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ミッドフィルダー タクマ ~強豪校のエースが田舎の学校でサッカー始めました~  作者: 或 真土
おっさんに転生したおっさん異世界に転移して、自分の人生が無駄なものだと悟り全世界を道連れに消滅する
12/25

第二話 おっさんに転生したおっさんは異世界に転移して、やはりおっさんとして天寿を全うする。

 ~ 前回までのあらすじ ~


 なろうの人気作にあやかって人気者になろうとした”ふじわらしのぶ”は誤って自分の心臓をぶち抜き、冥界の神ハデスとの取引で転生する事になった。彼は前世同様に無為の日々を送り、齢五十を迎える…。


 「よっしゃ、異世界転移だ。頼んだぜ、サガ‼」


 ふじわらしのぶは秘宝「バルキリーの杖」で黄金聖闘士サガを復活させて異世界転移する算段だった。復活したばかりのサガはメチャ機嫌が悪そうな顔をしている。


 「しのぶよ、これが本当にアテナの為になる行為なんだな?」


  「安心しろ、俺は生まれてこの方嘘をついた事が無いのが取柄なんだ(という嘘)。さっさとアナザーディメンジョン、一発頼むぜ」


  「むう…」


 サガはしぶしぶながらも、しのぶとの約束である「異世界に転生したアテナに一番忠義深い聖闘士は双子座のサガだったと教える」約束を信じてアナザーディメンジョンを使った。


 「アナザーディメンジョン‼」


 目の前で手を交叉させることによって小宇宙同士を爆発させて異次元の扉が今開かれる‼


 「クックック…策士ぶっているアホほど信頼や約束という言葉に耳を傾ける。本当の友達なんてのはどこにも存在しないんだよ‼ハーッハッハッハ‼」


 しのぶは桐生冬芽の名セリフを吐きながら異世界に転移した。尚サガは金牛宮で体育座りをしながらしのぶからのLINEを待っていたが、そこをアルデバランに見つかりがちの説教を食らったらしい。


 「来たぜ、異世界…」


 しのぶは次元の裂け目を通って異世界に到着した。


 「中世ヨーロッパ風の世界か。つまんねえな…」


 しのぶは地面にペッとツバを吐く。彼が望んだのは北斗の拳というかマッドマックス2みたいな荒廃した世界であり、ドラクエのような世界観では無かったのだ。


 「どっかの村のじじいの種もみをよう、奪ってよう、殺すつもりだったのに…。これじゃあ拍子抜けってモンだぜ…。仕方ねえ、村でも焼いてテンションアゲアゲにするか」


 しのぶはテンションを上げる為、森を出ることにした。果たして異世界で彼を待つ者とは!?(続く)




 良かったじゃねえか。おめでとう。苦労が報われたな。もうここに用はないはずだ。お前はお前の道を行くがいい。俺はお前の明るい前途を祈っている。これから辛い事もたくさんあるだろうが、きっと楽しい事もある。未来を信じろ。苦しいのは今だけ、明日になれば全部忘れているはずだ。多少の不都合なんてお前は気にするな。そういうのは全部俺が引き受けてやる。だから俺に関わるな。俺はタダの屑だ。俺に関わっても良い事なんて何一つ無い。そう何も無いんだ。お前はこう…リゼロとか薬屋の独り言とかアニメ化している素晴らしい作品を読んでメッチャ素晴らしい小説家になってくれ。


 俺のようなクズに関わっているとお前にはマイナスでしかない。ユーアーチャンピオン!お前がい一番だ。もう誰もがそれを認めている。わかっているんだ。だからブラバして、俺の事をミュート&ブロックしていい。運営にふじわらしのぶという不燃物ゴミみたいな男が小説家になろうの品位を落としているみたいな密告をしてもいい。さあ、もう嫌な事は忘れて寝るといい。


 …よしよし。野良犬にでも噛まれたと思ってゆっくりお休み、ベイビー。




 さてここからは本当につまらないおまけ小説「斬光のエスペランザ」が始まる。今回も一行くらいで終わるから、期待しないでくれよ?



