オーバーツーリズム
奈良・春日大社・・・
「タケミカヅチ様!」
鹿の角を持った神が、祭神・タケミカヅチに声をかけてきた。
「どうした!
騒々しい!」
タケミカヅチは、書類に目を通していた。
「日本は、現在金がないのだ!」
「それどころでは、ないですよ。」
鹿の神の側に、鹿の角の女神が現れた。
「ケリュネイア殿!」
ケリュネイア。
月の女神アルテミスの従属神たる、女性ながら角を持った鹿の女神だ。
「あなたのところのシカが、苦情を訴えてきていましてね。
これまで、観光客や欧米人となかよくやってきたのに、中国人観光客の無礼が目立つとか。」
そこで、「神鹿」が書類をタケミカヅチに提出した。
「けしからん!
奈良公園のシカにゴミを食わせただと!?」
そればかりではない。
そうやって死んだシカを解剖した獣医が、彼らの胃からゴミを発見したとの報告書だ。
「総動員ッ!
中国人観光客を追い出せ!」
タケミカヅチは、もとは武神。
完全にブチ切れた!
「少数の中国人観光客には、とばっちりだろうがやむを得ん!」
奈良公園・・・
「す、すげえ・・・」
「あの懐っこいヤツらがキレるんだな・・・」
アメリカ人観光客やドイツ人観光客が、シカに噛みつかれて悲鳴をあげる中国人観光客を見ていた。
「知ってます?
こういうのは、日本ではこう言葉にするんですよ。」
地元女性が、アメリカ人観光客とドイツ人観光客に説明する。
「「仏の顔も三度まで」。
なにやっても怒らない人でも、最後にはキレるんです。
神仏でもね。」
「「違いない。」」