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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第四章・闘病
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元気一〇〇〇倍

 やはり、二日目から吐き気が襲ってきた。日を追うごとに酷くなり、一日に何度も吐く。

 満足に食事を摂れなくなってからは、飲み物で胃を満たしていた。ゼリーなど、噛まずに食べられるものはかろうじて喉を通ったが、それでも結局は吐いてしまう。


 また一ヵ月間、この苦しみに耐えなければならない。『終わればまた元気になるんだから』──本当はこう思いたいのに、体がそうさせてくれない。副作用が現れ始めてから、私が思うこと。

(これが終わっても、少し休んでまた治療。その次も同じ。それに……そこまでたどり着けるかどうか……)

 ポジティブにあろうとすればするほど、気持ちは真逆の方向へ向かっていった。

 治療が始まる前日までは、意識して前向きに考えることができていた。だが治療がスタートしてからは、時間の経過とともに考え方がネガティブになってゆき、結局泣いている毎日……。


 そんな中、ヨウちゃんやナミさん、大好きなシュウの顔を見ると安心する。みんなも、こんな私の姿を見るのはつらいだろうと思う。しかし嫌な顔ひとつ見せず、私を笑わせて励ましてくれる。短い時間だが、その時だけはつらい治療のことを忘れていられる。

 ──私は幸せ者だ。みんながいなかったら、今頃どうなっているかわからない。


 どういう想いがあったのか自分自身よくわからなかったが、ある日のメールでシュウにこう聞いたことがあった。

『私のこと、大切?』

『俺は入院も大きな病気もしたことないから

 サユの不安はわからない部分が多いけど……

 少しでもわかってあげられればって思ってるよ。

 サユのことは、もちろん大切だよ。

 言葉だけじゃ信用できないかもしれないけど

 俺にとって大事な存在です。』

『愛はある?』

『サユには負けてるかもしれないけど、あると思うよ!』

『遊びに行ったりできなくて、ゴメンね。』

『会えるだけで満足だよ!』

 気を遣ってくれているのだろうか……。もし、私がシュウの立場なら──シュウがガンになったら。私にはたぶん、同じような言葉を彼にかけてあげられないかもしれない。勘繰ったわけではないが、『なんでシュウは、こんなふうに言えるんだろう』と少しだけ思った。


 一度は私のもとから離れようとしたのに、戻ってきてくれた。仕事が休みの日も時間を割いて、来られるかぎり病院へ来てくれる。……シュウは、私が思っているより遥かに強い人なのかもしれない。

(私も、もっともっと強くなって病気と闘わなきゃね!)

『ありがとね、シュウ。私、シュウに出会えて幸せだよ!』

『教習所に通って、いい男見つけたねぇ(笑) 元気一〇〇〇倍だね、頑張れ!』

(ホントだよ、元気一〇〇〇倍! 頑張ろう!)

 私はやっぱり、誰かがいてくれないと頑張れない。

(でも、それで頑張れるなら……いいよね?)

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