 PHASE 07 DUEL STAND BY


 場面は岡嶋兄妹の住む仮設小屋に戻る。三人は食事を終え、寛いでいる最中だった。


 「とりあえず一休みしたらリリちゃんをジェノバまで送ろう。その先はどこかのキャラバンと遭遇するまで野宿って事で」


 簡単な食事を終え、洗い場で食器を洗う蔵人はリリを無事故郷まで送り届ける事を提案する。

 正直な話、もうしばらくこの廃工場に止まっていたかったのだがルシタニアやダマスカスに目をつけられてしまったのでは事情が違ってくる。

 彼らの、リ・エスペランザの抱える秘密とは一歩間違えれば国家間のパワーバランスに影響するものだったのだ。少なくとも蔵人は亡き両親と無二の相棒からそれを聞かされている。


 (俺一人ならこのまま死ぬまで逃げ続けてもいい。だけどアンナには普通の生活をさせてやりたい…。だけど…)


 ふと食器洗剤の泡にまみれた右手に目をやり、ため息をついた。


 「いいんですか?」


 「ああ。この辺の水資源もいつ切れるかわからないからね。少し前から移動を考えてはいたんだ」


 蔵人は落胆した様子を隠すように、陽気に語る。


 「ええーっ‼もう出て行くの⁉野宿は嫌だよー」


 アンナはツーサイドアップに結われた髪を振り乱し、駄々をこねる。

 見た目通りこの髪型は砂漠を通過すると嫌でもホコリまみれになってしまうのだ。


 「だから切れって言っただろ?」


 「あーっ⁉今のセクハラ発言ッ‼女の子に髪の毛を切れとかどういう意味!?カルシウム足りてないんじゃないッ⁉」


 蔵人はそのまま小一時間くらいアンナの罵倒を受けた。踏んだり蹴ったりとはこの事だろう。

 一方、リリは”触らぬ神に祟りなし”と言わんばかりに部屋の中央に置かれたコンテナに食器を入れている。


 「アンナさあ、その辺にしておさいって」


 リリが止めに入った時には蔵人の顔には頬は腫れ上がり、引っ掻き傷が多数出来ていた。


 「ハッ‼今日はこのくらいにしておいてやるッ‼」

 

 アンナはそう言って手足を引っ込めて甲羅の中に入ってしまった亀のようになっている蔵人から離れた。


 「イテテ…。出来ればもう少し早く助けてほしかった」


 妹の猛攻に晒され続けた蔵人はうらめしそうにリリを見る。

 ついさっきまではさっぱりとした好青年だったのが、今では喧嘩をして負けた猫のような顔になっていた。


 「ええと…兄弟にしかわからない確執でもあるのかなって…」


 リリは目を泳がせながら言う。


 「あっそ。ウチの妹ってライオン並みに凶暴だから。今後は出来るだけ仲裁してくれよ」


 蔵人は渋い表情でコンテナから薬箱を取り出す。そして冷却スプレーなどを殴られた箇所にあて、ひっかき傷には消毒液を塗っている。

 この手際の良さからしてアンナの暴走は日常茶飯事なのだろう。

 その後、蔵人たちは工場内に放置されたハウンドカスタムを回収して自前の輸送車両に乗せる。

 アンナと蔵人は仮設小屋と日用品を輸送車に乗せて、リリは運搬車両とQDの機器の点検を行う。これらは不測の事態に見舞われた場合の備えだった。

 現在地から舗装された道路があるジェノバの人工農園までは砂漠が続き、何らかのトラブルが原因で一泊することになれば猛暑と極寒を同時に体験することになる。


 「リリっちのおっぱい枕は魅力的だけどねえ…」


 アンナは大型の輸送用トラックの中で計器と睨めっこしているリリを見ながら呟く。


 「やめろよ、そういう事を言うのは。俺だって意識しないようにしてるんだから」


 蔵人は雑念を払おうと頭をぶんぶん振っている。

 指摘されればリリの豊満なバストを意識してしまうのは男の悲しいサガなのだろう。


 「あ、今すっごい揺れた。ぶるん、ぶるんって」


 「ええっ⁉」


 蔵人は脊髄反射でリリの姿を見上げる。しかし今のリリは厚手のジャケットを羽織っていたので揺れるどころか肢体の線さえ確認する事が出来ない。兄のムッツリスケベ心を炙り出す為の、光明に仕掛けられた罠だった。


