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謎の魔導士

 翌日アンドレイは再びピリテオス大樹へと向かった。だが大樹から少し離れた茂みに2人が様子をうかがうようにかがんでいた。アンドレイは普通の声量で話してはいけないと思い、小さめの声量で話しかけた。

「2人ともどうし…」

 話しかけた瞬間イヴリンが静かにというジェスチャーをし、すぐに大樹を指差した。そこには大樹に触れるローブを羽織った男が立っていた。

「あれから長い時が経っているのにここは変わらないな。そこの茂みに隠れてないでそろそろ出てきたらどうだい?」

「「「⁉」」」

 男の最初から居るのを知っていたかのような一言に驚く3人。

「気づかれた⁉」

「どうしよう…」

 動揺するイヴリンとカルラ。

「……俺が出るよ」

「レイお前正気か⁉」

「あの人が信用できるのかわからないんだよ?」

 アンドレイを止める2人。

「だからこそだ。もしやばくなったらすぐに逃げてくれ」

 真剣な表情をするアンドレイにイヴリンは震える声で返答した。

「……わかった…けど、お前もやばくなったら逃げてくれ…わかったな…」

 イヴリンは俯き、最後に小声で呟いた。

「もう…あんなのは……」

 それに対してアンドレイは優しく答えた。

「…ああ、わかった。だから、安心してくれ」

「うん…」

 頷くイヴリン。

「えっと…気をつけてね…」

「ああ」

 カルラも心配そうに声を掛け、こちらにもアンドレイは優しく答えた。そしてアンドレイは茂みから出て、男から10メートルほど離れたところまで接近した。

 なんだ?この異様な感覚は……見た目は普通の人間だけど精気を感じない。それに合わせて若干の笑みがなんだか不気味だ。

「1人で出てきて残りは様子見…賢い子たちだ。だがもし、私がこの隙に仲間を後ろに隠れている子たちに接近していたらどうする?」

 男の言葉に咄嗟に2人の方に振り向くアンドレイ。

「ふふっ…そう焦るな、もしもの話だ」

 その言葉にアンドレイは胸をなでおろし、一息入れ、男に話しかけた。

「……あんたに…いくつか聞きたい…」

「かまわないよ」

 アンドレイは緊張しながらも質問した。

「…名前…そしてここに来た目的…」

 男は少し目をつむって考えこみ、そして質問に答えた。

「……私は名前は『インフェス・レテシオン』。ここに来た目的はこの大樹を久しぶりに見ようとね…けど別の目的ができた」

「別の目的…?」

 アンドレイはすぐにでも全速力で逃げれるよう片足を少し後ろに下げた。

「身構えなくてもいいじゃないか…。そうだ君たち、私の弟子にならないか?」

「……はっ?」

「「えっ?」」

 予想外の言葉にアンドレイに続き、後ろの2人も困惑していた。

 いきなりなにを言い出すんだこの人は、初対面だぞ。

「私は君たちに可能性を感じているんだ」

「……なに言ってんの…この人……」

 インフェスの言葉に困惑するあまりつい声に出してしまうアンドレイ。

「あ…そうだ、名前を聞いてもいいかな?」

 名前を聞かれ、アンドレイは渋々答えた。

「アンドレイ…へロス……」

「アンドレイ・へロスか……いい名前だね。ちなみに、この予言は聞いたことあるかい?」

「予言?」

 インフェスは語りだした。

「世界を破滅へと導く禁忌の子が生まれ力を十分に蓄えたころ、殲滅龍が誕生する。というものだ」

「禁忌の子…殲滅龍?」

 アンドレイはいまいち理解できてない様子だった。

「そう、君たちはそれに対抗できる。私は長年生きてきて弟子にするのに値すると思ったのは、君たちだけだ」

 インフェスの言葉でアンドレイは転生前にあった男を思い出した。

 まさか、あの人が言ってたことは禁忌の子と関係してるのか?だとしたらこの人の所で力を付ければ……いやそもそも俺にそんな力を手にできるのか?それとこの人はそれほどの実力者なのか?…実際に見てみるしかないな。

