お母さんは聖女様
いつもみたいに学校に行って、授業を頑張って家に帰ったらお母さんがいなくなっていた。
最初は、買い物にでも行っているんだって思ったけど。いつもならまだお仕事の時間のお父さんが家にいて、お母さんのお仕事のお友達と電話していた。
毎日元気いっぱいで、休んだ事の無いお母さんが仕事に来てないってお父さんの会社に電話があって、近所のおばちゃん達も、「今日はケイ子さん見てないわね」って言ってて、お母さんが大好きなお父さんは泣きそうになっていた。
りょう兄もさと兄も、部活を休んで一緒にお母さんを探すのを手伝って。
気が付いた時には夜の8時になっていた。
眠かったけど、お母さんが心配で頑張って起きていたら、やっとお母さんと連絡が取れてホッとして、気が抜けたからそのまま眠ってしまった。
お母さんはせーじょさま、に、なったって朝起きた時にお兄ちゃん達に聞いた。
すっごく遠く離れた場所で、いっぱい頑張ったら帰って来れる。連絡も取れるから心配しなくていい、ってお父さんも言ってた。
お母さんが頑張るなら、ニナも頑張る。
苦手な算数も、ピーマンも残したりしないから、お母さんがはやく帰って来れます様に、って通学路にある白蛇神社でお祈りしてたの。
授業参観の日は、お父さんが来てた。スマホの中でお母さんが「頑張れー」って応援してくれたから、手を挙げて算数の問題を解く事が出来たんだ。
そしたらね。
『何故、そんなとこにいるんだ!!』
って綺麗なお兄さんが『どうして、境界を隔てた世界に…』『世界を移動するには魔力が…』『嗚呼、これが、…を感知するという事か…』ってなんだかむつかしい事をブツブツ言って、最後に、「ニナが悪い!」って言った。
ニナ、何かしたのかな?
悪い事をしたのなら謝らないと、って思ってたらアノンちゃんが来て、お兄さんをしっぽでビターンって叩いてた。
お母さんがせーじょさまになって1ヶ月が経った頃、お兄さんはニナのいる世界にやって来た。
お兄さんはリヒタさんって言うらしい。
リヒタさんが魔力を無断で使ったから、お母さんが帰ってくるのはまだまだ先になった。
「子供は100人は欲しいです」
「仁奈ひとりでその人数は無理だぞ」
「可能ですが?」とリヒタさんは指で円を書いた。
そこには、大きなたまご。
「竜人族はたまごから産まれる生き物です。人間はたまごを産まないでしょう?
番が別の種族だったり、同性の場合、この様に魔力のたまごを生成して髪の毛なり唾液なりをたまごに入れる事で子供を設ける事が出来るのです。
そして、子供は1ヶ月程たまごを温めれば産まれます」
お兄ちゃん達と話してる時は、しゃべり方違うのなんでかな、ってアノンちゃんに聞いたら「人見知りだから」って言ってた。
心を開いた相手だったり、番だったりするとホントの性格が出るんだって教えて貰った。
「今の所ニナが幼いので1日5つくらいのたまごを生成するのが限度ですが、ニナが第二次性徴期に入れば1日で100のたまごを生成する事が出来ますよ。
まあ、無事に成長出来るのは1度のたまごのうちひとつくらいですが」
リヒタさんは部屋の入口にニナが立ってる事に気が付くと「くぁwせdrftgyふじこlp!?」と雄叫びを上げてお父さんがリヒタさん用に使わせてる客間に飛んで逃げてった。