 「ハイ、ニセ紳士発見。バツとしてプリン一個没収ねー」


 アンナはニンマリと笑いながら衣類の収まったリュックをコンテナに詰めていた。その手にはしっかりと「蔵人」とサインペンで書かれたプリンが握られている。


 「覚えてろよ、愚妹…」


 蔵人は心底悔しそうな顔をしながら、運び損ねた荷物が無いかを確かめていた。

 仮説小屋自体はスイッチ一つで小さく折り畳む事が出来るのだが、その際には中の物も圧縮されてしまうので注意が必要だった。


 「見落とし無し、こっちは準備完了ー」


 蔵人は小屋の内部が空になった事を確認すると、外に出る。

 アンナとリリが小屋の外に出ている事を確認するとポケットの中からリモコンを取り出して、ボタンを押す。その直後、およそ6LDKくらいの大きさの小屋が掌に乗る大きさのカードになってしまった。



 「およよ…。またシャワー浴に逆戻り…。たまにはたっぷりのお湯につかってお風呂入りたいよー」


 「我慢しろよ。公衆浴場付きのキャラバンに合うまでは当分シャワーだ。大体生活用水だって足りてないのに」


 二人はぶつくさと文句を言いながらトラックに乗り込む。その後でハウンドカスタムの最終チェックを行っていたリリが乗り込んできた。

 運転席は右から蔵人、アンナ、リリという順番で座っている。


 「狭くてごめんね、リリちゃん」


 「いえいえ。飛び込みの居候ですので」


 蔵人はハンドルを握り、アクセルを踏む。

 化石燃料で旧式のエンジンが音を立てて動き出し、二体のQDを乗せた輸送車がゆっくりと動き出した。


 「はあ…。もう少しでリリちゃんの巨乳ともお別れか」


 アンナは隣に座るリリの胸を見ながら愚痴を溢す。リリの胸は車体が障害物に乗り上げる度に揺れていた。

 

 「心頭滅却すれば火もまた涼し。心頭滅却すれば火もまた涼し…」

 

 蔵人は心を無にして運転に集中している。


 「…ところで二人はこれからどうするつもりなの?」


 「これといってアテもないし…。雑用をこなしながら放浪かなー。ねえ、兄貴?」


 蔵人はアンナの話を聞いて落胆する。アンナのと蔵人が定住する為にはリ・エスペランザを誰の目にも触れぬ場所に安置する必要があった。まだ両親の遺言でもあった。

 両親の言う「来たるべき日」や「リ・エスペランザが作られた真の目的」を知る術が無い以上、岡嶋兄妹は真実に至る手がかりを求めて都市間を放浪するしかない。


 「うん。リリちゃんもエスペランザの動いているところ見てるからわかると思うけど…コイツの存在が汎人類同盟かホライゾンにバレれば必ず大きな戦争が起きると俺は思っている。だから今は逃げるしかないんだ…」


 蔵人は大きく息を吐いた。

 蔵人たちがシラクサを脱出した後、すぐに汎人類同盟とホライゾンの紛争に巻き込まれてシラクサは地図上から消滅している。この話も放浪中に、シラクサから逃げ出してきた流民から聞いた情報だ。

 断言するわけでは無いが、蔵人はシラクサが秘匿していたエスペランザの情報が原因だと考えている  

 自分たちに科せられた重責から逃れたい気持ちはあったが、己らの命を顧みずに蔵人とアンナを送り出した両親の事を思い出してしまう。


 (駄目だ、俺。これは誰かに背負わされた運命じゃない。俺がそうすると決めた選択なんだ…)


