第一子、出産
高校三年生になるのを待たずに、私は学校を中退した。
お腹が大きくなるにつれて、中にいる赤ちゃんに対しての愛おしさがどんどん強くなる。あんなつまらない男との間にできた子だという事実など、まったく気にならなかった。──お腹の中に〝私の〟子供がいる。そう思うだけで、毎日幸せを感じていた。
同時に、不安や恐怖も同じくらいあった。
(本当にひとりで産める……?)
(産んでから、どうやって生活していこう……?)
(ちゃんと育てられるかな……?)
考えるたび、不安で胸がいっぱいになる。
しかし、胎動が──お腹に感じる赤ちゃんの命の鼓動が、そんな不安を吹き飛ばしてくれた。産まれる前から、この子は私を助けてくれている……。私は何度も元気をもらった。
寒さの厳しかったこの年の師走、私は産んだ。女の子だった。
産む時はとても痛かった。こんなにも激しい痛みがあるのかと思うほどだった。痛みに耐えて、苦しんで、やっとの思いで産んだだけに、「は〜い、赤ちゃんですよ〜!」という看護師さんの声を聞いた途端、私は号泣した。
泣きながら、産まれてきたばかりの赤ちゃんの顔を見せてもらう。間近で顔を見て『あ〜、私の初めての家族だ〜』と心の底から思い、さらに涙を流した。
私は赤ちゃんに向かって、小さな声で話し掛けた。
「産まれてきてくれて、ありがとう……! これからよろしくね……!」
退院するまで、父は毎日のように病院へ来て赤ちゃんの顔を見ていった。色々あったが、やはり孫は可愛いらしい。
名前は父が決めた。父が重大発表でもするように名前を告げた時、私はすぐに納得した。
〝ユヅキ〟──意味は聞かなかったが、良い名前だと思った。
(お父さんにしては、シャレた名前付けたなぁ〜)
本音を言えば、初めての子なので自分で名前を付けたかった。だが父にはさんざん迷惑を掛けたし、産まれる前から考えていたことも知っていたので、私は何も言わなかった。
これから手探りの生活が始まる。わからないことだらけだ。しかし母親になったのだから、すべて自分の力で乗り越えていかなければ。
『頑張ろう!』
青く晴れ渡る空に向けて、心の中で力強く言った。寒空の中、まるで私の味方をしてくれているかのように、太陽の光が温かく降り注いでいた。