「まずは、あんたがどれほどのものなのかを見せてほしい」

「いいよ」

 インフェスはあっさり承諾した。

「だけどここでは甚大な被害を被る。すまないが全員一緒に来てもらう」

 4人の足元に魔法陣が展開した。

「えっちょ、承諾してないんですけど⁉」

 慌てふためくアンドレイ。そして後ろの2人も動揺していた。

「まじかよ⁉こんな離れてるのに!!」

「どどど…どうしよ!」

 そして一瞬にして荒野に転移した。

「すまないね。強硬手段に出たほうがいいと思ったからそうした」

「……、それで…ここは?」

 辺りを見渡すアンドレイ。するとカルラが驚きを隠せない様子でイヴリンに聞いた。

「あれ…ちょっと待って!いま詠唱どころか魔法名すら唱えてなかったよね⁈」

「えっ確かにそうだったけど、そんなにすごいのか?」

 イヴリンが疑問を投げかけた。

「無詠唱は上位魔導士の中でも、一部の人だけが使える。だけど魔法名破棄は神級魔導士の領域なの。ちなみにその二つを破棄することを双詠破棄っていうよ」

「ほう…その年で随分と詳しいね。感心するよ」

 カルラの知恵に思わず不気味な笑みを浮かべるインフェス。

「てことは…こいつそんなにすごいやつなのかよ⁉」

「うん」

 驚くイヴリンに頷くカルラ。

「なるどね、よし。生意気にもため口聞いてすみませんでした!!」

 突然勢い良く土下座をするアンドレイ。それを見て目を丸くするイヴリンとカルラ。

「ふふ…別に構わないよため口でもでも。ちなみに、君たちはどんな魔法が使えるんだい?これに撃つといい」

 インフェスは2メートル程の岩を作り出した。

「えっと…じゃあこれを」

 アンドレイは起き上がり少し離れた。そして岩に向かって指をさし、水を勢い良く噴射し、岩を貫通して彼方へと飛んで行った。それを見たインフェスは再度不気味な笑みを浮かべて、イヴリンとカルラは啞然としていた。そしてアンドレイはなにがなんだかわからず目を丸くしていた。

「無意識に双詠破棄で撃つとは…思った通りだね。ちなみに双詠破棄はそこまで難しくはない」

「「「えっ?」」」

 難しくないという言葉に3人は目を丸くしたままインフェスの顔を見つめた。

「いや…そりゃ神級魔導士にとってはだろ?それともあれか?イメージとかそんな感じか?」

 イヴリンの疑問ににインフェスは答えた。

「その通りだ、一般的に知られてないだけで双詠破棄はイメージとコツ、そして素質だ」

「てことはレイ君は素質があるってこと?」

 カルラの言葉にアンドレイは手の平を見つめ、思いつめていた。

 本当に俺にそんな素質が…。

 するとインフェスはアンドレイに質問した。

「アンドレイ、君は先程の魔法を放つときなにをイメージしたんだい?」

「えっと…ウォータージェット?」

 あまり深く考えずに撃ったために疑問形で返すアンドレイ。

「うぉーたーじぇっと?なんだいそれは」

「水圧で物を切断するきか…アーティファクトです」

 インフェスの問いに対して機械と答えようとするもとっさに言い換えるアンドレイ。

「ほう…そんなものがあるのか。水圧で破壊…あいつを思い出すな」

 インフェスは思いに浸っていた。

「あいつ?」

 気になるアンドレイ。

「私の同期だ。彼も私と同等の実力の持ち主で、水魔法をよく使っている」

「ちなみにその人の名前を聞いてもいいですか?」

「そいつの名前は、ネロ・ネプロドンだ」

 アンドレイの質問に答えるインフェス。するとイヴリンが…。

「メガロドンに似てんな!」

 これは共通認識らしい。

「メガロドン……そういえばアレフもそんなことを言っていたな。そうだ、私の攻撃魔法をお見せしよう」

 インフェスは3人に背を向き手に魔弾を作りだし全方へ放った。すると着弾地点に巨大な火柱が吹き上げ、あまりの閃光に辺りが暗くなった。

「ちなみにこれは魔素を使用せずに撃ったものだから本来であればもっと高火力かつ、もっと早く撃てる。そして、このやり方を知る者はごくわずか。君たちにこのやり方を伝授しよう」

 その言葉に目を輝かせるイヴリン、カルラは先程の光景の影響か未だに啞然としていた。そしてアンドレイは真剣な表情でインフェスを見つめていた。

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