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ミッドフィルダー タクマ ~強豪校のエースが田舎の学校でサッカー始めました~  作者: 或 真土
ミッドフィルダー タクマ ~勝ち残れ!北海道大会Aブロック編~
9/25

SCORE 08 HEAT UP!

 小樽市立オタモイ高校はDF城ケ崎の活躍により、何とか一点を返す事に成功する。だがここで痛恨のアクシデントに見舞われてしまう。よりによってエースのタクマが怪我を再発してプレー続行が困難になってしまったのだ。


 「クロスプレイはサッカーのつきものってね…」


 朝里高校のフォワード田西は深々と頭を下げて持ち場に戻る。普段から荒々しい言動が目立つ生徒だが、サッカーというスポーツでは公正さを保っている。タクマから憎まれ口の一つでも聞ければ、少しは気が楽になったのかもしれないが逆にタクマは田西を気遣った。


 (これが王者の貫禄か…)


 一年の田西の表情から勢いのような物がごっそりと抜け落ちていた。そしてそれを見逃す日向ではない。彼はタイム直後に三年の控え選手、国本虎徹を出して生きたのだ。


 「あらら…。今日は俺の出番なしって言ってなかったっけ?」


 国本は不敵な笑みを浮かべながらグラウンドに入ってくる。古豪・朝里高校において日向と共に双壁を為すこの男はジュニア時代には北海道代表として活躍していた過去を持つ。


 「そうも言っていられねえよ、国ちゃん。キーパー頼むわ。俺が出る」


 日向はベンチ奥でユニフォームを着替えていた。久々の日向のストライカー姿を見たアサリの部員たちが沸き立った。朝里高校は日向が攻めに加わると全く性格の違う攻撃特化型のチームとなるのだ。

 果たして試合はここかどうなるのか両陣営一同は固唾を飲んで見守る。



 (前回までのあらすじ)

 ふじわらしのぶ(仮)の推しのVチューバ―、北条麻里奈は男性だった。絶望に打ちひしがれるしのぶ。彼の目の前に救世主が現れる。


 「しのぶ君、これを飲むんだ」


  謎の男は髑髏のマークがついた薬瓶をしのぶに手渡す。


 「これは?」


 「キューシンだ、飲むと落ち着いて頭がスッキリする。そしてこのアルコール度数高めのレモンチューハイで流し込むと、――ゴックン。なんかいい気分になって気が大きくなる。エッセイでも好きな事が書けるぞ?」


 「それ昔のラノベ作家がやってエライ事になったヤツだよな‼アル中増やしてどうするんだ‼」


  …続く。



 

 はいはい。話はここで終わりだから。ポイント入れて、ブクマつけて、次の更新をまっておくんなまし。ここから先はただの字の羅列だから、気にしなくてもいいよ。ホラ、頭の良い人は大学の学術論文とか読んでエッセイとか書くといいよ。きっとみんなからエライエライって褒められるよ?ここから先はね、中卒みたいな学歴の男が書く詰まんない話だから。頭がいい人が読むと目が腐るから。見ない方が良いよ。これは親切心から言ってるんだ。



 お?読むのかい?脳がおかしくなっても責任は取らないからね?



 では「斬光のエスペランザ」続けるよ。


 

 PHASE 04 ”FREE FOR ALL”

 

