創造主
<魔素波動衝壊>発動。衝撃波と共に、複数の氷塊が生成された。その後すぐに、氷塊が砕け散った。すると、シスが口を開く。
「師匠…、これってもしかして…」
「ああ…、<魔素波動衝壊>だ…。だが…、これほどとはな…」
さっきのと関係してるのか? だがあの言語…、やはり…。
考え込むネロ。一方、アレフがフリーナに、一瞬で跳び寄る。
「フリィ!!」
アレフがフリーナを腕に抱えると、フリーナが目を少し開ける。
「あれ…私…」
「大丈夫⁈ どこか変な所はない⁈」
「少し頭がくらくらする…」
周りを見渡すフリーナ。
「何があったの…?」
すると、ネロが近寄る。
「説明は後だ。まずは戻るぞ」
アレフはフリーナを抱えた。そして皆は、ネロの家に戻る。
「さっきのすごかったなぁ…」
フレアは一瞬振り返り、先程の出来事に浸る。
「大丈夫そうですか…?」
心配そうに、フリーナに問うシス。
「うん、大丈夫…!」
すると、フレアが問う。
「なあ、さっきのは何だったんだ?」
少し間が空き、ネロが答える。
「<魔素波動衝壊>…。有り余る魔力が『活性魔素』化して、辺りに一気に放出される現象だ。例えばさっきのだな。単純に活性魔素を放出するだけのもあるが、よく使っていた属性魔法、もしくはその属性に関する種族だった場合は、氷はさっきの、炎だったら爆炎が噴き出るって感じだ」
すると、シスが先程の『声』に言及する。
「あの…、先程の声なんですが、何を言っていたのか分かります? 聞いた事がない言語だったので…」
それには、アレフが答えた。
「あれは神の言語だね。『理の神』や天使達が使ってるんだけど…」
「力の一部を解放するって言ってたよな」
フレアの言葉にネロとシスが驚愕し、ネロが問う。
「言葉が理解できたのか…?」
「何か分かった。ちなみにフリィは分かったのか?」
「うん…」
すると、アレフが玄関に向かう。
「それじゃあ私は帰るよ。ネロ、後であの男から聞き出した事を教えてくれる?」
「ああ、分かった」
「それと三人も、今日はいろいろとあったし、ゆっくり休んでね。それじゃ!」
そういうとアレフは家を出た。そして、ネロ以外の三人は部屋に戻った。
「さて…、調べる必要があるな…」
ネロは、地下に下り、書庫へ向かった。
ー???ー
アンドレイは見知らぬ森林にいた。
「……。いやここどこだよ‼」
まじで俺なんでここにいるんだ⁉ さっきまで自分のベッドで寝てたのに。いや待てよ、もしかして。
アンドレイは自分の頬をつねる。
「痛い…」
てことは夢じゃない…? 魔法は…。
掌に炎を出すも、すぐに消えた。
「まじかよ…」
でも体はいつも通りだ…。うん?
ふと後ろを向くと、遠くに赤い輝きが見えた。
「ひとまずあそこに行くか…」
アンドレイは森林を、赤い輝きに向かってまっすぐ進む。すると、声が聞こえてきた。
「なんだ…?」
声の方へ駆ける。すると、崖があったので立ち止まる。だが、声と光の在り方を見渡せる位置だった。
「何だ…、あれ…」
アンドレイの目に飛び込んできた光景は、赤い輝きを放ち、赤黒い煙を放つ100メートル程の大きさのクリスタルと、クリスタルの周りには、数十の朽ちた人型の何かが散乱していた。そして、離れた所に、防護服に身を包んだ複数の人物がいた。
「え…、あれって…」
アンドレイが見たある物。それは機械の様な装置だった。
「何か観測してるのか…? っ⁉」
突如、強い地震が起こる。
「地震⁉ 今までなかったのに⁉」
突如、クリスタルにひびが入り、勢い良くひびが広がる。
「何が起きて…⁉」
クリスタルが完全に砕け散り、中から何かが出て来て、赤黒い煙と砂ぼこりを衝撃波と共に散布しながら地面に倒れこむ。そして”それ”は、両腕を地面に付けて体を起こす。”それ”は赤黒いエネルギーが、龍の姿形をし、翼は、腕の形をしていた。そして体を支えていたのはその翼腕だった。そして、その龍の全高は100メートル以上あった。
「何だよ…、あの大きさ…⁉」
驚きのあまり、硬直するアンドレイ。そして、全力で逃げる防護服姿の人達。突如、龍が翼腕を頭上まで上げると、勢い良く地面に叩き付けた。すると龍が咆哮し、それと同時に翼腕から地面に何かを流し込む。流し込んでからそう時間が立たずに、再度地震が起こる。
「たく何が起きてんだよ⁉」
何だよ…、なんなんだよ⁉ 知らないとこで目覚めてその後にこんな事に巻き込まれるなんて⁉ うん? あそこ、光ってる。
アンドレイは、離れた所の地面が赤く輝いていた事に気が付いた。一方、地震はこの区域だけではなく、世界中で起きていた。そして同じ様に、地面が赤く輝いている所が、全部で12か所あった。そして、赤く輝いていた地面から、赤黒いクリスタルが生成され、同様に赤黒い煙を放出する。しかしそのクリスタルは、龍がいたクリスタルの半分の大きさしなかった。
「何が起ころうとしてんだ…? え…、さっきまで、晴れてたのに…」
