんですか?」
インフェスに問うアンドレイ。それにインフェスが説明し始める。
「魔素というのはね、空気中に含まれる元素の1つでで、魔法を使う際に自身の魔力と魔素をエーテルに変換してそこから炎や水などに実体化させる。ちなみに魔法陣が展開するものはより複雑なものを実行、短縮するためにある」
イヴリンとカルラは関心を示す中、アンドレイだけは違和感を覚えていた。
さっき空気中の元素の1つって言ってたよね? つまり酸素などの概念を知ってる? この人は普通にこの世界の住人だと思うから、さっきの話に出てきたアレフって人が怪しいな。
するとインフェスがナニかの気配を感じ取った。
「うん? これはこれは、珍しい客人だ」
「えっ誰か来たのか?」
気になるイヴリン。すると、少し離れた林から1つの人影がこちらへと向かってきた。
「久しいね、ネロ」
「お前も変わってないなインフェス。最後に会ったのはいつだっけ?」
「確か……300年ぶりだね」
その言葉にアンドレイ、イヴリン、カルラの三人は驚愕した。するとイヴリンが声を上げた。
「いやあんたらいくつだよ!」
「「大体5000」」
「ごせっ……!」
イヴリンは啞然とし、カルラは情報処理しようとぶつぶつ独り言を呟いていた。アンドレイはというと……。
5000って…この人達ってもしかして人間じゃない? いやでもこの世界は元いた世界とは違うからそういうのもありえなくもないか。でもイヴはともかくカルラもあまりの驚きで固まっちゃってるし……。そういえばそんくらい魔導士として生きている場合どのくらいの魔力量なんだろう? いや待てよ、確か膨大な魔力量を持ち、不老不死の存在になったリッチってやつがあるはずだからこの2人ももしかして……聞いてみるか。
「あの、二人って……」
アンドレイが聞こうとしたタイミングでイヴリンが先に問う。
「あんたら人間か?」
先言われた~! まあいいけど。
イヴリンの問いに対し、インフェスが答える。
「今はちゃんと人間だ」
それに対し違和感を覚えるアンドレイ。
うん? 今は? つまり人間をやめる予定なのか? 仮面を被ったりして。もしくは人間の状態と人外の状態を切り替えられるのか? てかそれって人間といえるのか⁈
「……それで、私に何か用があるんじゃないのかい?」
「ああ、そうだった」
二人は三人に背を向け話し始めた
「昨日祠の封印が解かれた」
「っ⁉ それは本当かい⁈」
インフェスは今までになかった驚きの表情をしていた。
「それで……彼は今どこに?」
「俺の弟子と同居する事になった雪女のガキの二人と一緒に修行中だ」
「その子たちだけで大丈夫なのかい?」
「今あいつが監視をしてる」
「アレフか、ふぅ…なら少しはほっとしたよ」
インフェスの表情が和らいだ。するとカルラがインフェスとネロに問う。
「あの……先ほどから話してる内容を聞いてもいいですか?」
「……そうだねぇ、簡単に言えば厄災そのものが形になった存在の封印が解かれた。そして、今その厄災はネロの弟子たちと一緒いるというわけだ」
「えっ、それまずくないか⁈」
イヴリンが気が落ち着かない様子で問う。するとネロが答えた。
「落ち着け、アレフってやつが監視してる。正直認めたくないが、そいつは俺らよりも圧倒的に強い。
1000年前にあいつにまともに傷をつけれたのアレフだけだったからな」
「ちなみにその厄災の名前とどんな感じの強さなんだ?」
イヴリンが問い、ネロが答える。
「名前はフレアだが初級魔法とは別だ。まぁ、あいつがフレアを撃つ時に本人は無意識だったが<無魔素魔法>と双詠破棄で撃って上級魔法と遜色ない火力だったな。しかもあいつ
<分罪力自我>ていう力を分けて自我を持たせたやつを創って弱体化した後っていう」
弱体化してめっちゃ強いの⁈ 敵になることないよね……?
心配になるアンドレイ。するとネロがアンドレイに近づき、顔を近づけてきた。
「……この顔どっかで……いや、気のせいか。そういや会ってからどんくらいだ?」
「ついさっきだ」
インフェスの言葉に少し固まるネロ。そしてネロはアンドレイ達の方を向き。
「……ああ…こいつは胡散臭い奴だが信用はできるからまあ安心してくれ」
「あ、はい」
気まずそうに答えるアンドレイ。するとカルラが何かを思い出したかのように語りだした。
「あの、お二人はもしかして、<神の称号>持ちですか?」
「<神の称号>って何だ?」
カルラに問うイヴリン。
「まずは<称号>を説明するね。<称号>ていうのはね<特殊技>よりも習得条件が厳しいの。例えば<救済騎士>は、多くの命を助けるために騎士になって強くなった者がその信念を曲げなかっ事で世界に認められ、その<称号>得たの。そして<救済騎士>の能力は鎧や武器を具現化させたり、双詠破棄で神級魔法程の治癒魔法が使えるの。だけど<称号>って結構疲れるらしいよ」
アンドレイとイヴリンが関心を示す中、インフェスとネロは真顔でカルラを見つめていた。
「あの…どうかしました…?」
困った様子のカルラ。するとインフェスが真剣な表情でカルラに問う。
「君の年齢でそれ程の知識量、どこで知ったんだい?」
あたり一面に重い空気が漂う。
何だ? 急に空気が重くなった。詳しすぎるのがそんなに問題なのか?