「負傷した敵機エモノの前で舌を舐めずる。三流の悪党みたいな真似をするな、チャーリー。既にバトルステージは変わっている」


 屈強な、生え抜きの老兵オブライエンは大型の盾を持ってチャーリーの前に立った。

 その直前にアンナは威嚇射撃したが、オブライエンは魚鱗装甲を展開しそれを防いでいる。アンナとオブライエンはこの瞬間に互いの力量を認め合っていた。


 「OK、先輩。そのままサポお願いしますよ。分け前は七対三で」


 チャーリーは脚部ホバー機構の制御スイッチを倒した後、足元のペダルを豪快に踏み抜いた。

 地面に転がるコルボ―の残骸を砕きながら一瞬でリ・エスペランザの前に到達する。


 「これ本部に売ったらいくらになるんだよ?」


 そして間髪入れずに隠し持った人型戦車用のヒートナイフで小さく横薙ぐ。


 アンナはこれを左複腕のナックルガードで受け止めると同時にオルトロスの服に向って前蹴りを放つ。


 チャーリーはニヤリと笑いながらこれをバックステップで巧みに躱した。さらに僚機のフォローとばかりにオブライエンはグレネードランチャーでリ・エスペランザを銃撃する。

 爆炎と噴煙でチャーリーの姿は一時的に焼失し、いつの間にかオブライエンの背後に戻っていた。


 「良い腕をしている。今の連携にも対応して、魚鱗装甲スケイルを故意に使わなかったな。それだけに味方では無い事が実に惜しい」


 オブライエンは片手に持ったカイト・シールドを展開し、その次の展開に備えた。


 「‼」


 アンナは不穏な空気を察知して翼を広げ、オブライエンたちとは逆の方向に飛行する。


 じゅぼあっ‼


 まるでその時を見合わせたかのように地面が燃えた。


 「インフェルノ!?」


 リリは地面に設置された八角形の円盤を見て、素っ頓狂な声を上げる。

 軍学校では常に消極的な態度の彼女が唯一意欲的に受講する「情報科」の授業。

 その中で他国の兵器で最も警戒すべき物として紹介されていたのだ。


 瞬時に半径五十メートルを焼き尽くすというインフェルノと呼ばれる地雷だった。その火力たるや人型戦車を丸ごと消し炭に変えてしまうほどである。


 「俺は寡欲なんだよ」


 地面に伏せって身を隠していたもう一人の男ロジャーはスイッチを押す。

 彼とてリ・エスペランザに興味はあったのだがオブライエンとチャーリーの神連携に対応するような相手ならば、下手な博打を撃つよりも確実な結果を手にする事を優先しただけの話だった。


 (あの可翔翼、中尉殿の”バードラー”に似ているような気がするが…どうもキナくさいな)


 地雷の遠隔操作用のコントローラーを背部ギアボックスに収納して機銃を構え、すぐにオブライエンのフォローに入る。その頃には復帰したチャールズと三人で正三角形デルタストライクの陣形を完成させていた。


 「前に出過ぎだ、チャーリー。お前の悪いところはだな…」


 オブライエンはしかめっ面でチャーリーを嗜める。パイロットとして優秀な若者だったが、功名心が強く肝心なところで勝機を見逃すという悪癖が度々目立っていた。

 歴戦の勇士たるオブライエンの目から見てもリリとアンナが乗るり・エスペランザは紛れもない強敵であり、オブライエンたちが全滅という結果も十分に考慮していた。


 「はいはい。”操作技術を鼻にかけて、相手を低く見る。それで幾つ勝利を手放してきた?”、――でしょ。耳タコっすよ」


 チャーリーはコックピットの中で両手を広げて見せる。


 「今のインフェルノでフルシティ気味にローストされてくれるといいんだけどなあ…」


 ロジャーは至極厭世的な視線を白煙の向こう側を覗く。そして目標に照準を合わせて引きトリガーを引いた。

 突如としてガン善意出現したり・エスペランザはロジャーのオルトロスの喉を掴んでそのまま地面に叩きつける。


 「これ、どうしてくれンのよ‼メッチャ焦げてるし‼」


 ガスッ‼


 アンナは地面に転がったオルトロスの腹につま先を叩き込む。


 胸部コックピットにいたロジャーは全身を打ちつけてしまった。全身打撲によって受けたダメージのせいで今は声を出す事もままならない。正に踏んだり蹴ったりとはこの事だろう。


 「よくも俺の戦友を…てかぁッ‼」


 チャーリーが土煙を上げてり・エスペランザに接近する。その間にオブライエンはロジャーを抱え、十分な距離を取っていた。


 ザンッ‼


 次の刹那、チャーリーのオルトロスの野太い左腕が地面に落ちる。


 「すご…」


 「あはっ‼このエペ公の長剣バスタードソードはね、元の機鋼軍神(メルカバ―)のをまんま使ってンのよ。トーフ切るより、楽だったわ」


 早くも勝利宣言するアンナを尻目に、リリは手早く魚鱗装甲を前面に展開する。ロジャーを救出したオブライエンによる銃撃だった。ご丁寧に機銃ではなく拳銃を使用している。

 その見事な三連射によって魚鱗装甲は瞬時に解除され、轟音と共にり・エスペランザは尻もちをつく。これが致命傷にならなかったのはオブライエンのショルダータックルを先読みしたリリの功績である事は紛れもない。


