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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第四章・闘病
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鎌倉へGO!

 八月十日。待ち望んでいた鎌倉〜江ノ島巡りの日がやってきた。

 いつもより早起きして、朝食の前から念入りに出掛ける準備をする。外は絶好の観光日和だ。

(メイクOK、洋服OK! あと……カツラもOK!)

 久しぶりの遠出なので、かなり気合いを入れてオシャレをしてみた。


 ジョウを保育園へ送ってから約束の時間になるまで、私はテレビの前に座って極力動かなかった。少しでもシュウの負担を減らせるよう、ぎりぎりまで体力を温存するためだ。


 十時五分前、シュウからメールがきた。

『着いたよー。』

『は〜い、今行く〜。』

 少しだけ普通に動いてみる。さっきジョウを送った時もそうだったが、息切れや動悸はするものの前回よりは酷くなく、回復も早かった。やはり気分的なものは大きい。この調子なら、車までは普通に歩いても問題なさそうだ。


「おはよう!」

 シュウの所へ着いた私は、いつも以上に元気よく挨拶をした。

「おはよう。おっ、どこの美人さんだ?」

「ひっひっひ。可愛いでしょ〜♪」

「自分で可愛いって言ってはいけないのだよ、お姉さん」

「あら、ごめんなさ〜い。でも、頑張ったんだから!」

「うん、完璧」

「でしょ〜?」

 機嫌を良くした私は、さらにはりきってシュウに出発の合図を掛けた。

「鎌倉に向かって、出発!」

「ラジャー!」


 外は暑いが、車の中は快適だ。少しだけあった息切れや動悸もすぐに回復する。

「夏だねー。ケツメイシでも聴こうか?」

「うん♪」

 用意してあったのか普段から聴いているのか、シュウがカーステレオのボタンを一度押しただけで曲が流れてきた。私は風を感じたくなって、薄く窓を開ける。帽子が飛ばされないように左手で頭を抑えながら、風を顔に当てた。

「気持ちいいね〜。今日の天気にケツメイシの曲……めちゃめちゃ楽しい♪ そうだ、ビデオ撮ろうよ!」

 私はバッグからビデオカメラを取り出し、助手席からシュウの顔をファインダー越しに見て話しかける。

「もう撮ってるよ〜」

「え! 回してから言うなよ! えーと……今日はどこへ行きますか?」

「鎌倉に大仏見に行って〜、ソフトクリーム食べて〜、江ノ島で海見て〜、美味しい海の幸を食べに行きます!」

「おぉー、やる気満々だねー」

「久しぶりの遠出ですからっ!」

「ははは。じゃあ今日は思う存分、楽しんでくださいよ」

「は〜い♪」


 シュウと外の景色を交互に撮りながら楽しくお喋りしていると、あっという間に鎌倉に到着してしまう。

「結構、早く着いたね〜」

「そうだね、道もそんなに混んでなかったし。たくさん見物できるよ。とりあえず歩こう」

「うん」

「疲れたらいつでも言いな」

「うん、ありがとう」

 私はキョロキョロと落ち着きなくあたりを見回しては、「これ可愛い!」「あれ面白い!」と、目に付くものにいちいち感想を述べていた。シュウはそんな私に呆れることなく、一緒になって楽しんでくれる。


 途中、手作りのミサンガを売っている店を見つけた。二人で足を止め、たくさん並べられたミサンガを見る。

「すごいね〜、色とりどりで」

 私はその種類の多さに感心した。

「ホントだね。あ、これ綺麗じゃない?」

「どれ? ホントだ、可愛いね! ねぇ、どれかお揃いで買おうよ」

「そうだね。何色にしようか?」

 そう聞かれて、かなり迷う。

「う〜ん……。どうしよう、白とかがいいかな?」

「汚れ、目立ちそうじゃない?」

「え……その観点……、じゃあ、このピンクっぽいのは?」

「やだよ俺、ピンクなんか……。サユに選ばせると、女の子っぽいのになりそうだなぁ」

「じゃあ、シュウ選んで」

「そーだなー。明るい色で、違和感ないのは……」

 しばらく二人とも悩む。「あれは嫌」「これはいい」を繰り返して、ようやく決めた色は……。

「「オレンジにしよう」」

 見事にハモったのがおかしくて、店の雰囲気も考えず大笑いした。

「だね♪ だね♪ オレンジに決定!」

 初めて揃いの物を身に付けるというのは、なんだかくすぐったい嬉しさがあった。私は左の手首に、シュウは左の足首に付けた。付ける場所も同じならもっと嬉しかったのだが、シュウはたぶん恥ずかしかったのだろう。実は私も恥ずかしかった──きっと、シュウとは違う意味で。

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