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〜 作者より 〜

「せっかくだから、本にでもしてみる?」

 それが始まりでした。

 二年前の十二月頃、いつものように見舞いに行った時、冗談半分で言った言葉に彼女は「いいね!」と予想以上の反応を示しました。

 翌年の一月頃には、彼女が大まかな出来事をノートに書いて渡してくれ、それを物語にする作業が始まりました。

 彼女はガンと闘いながら物語の完成をいつも楽しみにしてくれていて、「売れたら、いい生活できるかなぁ?」と笑っていました。


 半年前の彼女の様子は前記のとおり、あまり良いものではありませんでした。抗ガン剤治療のつらさを目の当たりにしていたので、「早く二回目やっておいたほうがいいんじゃない?」とは言いつつも、強く勧めることはできませんでした。

 結局、彼女はぎりぎりのところで二回目の治療を受けましたが、その結果も前記のとおりです。早い段階でやっていたら良い結果が得られたのか……今となっては、それを知ることはできませんが。


 その後は脳への転移が認められ、またもや頭への放射線治療がおこなわれましたが、途中で容態が悪化し、いわゆる〝緩和ケア〟へと移行する形で入院していました。

 会うたびに衰えてゆく彼女に少しでも元気をあげられたら……と、ほぼ出来上がっていたこの物語を読んでもらいました。彼女は「こうして一冊の本になっただけでも嬉しい」と言って、とても喜んでくれました。それが今年十月頃の話です。


 当初、彼女に万が一のことがあった場合は、この小説をこうやって公の場に出さないつもりでした。そのために、ここに全力を投じてきました。

 しかし、間に合いませんでした。素人のくせにあれこれ考え過ぎて、自分がそういう結果を招いてしまったことをとても後悔し、この物語を自分の中にしまい込もうと思いました。


 彼女は強かった。

 もちろん涙を見たことは何度かありますが、それでもずっと〝奇蹟〟を信じて頑張っていました。普段よりほんのわずかでも体が楽な時には、「今日は調子がいいよ!」と言って笑顔を見せてくれました。


 物語の中では、ところどころ顰蹙ひんしゅくを買いそうな彼女がいます。しかしそれが彼女らしさであり、彼女自身が言うそんな〝いい加減さ〟のお蔭で、余命宣告された期間の倍以上、二年半という時間を生きられたのだと思います。


 友人たちに話を聞いてもらい、悩んだ末にこうして彼女の物語を発表することにしました。

 状況が変わってしまったのでタイトルは最後まで悩みましたが、ある友人の何気ないひと言が伝えたいことのすべてを含んだ言葉だと確信し、このタイトルに決まりました。


 そして、サブタイトル『笑顔のキセキ』。ここには二つの意味があります。

 まずはもちろん、彼女が最後まで信じた〝奇蹟〟。

 もうひとつは、状況が変わってしまったがゆえにそうなったとも言えますが、彼女の笑顔の〝軌跡〟を残したかったのです。〝こんな人間が、頑張って笑って生きてた〟と。

 そこまでを物語にすることもできましたが、この中で彼女がいなくなってしまっては意味がありません。そうしなかったことが、作者としてではなく、いち友人としての彼女への弔いです。



 いろいろとアドバイスをくださった方々、執筆を応援してくださった方々へ。

 ここで改めて感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございました!


 そして最後までお付き合い頂いた方、本当にありがとうございます!

 願わくば、もし彼女と同じく闘病中の方が読んでくださった時に──その方が生きる希望を失いかけていればなおさら、この物語で元気を取り戻すお力添えをさせて頂ければ幸いに思います。



 二〇〇九年十二月二十九日


 F'sy

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