 「アンナ、複碗でカバー入って。また来る」


 リリは目の前に転がるロジャーのオルトロスを凝視しながら、残る二体の機獣の動向を見守った。

 実際ロジャーの機体は腰部モーターをやられて何も出来なかったのだが、オブライエンの完成された動きは必要以上にリリの警戒心を高めていたのだ。


 一呼吸おいてオブライエンは緊張した面持ちで僚機に告げる。


 「総員、陣形フォーメーション”ラグナロク”だ」


 いつもニヤケ顔(ファニーフェイス〉のチャーリーもこの時ばかりは真剣な表情になっていた。


 「OK」


 左腕を失ったチャーリーのオルトロスは右を、その反対側にはロジャーが立っていた。心なしか普段から不景気な顔つきに陰影かげが差している。

 実際にかなりの覚悟が必要となる戦術だった。


 「俺たちにこの陣形を使わせるとは…」


 まずは前方に隻腕のオルトロスが躍り出る。残りの二機は中腰で機銃掃射に入った。


 (魚鱗装甲にこんな攻撃が効くとは思えないけど…)


 リリは万が一に備えて通常の四割ほどの出力で魚鱗装甲を展開する。


 惑星アトラス特有の灰燼ジンという空気中に常に停滞している物質を取り込み、3Dプリンターで粒子状にして放出する万能障壁にも限界という物は存在する。

 また原料となる自然由来の灰塵ジンが無くなれば自ずと人型戦車クワドリガの本体から削り取られてしまうのでそのあたりには十分な配慮が必要だった。


 カンカンカンッ‼


 空中に物体同士がぶつかったような硬質音が響き、弾丸が地面に飛び散る。


 「これは狩りじゃない。一方的な殺戮ヨン」


 アンナは口元を歪めながらチャーリーのオルトロスに接近した。


 オルトロスは近接戦闘用の片手斧ハンドアクスでこれに立ち向かう。長剣と片手斧がぶつかり合っては火花を散らし、らじわじわとオルトロスは後方へと追い詰められていった。


 「じゃあね、BYE」


 アンナは一歩、踏み込んでオルトロスの頭頂部に長剣を振り下ろす。

 オルトロスは片手斧で受けようとするが、――ジュッ。刃が触れた先から溶けてしまう。機鋼軍神(メルカバ―)の持つ”輝神剣フラガッハ”の威力は正しく伝承の通りだった。


 「――ッ‼‼」


 怖いもの知らずのチャーリーも思わず絶句してしまうような出来事だった。


 オルトロスの機体は軍から支給された中古品だったが、武器はチャーリー自身が人脈を頼りにかき集めた逸品ぞろいである。なまじ武装の鑑定眼には自信があったので、こうも容易く破壊されてしまってはショックも大きかった。


 「よく耐えた、クソガキ」


 斬撃を受け損なって地面に転がったオルトロスを飛び越えて、オブライエンのオルトロスが強襲を仕掛ける。右手には古式ゆかしい手榴弾パイナップルを握っている。


 「甘い」


 アンナは好戦的な笑みを浮かべながら剣を水平に構えて、狙いをオブライエンに定める。


 しかし残ったロジャーのオルトロスはカバーに入るわけでもなく、なぜかその場を離れない。

 

 リリはそこに違和感を感じる。


 その時、オブライエンのオルトロス右腕が肘の先から外れてしまった。


 「ッ‼」


 アンナは身の危険を感じて、咄嗟に胸部のコックピットを庇う動作をする。


 カッ‼


 その刹那、切り離されたオルトロスの手の中にある手榴弾が破裂して視界を真っ白にしてしまった。

 オブライエンは残った手でチャーリーを支え、チャーリーもまたオブライエンを支えるような形で脱兎の如く走り去る。

 さらにロジャーが加わって三人四脚のような姿で巨大な人型戦車は逃走した。


 リリとアンナはあまりにも大仰な逃走劇を目の当たりにして呆気に取られる。

 確かにある意味、桁外れの覚悟を強いられる選択だった。


 「ああいう戦法もあるのね…」


 「うん。社旗勉強になったった…」


 二人はその後、オルトロスの動体反応が完全に消えるまでその場に立ち尽くす。竜頭蛇尾とは正にこの事だろう。


 「リリちゃん、アタシの飲みかけだけどいる?」


 三機のオルトロスの反応がレーダーから消え去ってから数十分後、二人はリ・エスペランザのコックピット内で休憩していた。

 貴重な飲料水で作ったスポーツドリンクだったが、共に試練を乗り越え戦友となったゆえか実兄から”究極にして最悪の守銭奴”と揶揄されるアンナの態度は柔和な物となっている。

