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勉強の時間です

エルド国第1王女パールは目の前の家庭教師の様子に、変化に驚いていた。


いつもならば、遅刻した事について1時間程小言があると言うのにどこか心ここに在らずと言った様子で、浮き足立っている、と言う印象を受ける。

「あー…」とか、「うー…」とか、言葉にならない言葉が口から出るだけで、授業になりそうにもない。


(自習しようかしら)


今日の課題は家庭教師の出身の魔族の國の文化について。


小さい頃から憧れの相手である家庭教師の生まれた環境を改めて学ぶ必要は殆どない。寧ろ、独学で勉強し過ぎて「魔族について貴女に教える事はもう無い」と彼以外の家庭教師から口を揃えて言われるレベルだ。


(この様子、【番】を感知した時の魔族の状態として広く知られているものよね?)


彼を家庭教師に迎えた頃、「わたくしを【番】にしてくださらない?」と言ったら「有り得ませんね」と一刀両断で断られた。

「自分で選ぶものではなく、本能で【そうだ】と分かる相手を【番】と呼ぶもので貴女にそう言った感情(もの)は一切存在しません」と言われてパールは拗ねた。


だから、彼が家庭教師に入る日はわざと別の予定を入れて遅刻している。

そうすれば、恋愛感情はないにしろ、彼と一緒に過ごす時間が増えると必死になって考えた。


【番】ではなくても、魔王であり聖女の息子である彼はいずれ妻を娶らなければならない。

「両国の架け橋にもなるし、悪い話ではないはず」と頼み倒して2年後のパールのデビュタントまでに【番】が見付からなければパールを第1夫人に迎える、と了承させた。


(聖女様は【番】が見付からずに今日まで独身でいらっしゃるもの)


アノンの場合はリザードマンの婚姻の証である鱗が硬すぎて相手に渡せない、と言うのもあるのだが。

そのアノンの子だから大丈夫、と、良く分からない確信をしていた。


「ねぇリヒター」


上の空の家庭教師(初恋の人)に声をかける。


「【番】が、見付かったのかしら?」


冷静沈着で表情が読めないと呼ばれた家庭教師の顔が真っ赤に染まる。


初恋は実らない、とは良く言うけれど、ここまでわかりやすいとはパールは苦笑いした。


彼にここまでの変化を与えるとは、【番】はやはり特別なものなのだと理解する。きっと彼はその人を心から幸せにしたいのだろう、と。


ふと、彼の手元を見ると肖像画があった。


先日、兄が召喚した【聖女】と、どこか顔立ちの似ている少女の肖像画。


どこにでもいそうな、平凡な人間の少女。


パールが仁奈に抱いた第1印象はそう言ったものだった。

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