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ミッドフィルダー タクマ ~強豪校のエースが田舎の学校でサッカー始めました~  作者: 或 真土
おっさんに転生したおっさん異世界に転移して、自分の人生が無駄なものだと悟り全世界を道連れに消滅する
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第一話 おっさんブームに便乗したタダのおっさん、異世界に行ってモンスターに食われて死ぬ。

  「なるほど。最近はおっさんが流行しているのか…つまり俺の時代が来たという事か」


 私の名前はふじわらしのぶ、もはや生きていることが人類にとってマイナス要素でしかない、全てのステータスが平均以下の存在だ。今こうして生きているのは悪夢か何かなのだろう。


 「よし。流行に従うのは私の流儀ではないが、私も何かこう人に良い感じの評価を受けたい」


 ズブリ。

 私は日々五指、及び拳の部位鍛錬を欠かさなかったので容易に自分の心臓を貫く事が出来た。

 流石は私だ。もう仮に私が女性だったら今の私を抱き締めてやりたいくらいだな、うん。


 これで準備は出来た。次は異世界転生か…。


 私はとりあえず地獄の神ハデスを呼んで取引を持ち掛けた。


 「おい、ハデス。とりあえず異世界転生を頼む。出来るだけ難易度が低い場所だ。俺は面倒事が嫌いなんだ」


 いきなり松屋に召喚されたハデスは不本意そうな顔で俺を見ていた。といってもヤツは他所行き用に黄金の兜を身に着けている為に表情はよくわからない。


 「しのぶさー。呼んでくれたのは嬉しいけど、おっさん設定を生かすなら転生じゃなくて、転移の方じゃない?」


 ハデスは手慣れた様子で券売機でカレーライスを頼んでいる。流石はゼウスの親戚、なかなかわかっているじゃないか。牛丼屋のカレーは美味いからな。


 「待て待て。俺はもう自分の心臓まで取り出しちまったんだぞ?どうしてくれるんだよ」


 俺は左手に持った心臓を見せつけた。ボックス席の方から悲鳴が聞こえたが気にする必要は無い。俺たちが見ていない場所で誰かが死ぬなんてのはよくある話だ。

 所詮、人間なんてのは自分の事で精一杯なんだ。


 「じゃあさ、その心臓を俺に生贄に捧げてくれよ。それでしのぶを転生させてからおっさんになるまで待つんだ。んで時期が来たら俺が転移させるって寸法で」


 「むう。とんだ二度手間だったな。じゃあそれで頼む」


 「おっけ」


 こうして俺は牛丼屋の中で謎の失血死を遂げ、ハデスは俺の心臓を持って冥界に帰って行った。噂によると牛丼屋は自殺者を出したという事で保健所が押し掛けてきたようだが、潰れてはいないらしい。

 全く日本の治安はどうなっているやら。先が思いやられる。


 (次回に続く)

 

 はいはい。ここから先は何も無いからもう帰ってよ…。もうわかってるんだ。俺は小説家に、水野良にはなれないって事はわかってるんだ。もう自分には完全に見切りをつけているんだ。ここから先は何も無い。お前の求める物は絶対にない。ないったらない。俺は嘘をつかない、紳士だから。だから落ち着いて聞いてくれ、この先には多分絶望しかない。こんなクソの掃き溜めにいるくらいならリゼロとか読んで欲しい、絶対にその方がお前の為だから。エミリア似の彼女が出来るかもしれないぞ?な?な?



 お前がすごいのはよくわかった。俺が全然ダメなのも知っている。だからこの先には何もないって事だけはわかってくれ。お前には未来がある。輝かしい未来が、待っているんだ。ここから先には後悔しかない。きっとトイレットペーパーほどの価値も無いものだろう。俺はお前の事を心配しているんだ。お前は頑張って神坂一先生のような小説家になってくれ。俺は陰ながらそれを応援する。頑張れ。頑張れ。お前は日本の誇りだ。第二の大谷翔平だ。