 蔵人は自分の頬を叩いて気合を入れ直す。

 いつも享楽的なアンナの顔も両親の事を思い出したせいか真剣な表情に変わっていた。


 「ふうん…」


 りりは疎外感を覚えながらも相槌を打つ。三人はしばらくの間、無言のまま時を過ごした。


 「⁉」


 それから数時間後、コーカサスとジェノバの中間地点で輸送車はピタリと止まる。

 彼らの目の前に立ち塞がったのは、五体の地上型人型戦車。そして二枚の翼で空を飛ぶ、飛行型と呼ばれる珍しいタイプの人型戦車だった。

 飛行型人型戦車バードマンのコックピットの中で肥満体の中年男がニヤリと笑う。


 「アドラー、私の読みはどうだ?言った通りに正面から待っていれば向こうからやってきただろう?」


 男はモニターに映る大型輸送車を眺めながら、いくつかのスイッチを押している。

 バードマンの飛行原理はロケットエンジンと特殊合金製の翼、そして周囲の灰塵ジンが作り出す五台規模のイオノクラフト効果に依存しているのでQDの操作とエンジン出力調整を同時に行わなければならない。

 ゆえに監査官であるアドラーが同乗していたのだが、ふじわらしのぶはこれらの複雑な操作をたった一人でこなしていた。


 「なるほど、このような砂漠地帯の真ん中では方向転換するのも難儀というわけですか」


 助手席のアドラーは呆れながらも、蔵人たちの乗る輸送車両を興味深そうに見ている。


 「中尉殿、包囲しますか?」


 後方に控えるオブライエンから通信が入る。


 ふじわらしのぶは首を横に振り、淡々と答えた。


 「その必要は無い。まずは交渉からだ」


 臨戦態勢を整えながら、自由回線を開く。一方蔵人たちは手に汗握りながら、応答した。


 「どちらさまですか。俺たちはタダの輸送業者ですよ?」


 先に蔵人が声を発した。


 「私はダマスカス義勇軍のふじわらしのぶ中尉だ。先ほどは部下の手違いで失礼した。詫びをしようと思って部下を伴い、参上したわけだが」


 リリが間近のスピーカーに向って耳を傾ける。先刻、彼女が聞いたふじわらしのぶとは別人の声だった。


 「蔵人。この人、さっき私に名乗ったのと別のヤツ‼」


 「ええっ⁉それってマジ!?」


 回線が開いたまだったので、蔵人とりりの声はダマスカス陣営に筒抜けだった。


 「おい、チャーリー…」


 無傷のオルトロスに搭乗するオットーがジト目でチャーリーの乗るオルトロスを睨んだ。


 ――パチン。

 チャーリーは即座に通信回線を遮断して沈黙を守る。その後、ジークフリード、マリア、オットーらの避難めいた視線が機体越しに彼を圧迫した。


 「色々手違いがあったようだが些細な事だ。友好の印に一対一で話合おうじゃないか」


 バードマン羽背部ギアボックスに収納された浮遊装置のスイッチを下ろし、地面に降りる。

 機体を覆う程の大きさの翼を折り畳み、陸戦形態で蔵人度たちの出方を待った。


 「あれはバードマン…。珍しいQDにに乗っているわね…」


 「羽ついてるだけの人型戦車クワドリガでしょ?」


 リリは目の前の機体を指さす。


 「パイロットの技量にもよるけど、現存するQDの中でもトップレベルの速度を出せるわ」


 リリの発言の途中、オルトロスがトラックに向けて発砲した。

 オフロードタイヤの手前にハチの巣が出来上がる。


 「流石は軍曹。骨子ツボを抑えているな」


 「お褒めに預かり恐悦至極です、中尉殿」


 バードマンは腰の鞘から、剣を抜く。


 ふじわらしのぶがダマスカスのQD工房に作らせたグレートチタニウム製の長剣である。圧倒的な重量と硬度で敵の装甲を魚鱗装甲ごと両断する、石器時代の武器だった。


 「さて紳士の話合いといえば古き良き中世暗黒時代から決闘と相場が決まっている。この対決を受けてくれるなら、我が軍への敵対行為を不問としよう…」


 ふじわらしのぶは両手を広げて、リ・エスペランザの登場を待った。

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