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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第二章・恋愛
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願い、叶う

 翌日、先生から『やっぱり土日は、しばらく休めそうにない』とメールが来た。もう私も仕事をサボるわけにはいかないので、先生の終業後に近場をドライブすることになった。

『じゃあ、いつ行く?』

『それぐらいなら、明日行くよ』

『ホント? じゃあ明日、待ってるね!』

 昼間に会えないのは残念だったが、こんなにすぐ会えるとは思っていなかったので、短い時間だけでも嬉しかった。


 そんなドライブデートが三日続き、会うたびに新しい発見のある先生に、私の想いは強くなる一方だった。

 そして四日目、ドライブから戻ってきた時……。

「この先、何があるかわからないけど……付き合おうか!」

「──えっ?」

 車から降りようとシートベルトを外していた私は、思わずその手を止めた。考える間もなく、

「返事がないなら付き合わないよ」

 と、少し意地悪そうな笑みを浮かべて先生が言う。

「えーっ! やだやだ! ……よろしくお願いしますっ」

 慌てて答え、軽くお辞儀してみせた。顔をあげると先生はこちらに向き直り、そして……この前と同じ、優しいキス。違ったのは、今この瞬間にちゃんとそれを感じていることと、前よりも長く唇を重ねていたこと──。


 走り去ってゆく車のテールランプを見つめて、

(……私、先生の彼女でいいの? ホントに……?)

 先生の言葉が唐突すぎて改めて確認してしまうが、十数分前の出来事を思い返し、それが紛れもない事実だと実感する。

(……いいんだよね。彼女、だって! やったー!)

 まさか、こんなに早く願いが叶うとは思ってもいなかった。喜びのあまり、その場で飛び跳ねたくなった。

 しかしこの前のように、ユヅキにすら隠し切れないほど感情を表に出してしまっては、今度こそ父に気付かれてしまう。それを避けるため、エレベーターの中で必死に感情を抑え、さらに玄関の前でひと呼吸置いてからドアノブを回し家に入った。


 毎日、楽しかった。久しぶりに、女としての幸せを感じていた。

 とある休日に彼と買い物に行った時、私が「先生!」と大きな声で呼ぶと、まわりにいた人たちが声の大きさ以外の部分に反応しているのがわかった。彼もそれを感じたらしく、私の所へ来て「先生はやめようよ」と、眉を八の字に曲げて言ってきた。

 体裁を気にする彼とは逆に、私にとってはお互いを名前で呼び合える嬉しいきっかけとなった。


 数日後にはシュウの誕生日があり、プレゼントと『おめでとう』と書いたメッセージカードを用意した。自分でラッピングしてカードを添えて彼に渡すと、とても喜んでくれた。そんな彼を見ているだけで、私も嬉しかった。


 明らかに過去の恋愛とは違う。シュウには、今まで感じたことのない〝温かさ〟がある。

 ずっと一緒にいたい。この先、彼とともに人生を歩んでいきたい。──まるで、もう結婚を決めたような気分になっていた。

 子供たちにも、早く父親を作ってあげたい。ちゃんとした家庭を作ってあげたい。簡単なことじゃないのは充分わかっている。すべては、私次第……。

 しかし、この気持ちがあればきっと頑張れる。家庭も、仕事も、この恋も、全部。

 私は希望と自信を胸に抱いて、真っ暗な夜空に明るい未来を映していた。



 ──だが。



 この先の幸せを思い描いていた私は、あまりにも意外な形で絶望の縁へ追いやられることになった……。

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