 小猫のようなつぶらな瞳でリリの横顔をじっと見つめていた。


 「ありがと」


 「汗かいてるねー。デカいおっぱい、タオルで拭いてあげようか?」


 アンナは隣の席に割り込んでリリの胸元に手を突っ込もうとする。しかし、大型機械の整備で鍛えられたリリの腕力によって逆に抑え込まれてしまう。


 「言っとくけど私は同性愛とかには興味ないから」


 リリは目を三角にして断固拒否する。


 「アタシだって無いよー」


 この後、アンナはジト目のリリに監視されながらり・エスペランザのチェックに入る。

 人型戦車には自己調整機能は備わっているのだが、万能では無い為に十回に一度くらいの割合で自身の目で確かめる必要がった。


 「私も手伝うわ。マニュアル貸して」


 「ん」


 アンナはリリに自分の携帯型PCを手渡す。リリは自分のPCで暗証番号を読み取り、モニターにマニュアルを貼付するとそのままリ・エスペランザのメンテナンスを行う。

 リリの自らの役割に真摯に向き合う姿は亡き両親を思い出させた。


 「あはははっ。アタシ、何か泣いてるっぽい」


 アンナは両目から知らずの内に流れる涙を拭いていた。

 彼女がまだ幼い頃、両親は爆発事故に巻き込まれ重傷を負いながらも兄と自分を逃がす為に調整途中だったリ・エスペランザの最終調整を終えて息絶えたのだった。

 その頃のアンナは幼く自分自身の身に何が起こったのかさえ知らない。


 全ては今、不在の兄から聞かされた話だ。


 「これで当面は何とかなるんだろうけど。問題はウチの子なのよね」


 「ああ、工場の中に置いてきたハウンド?」


 ルシタニア兵との攻防の中で、リリの愛機であるハウンドカスタムは未だコーカサスの廃工場の中に置きっぱなしになっている。

 肝心な起動データのバックアップは取ってあるので放置しても良いのだが、廃棄されそうなところをリリの全財産を叩いて買い取った代物なので心残りは多々ある。


 「うん」


 「じゃあさ、エペ公を使って取りに行こうよ。移動用に使っているコンテナあるからそこに置いておこう」


 リリの気持ちを何となく察したアンナは快く協力を申し出る。

 リリはすっかり彼女に気を許し、二人はハウンドカスタムを回収する為に工場内に戻るのであった。


 それから一時間後、工場内の資材置き場にあるアンナの仮住まいに身を置く。


 アンナによれば、彼女と兄は生まれ故郷である都市シラクサを出てからは十年近く放浪しているらしい。


 「目的地とかあればいいんだけどね…。とにかく現時点ではどこの町にも長い出来ないわけよ。エペ公のせいで」


 アンナは小屋の内部に敷かれた畳シートに寝転がりながら、外にあるリ・エスペランザを睨む。

 両親との大切な繋がりには違いないが同時に自由を邪魔する足かせでもあったのだ。


 「ところで、そのお兄さんはどうしたの?」


 「わかんない。多分買い出しかなんかに行ったんだと思うけどさあ。上手くキャラバンと遭遇できるといいんだけどねー」


 アンナは愚鈍を絵に描いたような兄の横顔を思い出し、嘆息する。

 彼女の兄、蔵人はアンナ同様に戦闘能力にのみ特化した無能人間だった。正直、砂漠でのタレ人で要る可能性も否定出来ない。


 「捜しに行こうか?私はもう結構回復したから出発してもいいよ」


 リリはアンナからもらったフルーツ味のブロックフードを食べていた。

 ブロックフードの包装紙には「食うな、お兄様専用」とサインペンで書かれていたのだが見なかった事にしている。


 「いいよ。それよりここで一人で爆乳鑑賞会したいしー」


 そう言っては寝返りを打って、様々な角度からIカップ(推定)の爆乳を視姦する。


 「アンタっては…ッッ‼」


 リリはアンナに目隠しをする事にした。アンナはしばらく文句を垂れていたが、急におとなしくなる。


 「ただいまー」


 それもそのはず朝方から行方不明になっていた兄が帰ってきたのだ。


 ガチャリ、ドアノブを捻って部屋の中に入ってきたのは見るからに善良そうな顔つきの若者だった。

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