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ミッドフィルダー タクマ ~強豪校のエースが田舎の学校でサッカー始めました~  作者: 或 真土
おっさんに転生したおっさん異世界に転移して、自分の人生が無駄なものだと悟り全世界を道連れに消滅する
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第五話 異世界に転移したおっさん、自業自得で前歯を砕いて大いに苦しむ。後悔しても、もう遅いです。

 ~ 前回までのあらすじ ~


 俺は自分の遺体を隠す為に地道な作業をしていたわけだが、そこをクリスタルレイクに来ていた不謹慎な陽キャ集団に見つかってしまった。

 どうする?今ならまだこいつ等を皆殺しにして全て無かったことに出来る。

 デッドオアアライブから始まる俺の異世界生活に乞うご期待…ッ‼


 震えが止まらねえよ、パトラッシュ‼


 「あのおじさん、その死体は…?」


 ヘンリー・アーチボルトはブルーシートに寝かせてある俺の死体を指さす。ヤツのパーティーの連中も気がついたらしく俺の許可も取らずに俺の死体に群がって行った。


 「あ、コイツは人間に化けて悪さをするモンスターでね。今さっき俺もコイツに遭遇して化けられちまったわけなんだ。やっつけたのはいいんだが、処理に困っていてね」


 俺は苦笑しながら真実を伝える。自発的に死体を処理して埋めようとは思っていたが、それは作業の効率化を求めた結果であって他意は無い。無いったら無い。


 「それは困りましたね。でもこのまま死体を遺棄したら、獣が集まって村人が危険に晒されるかもしれないので、一度近くの村まで運びましょう。お手伝いしますよ」


 俺はヘンリーに促されるままに俺の死体を担いで、近くの村に移動する。パーティーの力持ちであるパトリックと回復術師のケビンが助力を申し出てきたが丁寧に断った。

 連中はまだホトケさんの顔を確認していないようだが、どう考えても俺と瓜二つの顔をしている。関係性を疑われて十津川警部(渡瀬恒彦を希望)を呼ばれては厄介だ

 誰にも触らせねえ…ッ‼絶対に…ッ‼


 森を向けてニ十分後くらいに村に到着した。俺は陽キャどもの案内で村の礼拝堂に向かう。

 この村はこの国の国教から派遣された巡礼士が年に数回、牧師代行をする形式の祭事場で今は村長が代行の代行を務めていた。

 尚回復魔法の使い手であるケビンはシャーマン系の魔術師なので教会とは無縁らしい。


 神などこの世にはいねえ。いたらまず俺が神とやら殺してやるッ‼


 この世に救いなんていらねえんだよ‼


 教会の中では黒い礼服を着込んだ中年の男が俺たちを待っていた。男は俺たちの姿を認めると慇懃な様子で語り掛けてくる。


 「ほう。貴方は十年ほど前に癇癪を起して前歯を全損してしまったそうですね?」


 「それは違う奴の話だ。俺が自分で抜いたのは右の奥歯だ、三十過ぎて乳歯だったヤツ。すげえ痛かったけど、母ちゃんに手を握ってはもらわなかったな」


 こうして俺は村長の立会いの下、自分の葬式及び埋葬をする羽目になった。かかった費用は350G(※現実世界で三十万くらい)で無一文だった俺はしばらく村の農作業の手伝いとヘンリーの手伝いをすることになった。


 クソッ‼クソッ‼クソッ‼やっぱり異世界転移なんてやるんじゃなかったぜ‼(続く)





  PHASE 10 RAMPAGE!