気がつけば、赤い雲が空を覆いつくしていた。この区域だけではない。世界中の空が、赤い雲で覆いつくされていた。すると、アンドレイは声を聞いた。
「……<討神魔導兵器・typeΩ>の起動を要請する!」
討神魔導兵器? 討神の名を関するて事は、絶対ヤバいやつじゃん。これ、逃げた方がいいか? まああの龍がいる時点で逃げた方がいいけど。
すると、凄まじい閃光と共に、巨大な飛行機が出現した。
「え…は…⁉ 何だよありゃ⁉」
てかなんでこの世界にあんなのがあるんだ⁈
予想外な者に戸惑うアンドレイ。すると、飛行機が変形し、人型となった。それはまるで、巨大ロボであり、全長は龍より少し小さいくらいだった。
「巨大ロボ⁉ 巨大ロボ何で…⁉」
まさか、あれが討神魔導兵器・typeΩなのか? とりあえず離れない…と…。
突然の目眩で、アンドレイは気を失った。
ー???ー
「うーん…」
「うん! 目が覚めたね!」
アンドレイの目に飛び込んできたのは、白く光沢のある髪に、右目が緑で左目が青の、可愛らしい子がしゃがんで、アンドレイの顔を覗き込む様子だった。そしてアンドレイは、そのあまりの可愛らしさに見惚れていた。
イブとカルラも、かなり可愛いと思ってたけど…。これ程可愛い子がいるとは…。
「どうしたの? 立てる?」
「え…⁈ あ、うん…」
アンドレイが立ち上がると、周りが白い空間だという事に気が付いた。
「ここは…」
「特に名前はないけど、とりあえずこの僕…『ディミルスの空間』て呼んでる」
ディミルス⁉ この人が…⁉
「とりあえずついておいで」
ディミルスについていくアンドレイ。すると、襖が見えた。ディミルスは襖を開け、真っ白に光って、中が見えない部屋に入る。するとディミルスの服が、フレアと同じ服装に変わった。しかし、服の色を反転させた色合いだった。
「うん、やっぱりこの服装がしっくりくるね。うん? 入らないの?」
「……その服…」
「うん? ああ…、そう、君がよく知る服だよ。そして、僕は君の事も、君の師匠、インフェスが話したフレアの事も、この世界の森羅万象全てを知ってるからね」
全て…じゃあこの人なら。
アンドレイが質問しようとした瞬間、ディミルスが制止するように手を前にかざした。
「まずは入ってよ。話はそれから」
アンドレイは襖をくぐり眩い光が収まるとそこは、真ん中にこたつ、端に大きめのテレビが置いてある、十畳の和式の部屋だった。
「え…」
「何だか安心するんだよね。この部屋。さっ、こたつに入って、話をしよう。あれは今から…」
「大丈夫だ問題ないので本題に入りません?」
「あはは! それもそだね!」
二人はこたつに入った。そしてアンドレイが、ディミルスに質問した。
「あの、カルラも同じ様にこの部屋で?」
ディミルスはみかんを食べながら答える。
「違うよ。カルラはさっきのなーんもない所で僕は、あの露出度が高い服装で色々と教えてた」
「ああ…確かに、重要な部分は隠してますけど少しずれたら見えそうですからね…」
「うん、モグモグ…。ああそれと、普通に友達感覚でため口でいいよ」
「え、ああえっと…分かっ…た…」
少し戸惑うアンドレイ。
「あと僕男の子だからね」
「……え…はっ⁉」
マジで⁉ 俺、男相手に見惚れてたのか⁉
突然の告白に、驚くアンドレイ。それに興じるディミルス。
「あっはは!! やっぱ面白いや!! ああそうだ、さっきまで見てたやつ、気になる?」
先程まで明るかった声質が、まじめなものに変わった。そして、アンドレイが問う。
「……俺が見たあれって、何なの?」
ディミルスは、テレビの方ほ向くと、テレビにアンドレイが見た龍が映し出された。
「これが、創破龍ウロヴェウスだよ」
「こいつがそうだったのか…。そういえば、創破龍の由来って、ウロヴェウスが理を作り替えたからって聞いたけど」
ディミルスは気づいたら置いてあるココアを一口飲み、答える。
「うん。実際にウロヴェウスは完全ではないけど、僕の創造と僕が持ちえない相反する力、破壊の力を持つ。”あれ”は、創造という名の破壊と、破壊という名の創造を行って今の魔素が溢れた世界を創り上げた。さてと…そろそろかな。最後に一つ質問に答えてあげるよ」
アンドレイは考えた末に、質問をした。
「姉は…、無事なのか…?」
「うん。ちゃんと生きてるし、生きて会えるよ」
アンドレイはそれを聞いて、ほっと胸をなでおろした。すると、アンドレイの体が煙に巻かれ、消えた。
「……」
一人残された部屋の襖が開き、ロボ娘という風貌の存在が入って来た。
『<原初の機>人型闘滅機・オリジン』
「Ωについて話さなくてよかったのですか? マスター」
「それは、自分の目で見る事になる。心配してるの? オリちゃんは優しいね!」
「気になっただけです。……彼は本当に姉に会えるのですか? たしか彼女は…」
オリジンの疑問に、ディミルスは淡々と答える。
「ちゃんと生きて会えるって言ったでしょ? まあ最悪な形で、だけどね…」