 よし帰ったか。


 それではおまけ小説「斬光のエスペランザ」を始める…。対した話じゃない。一行くらいで終わるから。


 PHASE 06 STRANGERS


 リリ&アンナとの戦闘から数十分後、陸上競技の三人四脚の姿勢で砂上に寝転がったオルトロス三機とジークフリードを筆頭とする別動隊は遭遇した。

 ロジャーはコックピットを降りて携帯テントの中でふて寝をしている。彼はチャーリーの”小遣い稼ぎ”には最初から消極的だったのだ。

 一方、先の大敗に引け目を感じたチャーリーはオルトロスのギアボックスを開けてなれないメンテナンスをしている。


 ゴドンッ‼


 乾ききった砂を踏みしめて、巨大な人馬が姿を現す。続いて腰を落とし、ホバーモードとなった二体のオルトロスが到着した。


 「フン…他者を顧みないスタンドプレーは健在か。害悪め」


 ジークフリードは嫌悪感がこもったセリフを吐き、砂漠の上を右往左往すチャーリーを睥睨する。

 彼らの因縁は幼年学校の時から始まり、出会うと何かとトラブルの絶えない二人だ。


 「ご苦労様です、少尉殿」


 そこに緊急用の白旗を持ったオブライエンが割り込んでくる。オブライエン、ジークフリードも所謂顔なじみだった。


 「オブライエン、状況の説明を頼む」


 例え相手が軍内部に置いての大先輩であっても慇懃な態度は変わらない。むしろ実戦の雄として知られるオブライエンで無ければ、ジークフリードに大声で怒鳴られていた事だろう。彼はなかなか気難しい性格なのだ。


 「映像が特殊な妨害にあって機能しないので、口頭でもよろしいでしょうか?」


 「構わない。むしろそちらの方が助かる」


 そう言われる前にロジャーから送られてきた砂嵐の画像を確認していた為に、ジークフリードは沈痛の面持ちで答えた。否、トラブルメーカーのチャーリーと直接会話するよりはかなり建設的な対応だったとも思える。


 「ルシタニアの脱走兵を掃討する為にコーカサスの工場に侵入したところ、所属不明のQDと遭遇し、命からがら逃げてきた次第です。本作戦の責任は、私が…」


 オブライエンは慇懃な態度を崩さぬままジークフリードに向かい合う。

 彼の自分に対する敬意とチャーリーとの確執を十分に理解した上の行動だった。むしろ問題はもう一人の上司にあったのだが、この場にいないので応じる術が無い。


 「いや、そこは私が引き受けよう。結果として監察官殿の機嫌を損ねる事になるだろうが中尉殿のもきっと口裏を合わせてくれるはずだ。何よりオブライエン、君の損失はダマスカスにとって国家的に匹敵するだろうからな」


 ジークフリードはやはり顔なじみのふじわらしのぶ付きの監査官を思い出して、イヤな顔をする。それを察したオブライエンはガラでも無く苦笑するばかりだ。

 

 「過分の配慮、ありがとうございます」


  「そんな事よりオブライエン。一体どんな強敵と戦ったの?あの馬鹿、頭の出来は最低だけど腕っぷしだけは一流だったでしょう」


 マリアは怪訝そうな顔でオブライエンに問いかける。実際に士官学校出身のマリアとオットーはチャーリーを相手に勝ち越した事が無い。さらに同世代ならば相性最悪のジークフリードを除けば無敗の記録を誇っている。

 おっとーもまた沈黙を守っているが態度から察するに同様の意見らしい。


 (さてアレについてどう返答したものか…)


 わずかな逡巡の後、オブライアンは返答した。

 チャーリー同様に正規の軍人教育を受けたものは一時の勝敗にやたらとこだわる傾向が強い。扱いを一歩間違えれば、マリアが怒り心頭になる事もあり得る。


 「コホン」


 咳払いをして喉の調子を整えてから口を開ける。


 「――敵の操縦技術もさることながら、機体の性能がこちらを遥かに凌駕していました」


 「QDの性能差?ますますあり得ないわ。だてウチの新鋭機だって、ホライゾンのスレイプニルだって、どんぐりの背比べでしょ?」


 マリアは先頭を行くジークフリードのケイロンを見ながら言う。

 ダマスカスの最新鋭の機体が一介の士官に過ぎないジークフリードのもとに優先的に送り届けられた原因は、彼が同都市の一級執政官の子弟である事と無関係ではないはずだ(※本人は全力で否定するだろうが)。


 「嫉妬は見苦しいぞ、マリア。だが私も気になってきたな。かつての軍のエースである君と、ロジャーがあの野良犬と組んで戦えば多少の性能差など容易にひっくり返せるのではないかね?」