 「さあ、見せてもらおうか。かつて人類を滅亡の崖っぷちにまで追い込んだ”機鋼軍神(メルカバ―)”の実力を」


 ふじわらしのぶは眼前のリ・エスペランザに照準を合わせて引き金に指をかける。

 対魚鱗装甲スケイルを想定した電磁パルスでコーティングされた特殊弾がリ・エスペランザに襲いかかる。


 「ふう」


 アドラーは嘆息しながら銃口がブレぬように微細な調整を行っていた。

 威嚇射撃からの白兵戦はふじわらしのぶの得意とする戦術であり、彼はこれまでのホライゾン、汎人類同盟との戦いにおいて多くの首級を上げている。この一見して原始的な戦法が友軍の勝利に貢献してきた理由は武器の特性にあった。


 「イキってんじゃねえぞ、雑魚助‼」


 アンナは前方に右手をかざして魚鱗装甲を展開する。特殊弾は瞬時に展開された人型戦車の装甲に匹敵する硬度を持つ魚鱗装甲を瞬時に破壊した。

 だが貫通には至らず、勢いを失った弾殻はガラスの破片のように散ってしまった魚鱗装甲と共に地面に散ってしまう。


 「顔面ぶち割ってやる‼」


 アンナは怒号を発しながらリ・エスペランザの左腕でフックを放った。

 トゲのついたナックルガードにはご丁寧に人型戦車の装甲を分解する液体が塗られていた。


 「蝶のように舞い…」


 ふじわらしのぶは至近距離で背中のバーニアに点火して、回避運動を試みた。結果としてバードマンの足に多大な負荷がかかってしまうが背に腹は代えられない。当たれば即死の一撃を紙一重で躱す。


 「テメーは蠅か‼」


 アンナはさらに横蹴りを放ち、バードマンに体勢を立て直す機会を与えない。しかし今度はバードマンは翼をはためかせ、ウィンドサーフィンの要領で一旦距離を置いてから反撃に転じる。


 「ありゃあ人型戦車クワドリガの動きじゃねえよ…」


 百戦錬磨の雄ロジャーが呟く。


 だがリ・エスペランザも負けてはいない。

 

 互いの情報結晶を介してアンナの意思を読み取った蔵人がバードマンと同様に翼を展開し、カウンターを仕掛ける。


 「蜂のように、――刺す」


 バードマンは背部ギアボックスから脇から生えた複碗サブアームで長剣を取り出し、抜刀術よろしく引き抜いた。

 対してリ・エスペランザは手斧(※ゴライアスの持っていた武器を拝借した)で対抗する。さながら天を舞う猛禽類同士の熾烈な空中戦に誰もが目と心を奪われた。

 リ・エスペランザとバードマンは数回、刃を交える。


 ガギンッ‼


 そして勝ったのはバードマンの長剣だった。憐れルシタニアの兵士との戦いで得た手斧は呆気なく根元から折られてしまう。


 「このナマクラ、役に立たねえって‼」


 アンナは手斧の残骸を地面に捨てる。代わりにギアボックスからバックラーを出した。


 「悪くない判断だ。ただ残念なのは物事の根本的な解決には至らないという事か」


 ふじわらしのぶは凄みのある笑みを浮かべながら今の戦闘でのダメージチェックを行う。

 たった数合打ち合っただけでバードマンの右の手の駆動中枢には多大な負荷がかかっていた。想定内の事態と言えどもこれは笑うしかない。


 「グレートチタニウム製の武器にはまだまだ研究の余地がありますな、中尉」


 アドラーは足腰のダメージを計測しながらさらに深いため息をつく。

 ふじわらしのぶがアクション俳優宜しくアクロバティックな動きをする度にバードマンのメインフレームは壊滅的な負荷がかかっていたのだ。

 基地に帰った時に技術者たちが今回の戦闘データを知ったらさぞ文句を言ってくるだろう。


 「中尉、アクロバット的な動きは後一回で限界です。さっさと勝負を決めてください」


 アドラーはダメージ推移のデータをふじわらしのぶの方に送り込む。

 脚部(特に大腿部)と腰部の骨格は等に限界を迎えており、かろうじて背骨を使って立っているという有様だった。さらに各関節を動かしているモーターもまた焼き切れる寸前で次に空中に回避しようものなら途中で制御機構を失って落下する可能性が極大である。


