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ダメ女のエール ~笑顔のキセキ~  作者: F'sy
第二章・恋愛
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初デート・映画館

「先生って、何人兄弟なの?」

「三人で、末っ子の長男だよ」

「そうなんだ〜! 私、ひとりっ子だから羨ましいなぁ」

「まわりが女ばっかりってのも、なかなか疲れるよ」

 食事中は、お互いの家族や仕事のことなどを話していた。なぜ今までのメールや電話でこういったことを話さなかったのか、自分でも不思議には感じたのだが、会ってますます先生のことを深く知りたいという気持ちの表れだろうと思った。

「仕事、楽しい?」

「うん、今の仕事はすごく楽しいよ。運転するのが好きだからね」

「私も! 車もいいけど、いずれはバイクの免許も欲しいんだ!」

「へぇ、バイク? 俺も本当はバイク教えたいんだよ」

「そうなの? じゃあ二人ともバイク好きだ〜! ひとつ共通点、見つけたね!」


 楽しい時間は過ぎるのが早い。そろそろ映画が始まる時間だ。

「あ、映画もうすぐだね。私ちょっと、先に洗面所に行ってくるね」

「うん」

 化粧を直して戻ってくると、先生は会計を済ませてくれていた。私は気付かないふりをし、先生のあとに付いてレジの前を通る。「ありがとうございました」と、店員がレジに入らずに私たちを見送る。

「払ってくれてたの? ……ごちそうさま〜」

 こういうスマートなことをしてくれる人には、あえて「いくらだった?」とか余計なことは言わないほうがいい──とは、私の持論だ。先生は案の定「どういたしまして」と笑顔で言い、少なくとも先生にとってはそれが正しかったことが証明された。その姿に私はますます惹かれてゆく。


 ちょうどいい時間に映画館の前に着き、チケットを買う。ここでも先生は、何も言わずに二人分のチケットを買ってくれる。座席を指定する時だけ、

「一番うしろでいい? 好きなんだ、そこ」

 と言ってきた。

「へぇ〜、なんで?」

「ここが一番、観やすいんだ」

「あ、意外と単純な理由だったのね。いいよ、私はどこでも」

 人それぞれだな、と思いながらチケットを受け取る。

「あ、何か飲み物買わない?」

 そのまま館内に入ろうとした先生に、バッグの中の財布を探しながら私は言った。

「そうだね、何がいい?」

「え? いいよぉ、出してもらってばっかだし、ここは私が……」

「いいから。何にしますか?」

「……じゃあ、カフェオレの冷たいの。ありがとね」

 先生は軽く私を制すようなポーズをとって、売店のカウンターへ進んでいった。

(なんか、申し訳ないなぁ……。でも嬉しい♪ 今日は甘えさせてもらお!)

 数年振りの至れり尽くせりなデートに、私は素直に受け身でいることを決めた。


 飲み物を受け取り、館内に入る。平日の昼間なので人はまばらだった。

「空いてるね〜、さすが平日」

「だね〜。先生、右と左、どっちがいい?」

「う〜ん……じゃあ右」

「良かった。私、左が好きなんだ」

「へぇ、なんで?」

「……なんとなく」

「ははは、なんだ。理由なしか」

「うっ……。強いて言うなら、感性……?」

「感性、ね」

「そーそー」

「じゃあ俺も、一番うしろに座るのは感性ってことにしよう」

「そうしなよ〜! さっきの理由じゃ、普通すぎてつまらないもん!」

 二人で笑いながら席に着く。こういう何気ない会話が楽しめるだけで、すごく気が合ってるんじゃないかと思ってしまう。


 証明が消えて長々と続いた宣伝が終わり、ようやく本編が始まった。中盤あたりまでは楽しんで観ていたのだが、後半は先が読めてしまってあまり楽しめなかった。

(う〜ん、まぁまぁかな。ドラマのが面白かったかも。先生はどうだったのかなぁ)

 エンドロールの最後の一行が流れて消え、スクリーンが黒一色で埋まると同時に館内が徐々に明るくなる。最後までじっと正面を向いていた先生が、腕を前に突き出して伸びをする。

「う〜ん……はぁっ。まぁまぁだったね」

(良かった、同じだ)

「ね〜。途中までは面白かったんだけど……」

「最後、ちょっと無理ない?」

「だよね〜! 私も思った! 良かった〜、『面白かった!』って言われたらどうしようかと思ったんだぁ」

「ははは、じゃあ安心だ」

「うん!」

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