自信
「結構歩いたから、疲れちゃったね〜。でも楽しかった! 今日もありがとう♪」
陽が沈んでゆく中、助手席のシートを少しうしろに倒して体を伸ばしながら、シュウに感謝の気持ちを伝えた。
「ホント、いろんなとこ行ったねー。喜んでもらえたなら良かったよ」
彼も笑顔で応えてくれる。
「これで次の治療に向けての充電はできたかな?」
「うん、バッチリだよ!」
それはまったくの本心だ。三週間の休みだけでも体力的には準備万端なのに、こうしてシュウと出掛けたり、家で子供たちと楽しく過ごせたことが、精神面に大きく働いたのは間違いない。
自然を見て、好きな物を食べて、家族や彼と楽しく会話して……。
(やっぱり楽しい! 楽しい、楽しい! こんな日がずっとずっと続けばいいのに!)
生きてるなぁ、と実感する。これが〝生活〟だと思う。
「──シュウ」
「何?」
「……ううん、なんでもない」
「なんだよ、気持ち悪いな」
「ありがとね」
「ん? うん」
言いかけたのは、本当は違うことだ。少し前から持ち続けている、彼に対しての不安。今なら聞ける──そう思ったのだが、いざとなると言葉が出てこない。
(やっぱりやめよう。雰囲気、壊したくない……)
私は今日の出来事を振り返って楽しい話題だけを選び、そのことを一旦忘れようと努めた。
自宅近くに車が停まる。少し彼に寄り添うと、彼も優しく肩を抱いて頭を撫でてくれる。
「四クール目も頑張るね」
「うん、次で最後だもんな。今までの治療を乗り越えてきたサユなら、大丈夫だよ。ちゃんと薬も効いてるし、ここまで頑張ったんだから絶対治る!」
「──うん! ありがとう、シュウ」
やはり今は、病気を治すことに専念しよう。彼の車が走り去ったあと、もう一度自分に言い聞かせた。
(私は、絶対治る! 次も頑張るぞ!)
うまく気持ちを切り替えられた私は、自分でも驚くほど自信に満ち溢れていた。