 「まあ勝率云々はともかく、敵の性能も十分に把握した。そろそろ終局フィナーレと洒落込もうか」


 ふじわらしのぶはバードマンの操縦桿を握り直し、長剣を両手持ちにする。

 次の打ちこみでリ・エスペランザの胴を真っ二つにする予定だった。


 「この期に及んで抜き打ちかよ…。舐めやがって…」


 アンナは足元のペダルを踏みこんでエンジンを吹かす。現実問題として双方の二の太刀はあり得ない。リ・エスペランザ、はエネルギー不足、バードマンはフレームの強度が限界だったのだ。

 リリは額から汗を流しながら、エネルギーを少しでも捻出しようと四苦八苦している。

 いつもは頼りない蔵人もまた度重なるオーバーブーストでかなり神経をすり減らしている。アンナ、リリと違って蔵人は文字通りに命を削りながらリ・エスペランザを動かしているのだ。


 (足りないのはよりによってアタシの覚悟かよ…)


 アンナはふと手の甲に埋め込まれた情報結晶を見た。

 蔵人と違って十分な期間を置いてQDとの本格的な”接続”をした事が無いアンナがリ・エスペランザと繋がる事は分の悪すぎる賭けとなる。

 場合によっては神経をリ・エスペランザに持っていかれて廃人になる可能性もあった。

 

 兄蔵人は故郷を離れてからそれを一人で乗り越えてきた。

 両親は己の命も顧みずに子供たちとマツダを生かす為だけにシラクサから脱出させた。


 「はは…っ。兄貴を悪く言えないじゃん。日和ってるのはどっちだよ」


 アンナは自嘲めいた笑みを浮かべ、右手の甲に意識を集中させる。


 「接続(コネクト)完了。今より岡嶋アンナを本機のマスターと認めます」


 マツダとは違う無機質な機械音声がコックピット内に響く。

 隣の蔵人はギョッとした表情で妹を見ていた。


 「おい、アンナ‼何を勝手な事をやってんだよっ‼」


 情報結晶は宿主からの意思を受けて七色に輝き出した。


 「マッちゃん、前に言っていたの第二形態にしてみて」


 「お嬢、いいんですか?あの姿をダマスカスの連中に見られたら…」


 バンッ‼


 マツダの忠告を聞き入れる前にアンナ自分の頬を負い切り叩く。

 この時、己の運命を受け入れる覚悟は決まっていたのだ。


 「例え世界を敵に回しても、アタシ一人になっても、真実に辿り着いてみせるッ‼立ち塞がる敵は誰であろうと倒してのけるッ‼それがアタシの覚悟だッ‼」


 アンナは操縦桿を握り締め、攻撃の意思をリ・エスペランザに送り込んだ。


 「流石はお嬢っ‼惚れ直しましたっ‼アッシも五百年ぶりくらいに本気出してやりまさぁッ‼」


 マツダの意思を受けてアイコンの丸顔の瞳にも激しく燃える炎が灯っていた。


 (た、体育会系の”AI”!?)


 場の雰囲気に流されながらも、リリは心の中で冷静なツッコミを入れていた。


 「よし、俺も今から本気出すっ‼情報結晶から第二形態への変形を承認ッ‼」


 「行くぜ、ブタ野郎っ‼これがリ・エスペランザの…フェニックスフォームだあっ‼」


 アンナの掛け声と共にギアボックスから大量の灰塵ジンが噴出する。

 白い噴煙は一瞬でリ・エスペランザの全身を覆い尽くすとそのまま灰塵ジンを固着させて機体のシルエットを大きく変化させた。

 機体の全身は灰色を基調ベースとしたものから炎を纏ったような橙色に変わる。

 全身も一回りほど大きくなっており、全体的な装いも機械人形というよりも生物のそれに近い物になっていた。

 頭から生えている五つのアンテナもまた角のように鋭さを増しており、その風貌は古代の魔神を思わせる。


 「さっさと抜きなっ‼秒でおわらせてやっからよ‼」


 アンナはギアボックスから長剣を抜いた。切っ先をバードマンに向けて中段の姿勢で構える。


 「中尉、あれは…っ‼」


 想定外の事態にアドラーは恐怖を覚えた。

 たった今、彼の目の前でQDが姿を変えてしまったのである。まるで変態を終えた蝶のように、リ・エスペランザは明らかに既存の人型戦車とは異なる存在だと今さらながらおも知らされる。