 かつてのオブライエンは個人の戦闘能力、指揮能力において義勇軍の中でも常に主席の座にあった。

 最近目立った活躍の噂を聞かなくなったのは、本人の控えめな性格と例の軍需産業から派遣されてきた男の綺羅星の如き活躍によるものである。


 「お褒めの言葉に預かり恐縮ですが、私も空を飛ぶタイプのQDとの戦闘経験は浅くて」


 「飛行タイプ?」


 オットーの発言にオブライエンは即答する。


 「はい。中尉殿のバードマンよりも遥かに高い滞空性能を有するQDでいた」


 「何つーか、まるで鳥みたいに飛ぶんですよ、そいつ。でぶの中尉殿でもせいぜいハングライダーでしょ」


 客員軍人であるふじわらしのぶはバードマンの本来の性能と飛行能力を、その巧みな操作技術で十全以上の以上の実力を発揮している。

 彼は本人の鈍重な外観とは真逆の”スピットファイア”という異名で呼ばれていた。


 「中尉殿に匹敵する強敵とは聞き捨てならん。だが君とオブライエン卿の二人を撃退したと為れば話も変わってくる」


 このジークフリードもまた軍内部で続々と増えつつある中尉の信奉者の一人でオブライエンたちが遭遇した所属不明機に対して見当違いな敵愾心を抱いていた。ジークフリードの偏執的な平常運転を目の当たりにした隊員たちは「またか…」と落胆していた。


 そこにギアボックスの点検を終えたチャーリーが姿を現した。

 地道な手作業や泥臭さを嫌う彼の信条に反して、全身から機械油に臭いを発している。


 「ご高説はもっともだが、嘴の黄色いひよっこ君。愛しの中尉殿がご帰還のようだぜ?」


 そう言ってチャーリーは頭上を指さす。


 三つの太陽が照らす蒼穹には背中から二枚の翼を生やした赤い人型戦車の姿があった。


 一説によるとふじわらしのぶが機体を真紅に塗るのは、旧世紀の世界大戦で活躍したパイロットへのオマージュでは無く故意敵に見つかり易くしてより多くの敵と戦う事が目的だと言われていた。

 彼の軍人としての仕事は主により効率よく人型戦車を動かす事なのだから、ある意味それらの考察は的外れとは言い難い。


 翼を大きく動かして高度を調節しながら、ゆっくりと人型戦車バードマンは着地した。

 機体の浮遊を補助している灰塵ジンの白色粒子を纏わせながら翼を折り畳む様は白鳥を思わせる。

 最後に背部ギアボックスを起動させて十分な放熱冷却を終えた後に、人型戦車は片膝をついた。

 コックピットのハッチが開閉し軍人カイゼル鬚を生やした細身の男が降りてくる。


 「チッ」


 機体を降りてきたのが待望の人物では無い事を知って、ジークフリードは舌打ちをする。


 「やれやれ大した歓迎だな、ジークフリート・オースティン。一応言っておくが私の階級と年齢は君より上だ。まさか人間としての最低限の礼節も忘れてしまったのではないだろうな?」


 男は皮肉っぽい笑顔を浮かべながら襟のボタンを一つ外した。そしてこれ見よがしに他の隊員たちに笑いかける。


 「これはどうもアドラー大尉。いえ元大尉でしたか」


 「監査官補佐だ、小僧。相変わらず礼儀を知らないな、偉大な大叔父上の面汚しめ」


 アドラーと呼ばれた男は猛禽類のような目でジークフリードを睨みつける。この二人は士官学校時代から片や教官、生徒として常に対立していた。

 一方、アドラーの元同僚であるオブライエンは肝を冷やしながら二人のあからさまな対立を見守っている。この中で一番肝っ玉の小さいロジャーなどは両者の語調が荒ぶる度に気を失いそうになっていた。


 「それは失礼いたしました、監査官殿。ところで中尉はどうされましたか?」


 「今機内で最終点検をされているところだ。英傑の心得とは、一兵卒の気概を忘れないという事らしい。君も見習いたまえ」


 アドラーは名目上ふじわらしのぶの下に就いていたが軍関係者ではない新参の上司に対抗心を抱いていた。しかし彼のもたらすは華々しい戦果と兵士の生還率だけは認めざるを得ない。

