おまけ話
外が煩い。私はふと目が覚めた。
確か病院のベッドで寝ていたはずなのに、凄く揺れている。
まさか地震!
起き上がろうにも起き上がれない。なんと私の身体は起き上がることも出来ないほど弱ってしまったらしい。
せめてベッドの下に……いや、もう死を待つだけの身体なのだから、いいか。
「奥様! 窓から離れて床に身を屈めてくださいませ!」
どこからか女性の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「わたくしはシューベラン公爵夫人です。醜く生き足掻くことはしません」
「しろよ」
思わず突っ込んでしまった。声からすると私より若い女性だ。生きることができるのなら、生き足掻くのが普通でしょう!
何が公爵夫人だ!
……公爵夫人? あれ? 日本語じゃない言葉なのにわかるし、私しゃべった。
「お……お嬢様! 起きられたのですか! いいですか? 外は怖い人がたくさんいますので、イスの中に隠れていましょう」
私を覗き込んできたのは、銀髪の美人の女性だった。それも西洋人の透き通るような白い肌。羨ましい。私は青白いよ。
あ、身体が動く。どうやら今まで、その女性に毛布に包まれて抱えられていたらしい。
抱えられていた?
手を上げると4歳か5歳ぐらいの小さな子供の手だ。
若返っている!
私が自分の手の小ささに驚いていると、バキッというモノが壊れる音と共に光が入ってきた。
「女が二人か。あと子供。女の子供は高く売れるから、そいつは売るとしてだな」
「ああ? 人身売買は違法だ!」
非道なことを言って侵入してきた者に、手に持っていたモノを投げつけた。
あ、クマのぬいぐるみ。お父様にもらった。
誰だよ。お父様って、侵入者なんてクマに食われてしまえばいいんだよ。
とイライラしながら、自分の中の言葉を否定して、クマが侵入者を排除すればいいという謎の思考が頭を過った瞬間。
クマのぬいぐるみが巨大化し、侵入者に襲いかかった。
「ああ、夢か」
私は納得した。夢ならこんなこともありえると。
「ついでに、周りで騒いているのも静かにさせておいて」
口の周りを赤く染めたファンシーとグロテスクを混ぜたようになったクマは、私に向かって頷いて、光が満ちている世界に出ていった。
「寝て起きたらまた病院の天井と向き合う日々か。それも仕方がないなぁ」
そう言って私は目をつぶった。なんだか全速力で走ったような疲れ方だな。この感じ久しぶり。
斯くして、5歳でその生涯を閉じるはずだったシューベラン公爵令嬢は生きることになった。
「奥様これは……」
「シューベラン公爵家の血の能力というよりも、王家の血の方が強く出てしまったようね。兄に相談してみるわ」
これにより、王太子となる第一王子の婚約者になることが決められたのであった。
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