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魔法少女ちゅーりっぷんVS 正義くんと勝利くん

作者: 源雪風

「ずっとこの花畑に二人でいられたらいいのにな。」

「そうだよな。」

ここは異次元の花畑。

世界征服を企む悪の組織の部下、正義君と勝利君は束の間の休息を味わっていた。

二人は大の字になって寝ころんで、どこまでも続いていそうな青空を見ていた。

そんなさなか、ボスからの呼び出しがあった。

「さて、行こうか。」と正義。

「ああ。」と勝利。

二人はヒョイと立ち上がり、花畑を後にした。


敵の魔法少女ちゅーりっぷんを、二人のコンビネーション攻撃で、めちゃめちゃにして、今日も勝った。

「正義の勝利だ!」

決め台詞を二人で言って、悪のアジトに帰ってきた。

「今日もお前のおかげで勝てたよ。」と勝利。

「お前の守りがなかったら、俺は負けていたさ。」と正義。

悪の組織の部下にしては、珍しく純粋な友情を育んでいる二人。

「二人で力を合わせれば、ちゅーりっぷんなんて敵じゃないさ。」と勝利。


数日後、またちゅーりっぷんと戦うことになった。

しかし、今回のちゅーりっぷんは一味違った。

おもちゃ会社の陰謀により、新しい武器を手にしている。

正義と勝利は精いっぱい戦った。

だが、新しい武器の力は強力で、二人はちゅーりっぷんに囲まれて、追い詰められてしまった。

武器から、光が放たれた時、勝利は正義を押し倒し、正義を攻撃からかばって力尽きてしまった。

ちゅーりっぷんは、敵を二人とも倒したと勘違いして去って行った。

正義は途方に暮れた。

「嘘だ、嘘だろ!なあ、答えてくれよ?うわああぁぁぁ!嫌だ!嫌だよっ!」

地中から根っこのようなものが出てきて、勝利をからめ取って消えた。

「俺は、これからどうしたらいいんだよ!」

正義は虚空に吼えた。

涙は春の雨のように、清らかで、やむことはなかった。

その日から、正義の心には、決して埋まらない真っ暗闇ができてしまった。

一人で異次元の花畑へ行って、声を殺して泣いた。

友を失った悲しみは正義を追い詰めていった。

狂ったように叫んだところで何も解決しなかった。


苦しみが頂点に達した冬の日。

何と、ちゅーりっぷんから悪の組織に攻め入ってきた。

正義は勝利の仇を取るため、ちゅーりっぷんに憎しみをぶつけて戦った。

しかし、魔法少女ちゅーりっぷんの清らかな愛の力に負けて、力尽きてしまう。

「勝利、やっぱり俺は、お前がいないとだめだ。」

正義の手足に根が絡まって地中に引きずり込まれた。


気付いたら暗くて狭い所にいた。

アジトにあった人食いの木の中だと思う。

ボスは、敵や、戦えなくなった部下を木の養分にして、その木が咲かせる花から生まれる魔物を使って世界征服をしようとしている。

ついに俺も消えるのか。

木の奥まで押し込まれた時、懐かしい匂いがした。

「勝利!ここにいたのか。」

暗い中だったが、目が慣れてきて、勝利の姿を見つけた。

勝利は目をうっすらと開けて言った。

「最期にまたお前に会えて、よかった。」

「勝利、俺も嬉しいよ。」

養分が吸い取られているのか、体がひどくぐったりしてきた。

俺は力を振り絞って、勝利に近づいた。

そして、冷たくなりかけた勝利を抱きしめた。

勝利も抱きしめ返してくれた。

俺と勝利は、互いの腕の中で無に還った。

俺たちの友情は固く結ばれ、体が消えても、決して消えることはなかった。





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