固唾を飲み込むアンドレイ。イヴリンは硬直して、まっすぐ見る事しか出来なかった。そしてカルラが口を開く。
「創造主、ディミルス様に教えて頂きました…」
「創造主ディミルス? 君は『ディミルス教』の者かい?」
空気がいつも通りに戻り、インフェスの問いに驚くカルラ。
「えっ⁈ 一部の人しか知らないはずなのに、信徒ではなさそうですし、どこで知ったのですか?」
「アレフから聞いた。しかしディミルスか…、少しは納得だな…」
「そのアレフさんもディミルス様にお会いした事が?」
「会るみたいだね」
またアレフ。結局アレフって何者なんだ? 今ある情報だと、アレフって人は二人よりも強くて、二人が敵わなかったであろう相手に傷をつけられた。そして1000年以上生きている……うん、全然分からん。
結論を後にしたアンドレイ。するとイヴリンが口を開く。
「なあ、そろそろ<神の称号>の事を教えてくれないか?」
全くその通りである。
するとインフェスがフッと笑った。
「ふっ! 確かに、かなり話がずれてたね…! それじゃあカルラ、続きを話してくれるかい」
「はい! えっと、<神の称号>はね、普通の<称号>とは違って授かる方法の法則がないから急に現れる可能性があるの。しかも、年を取らなくなって変身状態を長い期間維持できるみたい。だけど人格が乗っ取られる可能性があってそこまではいかなくても性格は変わるらしいんだけどその辺りどうなのですか?」
それにネロが答える。
「ああ、確かに性格は変わるな。んで人格が乗っ取られた奴か…、何人かいたな…」
「んで、あんたらは<神の称号>持ちって事でいいのか?」
「ああ」
イヴリンの質問に返答するネロ。するとインフェスが手を叩いた。
「さて君達、そろそろ魔法の修行に戻りなさい。私はもう少しネロと話すことがあるが、すぐに戻る」
アンドレイ達三人は修行に戻り、インフェスとネロは林の方に移動した。
「それで、まだ何かあるんだろう?」
真剣な面持ちの二人、そしてネロが問いに答える。
「雪女のガキがいるって言ったろ? そいつがエンリーズと名乗った」
「……偶然…いや、そもそも雪女がいる地域の名前でもないわけだし、転生体なのかい?」
「分からん。だが容姿はそっくりだ。雪女というのも偶然じゃない気がする」
アンドレイ達はそれぞれ属性別で魔法が書かれてある魔導書を読み漁っていた。
するとイヴリンが何か閃く。
「なぁこれさ、雷魔法で筋肉に電気刺激を加えて、身体強化魔法を使ったらすげぇ事になるんじゃね?」
「でも体への負荷がすごいんじゃないのか?」
疑問を投げかけるアンドレイ。
「ま、一旦やってみる。すう」
イヴリンは大きく息を吸い、魔法を唱えた。
「<増強>。そして、電気を流す!」
イヴリンの体から赤い稲妻が放出された。
だがすぐに稲妻が収まり服が焼き切れ、体から煙が出てるイヴリンが残った。するとイヴリンは膝を
付き気を失った。
「イヴ!!」
「イヴちゃんしっかりして!!」
二人はイヴリンに駆け寄った。すると林の奥からインフェス達が駆け寄ってきた。
「一体何が遭ったんだい⁈」
アンドレイは先程の出来事を説明し、その間にカルラがイヴリンに治癒魔法をかけていた。
「…なんというか…、雷切を思い出すね」
「だな…うん?」
インフェスに相槌を打つネロ。そして、遠くの方で雷鳴が轟き、ネロが違和感を覚える。
「天気はいいはずなんだが誰か雷魔法でも使ったか?」
するとイヴリンが目覚めた。
「はっ! ラーメン総統! あれ? 何だ夢か」
「いやどんな夢だよ!」
ツッコむアンドレイ。するとインフェスが何か気づいた様子。
「カルラ、君さっき上位魔法と遜色ない程の回復速度だったが…、何を唱えた?」
「え? <治療>ですけど」
「ほう…初級魔法の無詠唱でその回復速度か……ふふっ…ふふふ! 素晴らしい! やはり私の目に狂いはなかった!!」
狂ったように高揚するインフェス。するとネロの足元に魔法陣が展開した。
「んじゃ、俺もう行くわ。じゃあな」
言い終えると同時にネロは転移した。
「で、雷切って誰だ?」
唐突にイヴリンがインフェスに問う。
「雷切は、神龍に認められ、その証となる<神龍の称号>を授かった竜人族の一人だ」
「いや<称号>何種類あんだよ」
毎度も代弁してくれるイヴリン。そしてインフェスが顎に手を当てながら答えた。
「通常の<称号>、<幻獣の称号>、<神龍の称号>、<神の称号>。それと<称号>と言っていいか分からないが<大罪>があるな。さて、修行に戻ろうか」
三人はそれぞれ、魔法を撃ったり魔導書を読みに戻った。