 ゆえに本来とは別の意味でふじわらしのぶに心酔しているジークフリードとの関係は悪化している。


 「退役軍人が偉そうに…」


 「ほう。学生時代に一度でこのも私にQDの戦闘シミュレーターでの対戦で勝った事があったかな?」


 アドラーとジークフリードの両者がぶつかり合うその寸前で渦中の男が姿を現した。


 「ジークフリード、アドラー。ここは私に免じて矛を収めてはくれないか?」


 ぶよん。

 腰に手ぬぐいを巻いただけのほぼ全裸の男が火花を散らす二人の男の間に立っていた。士官用のヘルメットから覗かせる金髪はまだ濡れている。


 ――どう見ても風呂上がりのおっさんだった。


 「中尉殿‼」


 ジークフリードは憧れの男のあられもない姿を前にして反射的に目を隠してしまった。


 ((生の中尉殿だけでも刺激が強すぎるのに…ッ半裸の中尉殿の姿なんてみたら自分を抑えられる自信が無い‼)


 「フッ、少尉。心配することはない。このように…」


 ふじわらしのぶは腰に巻いてある手拭いを取る――、その下は水泳パンツだった。

 身体が太いので色々と食い込んでいた。


 「し、失礼しましたっ‼」


 ジークフリードは鼻血を出しながら自分のQDのところまで逃げてしまった。そんな時、マリアが小さく挙手をする。

 

 「冗談は止せ、准尉」(※ギレンっぽく)


 次の瞬間、彼女の人型戦車はふじわらしのぶに向かって発砲しようとしていた。

 マリアの灰がかった青い目は剣呑な光を宿している。る気満々だった。


 「中尉殿。三秒以内に服を着てくれないと股間を拳銃でぶち抜きます。3、2、1…」


 ふじわらしのぶは光の速さQDのパイロットスーツに着替えた。

 兵の多くは通常の軍服のまま乗り込んでいるが、軍需産業から派遣されてきたこの男は戦闘データを取る為に身体のラインにフィットした全身タイツのようなパイロットスーツを着用している。


 「抑えろ、マリア准尉。銃から手を離せって…」


 オットーのオルトロスがマリアのオルトロスを羽交い絞めにして後ろに引き摺って行く。

 マリアは最後まで銃口をふじわらしのぶに向けたままだった。かくしてオットーの活躍によってふじわらしのぶの命は守護された。


 「さて冗談は置いておくとして…所属不明の飛行タイプと接触したという話だったな」


 「はい。動きは粗いのですが、かなりの手練れと考えて間違いないでしょう」


 己に落ち度があったとは思えないが、リリの操縦とアンナの戦闘センスはオブライエンの豊富な戦闘経験から考えても群を抜いていた。

 仮に登場している機体の性能差が無かったとしても一対一で戦ったならばオブライエンとて必ずしも勝利できるとは言い難い。

 だが目の前のどう見てもデブ中年にしか見えない男ならばと期待せずにはいられない。


 「君にそこまで言わせるとは興味深いな」


 ふじわらしのぶは手に持っていた紙パックのフルーツ牛乳を飲む。そして口の周りを白く染めながら隊員たちに提案した。


 「妙案だ。諸君、その所属不明機を見に行こうじゃないか。上手く捕縛できれば思わぬボーナスになるかもしれないぞ?」


 「畏れながら中尉殿、此度の不祥事をルシタニアが見逃すとは思えませんが…」


 オットーはバードマン登場時に収集していたデータからルシタニアが高い確率でこの場所に来る事を予想していた。

 ホライゾン、汎人類同盟とは基本的に不干渉という立場を取っているダマスカスの人間としてはいささか後ろめたいというところか。


 「ならば善は急げだ、アドラー君。獲物に逃げられぬうちに、逃がした魚は大きかったと嘆かぬように。我々はそこへ行くべきだよ」


 「はあ…」


 アドラーは内心承服できぬといった様子で返事をする。

 いざとなれば監査官特権で、この風体からして怪しげな”中尉”の命令を無視する事も出来たのだが、謎の人型戦車の存在と彼の戦闘技術を間近で観察する事は大いに興味深い事だった。

 さらに出撃前には上役からもふじわらしのぶの意思を可能な限り優先するようにと念を押されている。


 「ではロジャーに先導を任せましょう。我が隊においては最も軽傷ゆえに」


 オブライエンは横目でロジャーを見る。


 「先導させていただきます!」


 ロジャーはその場で敬礼をすると意気揚々にオルトロスに乗り込んだ。


 「…殿は俺が務めます」


 チャーリーはオブライエンの変心にやや戸惑いながらも最後列につく。かくしてダマスカス義勇軍の面々は再度、コーカサスの廃工場に向かうのであった。



 その時、何者かが遥か空の雲の合間から彼らの行軍を見守っていることは誰も気づかなかった。

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