 「戦場に絶対はない、アドラー。安心したまえ。どんな敵だろうと生きている物であれば絶対に殺してみせるさ」


 ふじわらしのぶは二枚の翼をはためかせ、エンジンに点火した。

 その直後ブースターがバードマンの機体をリ・エスペランザ目がけて発射させる。


 バガンッ‼


 羽に損傷は無かったが、飛行の過程で燃料タンクの一つが弾け飛んだ。


 「これで死んだら呪ってやる…」


 アドラーは決死の覚悟で対G用のハンドルを握る。加速の重圧に耐える為に刃を食いしばり、刮目した。


 「機鋼軍神(メルカバ―)よ。その神威を私に見せてみろッ‼」


 砲弾のような速度でバードマンはリ・エスペランザの目の前に一瞬で到達した。


 バキンッ‼


 バードマンのブースター近くにあったバランス調整用の羽が速度に耐えきれなくて圧壊する。


 「秘剣、燕返しッッ‼‼」


 ふじわらしのぶはリ・エスペランザまずリ・エスペランザの頭頂部を狙って長剣を振り下ろす。

 アドラーは胡散臭い技の名前に辟易しながらも次の動作に備えて全身のスラスターの制御に集中した。


 「ハッ‼小次郎敗れたりってか‼」


 アンナは全身に纏った赤い灰塵ジンを巻き上げながら自ら刃の前に出る。


 「カウンターフレア、発動」


 リ・エスペランザは刃を受ける直前で希代の前面にこびりついた余剰の灰塵ジン爆散させる。

 バードマンは燃える灰塵に包まれて多大な損害を被った。


 「これが機鋼軍神(メルカバ―)の戦い…ッ‼」


 アドラーは全身から汗を噴き出しながら各部損傷をチェックする。今の爆撃で外装はほぼ剥がされて文字通り裸の状態だった。


 「想定内だよ、お嬢さん」


 ふじわらしのぶは地に膝をつき、リ・エスペランザを見上げる形で納刀の構えを作る。

 ”燕”はまだ死んではいない。飛翔するのはこれからなのだ。


 「流石はグレートチタン製の剣。今のでノーダメージなんて…」


 リリはただ静かに驚嘆する。

 

 グレートチタン、別名アトラス神鉄と呼ばれる惑星アトラス原産の鉱石で作られた合金で純鉄に近い分子構造を保つ。如何にしてそのような悠久不変の鉱物を加工したかは未だに謎となっている。


 「安心するんじゃねえよ、三下。今のはイントロだ。これがエペの必殺技…」


 アンナは操縦桿を握り締め、リ・エスペランザに長剣を握らせる。光の剣はアンナの意思に呼応するかのように輝き出した。


 「そっちが破壊不能の剣なら、こっちは何でもぶった斬る魔剣だ。死んで詫びろや!」


 アンナは剣を頭上に構え、一気に降下する。


 その姿は正しく流星。否、剣だけではなく全身が光に包まれていた。


 だがリ・エスペランザの神々しい姿をさらに上空の禍々しい単眼(モノアイ)が見守っている。


 「()()()()()()…六熾天のみが振るう事を許された神技。やはりそこにいるのか、我らディアノイドのの裏切り者アフラマヅダッ‼」


 憎悪の籠った声が大気を揺るがす。そして火を纏う闇は、その身を削りながらリ・エスペランザとバードマンのもとに降下し始めた。


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