無の執行人
フレアが盗賊を殲滅したころ王都直属の対アンノウンの組織『ネクロス』では、偵察に向かっていた『スカウト』からの報告があり、指揮の『コマンド』、突撃の『シュトルム』、支援の『エイド』、分析の『アナリューゼ』の4人が会議室に集まり『コマンド』が報告内容を話し始めた。
「報告によると盗賊の1人がアンノウンに変貌、そして誘拐された子供たちの1人ががアンノウンに変貌し盗賊を殲滅した。しかもほぼ一方的にだ」
「一方的に⁉えっ形態は?」
驚愕するシュトルム。
「どちらも第四形態だ」
「噓でしょ⁈幼いのにすでに第四形態で、しかも圧倒した⁉」
シュトルムはこの事実に動揺していた。そしてエイドが質問した。
「しかも噂によるとその盗賊ってかなりの実力者だったみたいじゃないか。どれだけ強力な個体だった…ん?」
すると所々パワードスーツのようなコートを纏いフードと仮面を被った男と、マントを羽織った黒髪ロングで赤眼の少女と、戻って来たスカウトが部屋に入って来た。
「戻って来たかスカウト。それと遅かったじゃないか『ゼロ』、『キャヴム』」
「申し訳ないのです~!」
無邪気な感じに謝罪するキャヴム。そして普段遅れることがない2人になにかあったのか気がかりなコマンド。
「少しな。……二体のアンノウンについてか?」
「そうだ。スカウトに聞いたのか?」
一緒に入ってきたので事前にゼロがスカウトに聞いたのかと考えるコマンド。
「いや、僕なにも話してない…てかなんで知ってるの?」
驚くスカウト。そしてキャヴムとコマンド以外の面々も驚きの顔を隠せない様子だった。そんなことに目もくれず話始めるゼロ。
「二体のうちのガキのほうは心当たりがある」
「是非聞きたいが…なぜ報告内容がわかった?」
「……」
コマンドの問いに対してゼロは少し考えこみ、そして答えた。
「いまは勘ということにしておいてくれ」
「……わかった」
コマンドは承諾した。するとキャヴムがコマンドに質問した。
「そういえばあの後どうなったのですか?」
「その後のことは知らないんだな。まあいいか」
コマンドが報告内容の続きを話そうとした瞬間スカウトが遮った。
「待って、ここからは僕が説明するよ」
「…そうか、では頼んだ」
コマンドはスカウトにまかせ、スカウトは話し始めた。
「じつは……」
スカウトは謎の男の出現、その人物によって子供たちが転移し、しばらくしてからアンノウンに変貌した子供と銀髪の少女と共に転移したことを伝えた。
「大勢を同時に転移、しかも魔法名を唱えず発動がかなり早い……神級はある可能性が高いな。念のため敵対の可能性があるとして警戒しておこう。そういえば心当たりがあると言っていたな」
コマンドはゼロに聞いた。
「ああ。おそらくそいつは…フレアだ」
「前に話してた名が紛らわしいやつか」
「そうだ、やつはこの千年で少しは制御できるようになったかもしれんが、力も増大してるだろうから油断できん」
するとシュトルムが自身気に聞いた。
「でも、どれだけ強くてもあたしたちなら倒せるでしょ?」
それに対しスカウトが異を唱えた
「それは難しいと思うよ。これはコマンドに報告はしたけどみんなには僕が直接言ったほうがいいと思ったから今説明する。2人の盗賊の攻撃が当たる瞬間、蒸気に紛れて消えたんだ。速いとか転移魔法とかそういったものじゃなかった。『肆式』をおとりにして背後に移動してたり。しかも溜めてる間隙だらけのはずの『一式』を、同じように一瞬で反対側に移動して撃った」
これを聞いた3人は驚愕した。そしてアナリューゼは興奮気味に…。
「あ…ありえません!『肆式』をその場に残すのは熟練度が高ければ可能ですが…『一式』を溜めていたのに速度を落とさないどころか移動先で即座に撃てるなんて不可能です‼……はっ!すみません熱くなってしまいました」
「いや大丈夫だよ。こんな情報信じろっていうほうがおかしいよね…だってありえないから……」
アナリューゼとスカウトは申し訳なさそうな顔をしていた。するとゼロがスカウトに質問した。
「……そういえば、魔導士みたいなやつはどんな外見だった?」
「えっと…ローブを羽織っててよく見えなかったけど青い髪に青い瞳だった。それとこんな顔だった」
スカウトは近くの引き出しから紙を取り出し右斜めの角度から見た顔を描いた。
「相変わらずお上手ですね」
絵の巧みさに感心するアナリューゼ。
「この顔…」
「見覚えのあるのか?」
ゼロに問うコマンド。
「ああずいぶん長く見なかったがよく知ってる顔だ。といっても向こうは俺のことをを知らんがな」
「どんなやつなんだ?」
「神級魔導士の中でも最強クラスの実力者だ。やつのところにいるんだったらしばらくは放っておいても問題ないが、頭のの隅にでも置いておこう」
「そいつにアンノウンに対抗するすべはあるのか?」
「ある」
「そうか、ではいまはお前の考えに従おう『無の執行』」
全員納得したようにうなずいたがスカウトだけは少し思い悩んでいた。