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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第一章・過去
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楽しい夏休み

 高校に入学して最初に迎えた夏休み。母から「サユ。休みの間、ニューヨークへ遊びに行ってきな」と言われた。

 ニューヨークには、両親の知り合いがいる。両親とは長い付き合いのあるおばさんで、私も数回会ったことのある人だ。以前から何度か母に「留学すれば?」と言われていて、話を聞いたおばさんも「そういうことなら、サユちゃんが来たら日本語は一切使わないわ」などと言うので、英語が大の苦手な私はその話が出るたびに断っていた。

 今回は遊びに行くだけなのでおばさんも日本語で話してくれると聞き、私はひとりでニューヨークへ行った。


 到着した当初は、あまり楽しくなかった。言葉もわからないし、当然あたりは外国人ばかり。それに、このニオイ。私にはこの国のニオイが合わなかった。

 おばさん以外の家族は日本語が話せないので、おばさんを介してでないと会話もできない。すごくホームシックになり、早く日本に帰りたくなった。


 おばさんの旦那さんは、警察署の署長。偉い人なんだ、と恐縮していたが、そんな私に旦那さんはとても優しく接してくれた。

 おばさん夫婦には二人の子供がいる。といっても、二人とも私より年上だ。

 お姉ちゃんはモデルの仕事をしていて、一年のほとんどを外国で過ごしているのだという。しばらく帰国の予定はなく会えないことを残念に思ったが、写真を見せてもらうとモデルというだけあって、とても綺麗でかっこいい人だった。

 お兄ちゃんはボストン大学に通う学生で、アメリカ人らしく(?)家族の前でもお構いなしに可愛い彼女とラブラブだった。少し羨ましく思ったのを憶えている。


 ここでのほとんどの時間を、おばさんと旦那さんの二人と過ごしていた。ナイアガラの滝やオーロラを見させてもらったり、他にも色々と楽しませてくれて、だんだん言葉やニオイなどは気にならなくなっていった。


 ニューヨークへ来て三日目。夕食の時間になったので食卓に行くと、誰もいない。不思議に思いながら椅子に座ろうとした瞬間、突然部屋が真っ暗になった。『えっ? 停電? どうしよ……』と焦っていると、「Happy birthday to you 〜」と発音の良い歌声が聞こえてきて、キッチンから宙に浮いた光がこちらへやってくる。よく見るとそれはロウソクの火で、旦那さんがテーブルに十六本のロウソクが立ったケーキを置いた。

(……そっか。今日、私の誕生日だ!)

 バースデーソングを歌い終えると、「サユちゃん、誕生日おめでとう! ほら、早くロウソクの火、消して!」とおばさんが笑顔で言う。遠慮がちに息を吹いてロウソクの火を消すと、部屋の灯りが戻ってクラッカーの大合唱。おばさんは奥の部屋から、本物の仔熊ほどもありそうな大きなテディベアのぬいぐるみを持ってきて、「はい、プレゼント!」と私に差し出した。

 こんな誕生日らしい誕生日は、生まれて初めてだ。私は感動で声を詰まらせながらも、「あ……ありがと〜!」と心から二人にお礼を言った。

 ケーキも料理も美味しくて、『ここに生まれていたら、いつもこんなに幸せだったのかな……』と、つい思ってしまった。


 そのあとも、車で夜のニューヨークの街へドライブに出掛けた。食べたばかりなのに途中でファストフードの店に寄ってもらい、初めて本場のハンバーガーを食べた。美味しいうえにボリュームもあり、とても満足した。


 翌日は昨夜いなかったお兄ちゃんと出掛けて、靴をプレゼントしてもらった。言葉はわからなかったが、一緒に見て選んだので気に入った物がもらえて嬉しかった。


 行きの飛行機の中や到着した時とは違い、帰りの飛行機ではここでの出来事を何度も振り返り、楽しい思い出に浸っていた。

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