チー牛
街中の牛丼屋の駐車場に、三輪バイクに曳かれたキャンピングカーが停車する。
バイクを運転していたのは、ガタイのいいサングラスのミノタウロスだ。
やがて、サングラス・ミノタウロスは、バイクを降りる。
さらに、無線機を使って何やら話しかける。
「公爵チー牛様。
牛丼屋・キチノ屋に到着いたしました。」
「ご苦労。
では、食すぞ。」
一方、牛丼屋・キチノ屋・・・
「店員さん!
牛丼・並盛!」
オタク風味の青年が、店員に注文する。
「はいよ!」
牛丼を受け取り、食べ始めるオタク。
だが・・・
店にいた若い女性がちッ!と舌打ちした。
「このチー牛が!」
どうやら、オタクにかけた言葉のようだが、見向きもしない。
当然だ。
彼の自分の認識は「オタク」である。
「てめえだよ!
このチー牛が!」
「何を言うか君は。
僕は、「チーズ牛丼」など食べん!」
女性が、オタクに殴りかかろうとしたその時だ。
店の自動ドアが開き・・・
貴族のようなミノタウロス・・・
暴走族のようなミノタウロス・・・
レスラーのようなミノタウロス・・・
スナイパーのようなミノタウロスの四名が入ってきた。
「店員。」
「は・・・
はい!」
「チーズ牛丼四人前・・・
大盛でいただこう!」
「貴族」が、声をかける。
「娘よ。」
「は・・・
はい!?」
女性は、オタクに向けた拳を降ろし、間抜けに声をあげてしまう。
「この者は、「普通のオタク」だ。」
「へ?」
「「チー牛」とは、我々のような「チーズ牛丼」を主食にする「ミノタウロス」のことを言うのだ。」
言うと、「貴族」は・・・
侍従の三人を連れて、オタクと相席する。
「た・・・
助かりました・・・」
「礼には及ばぬ。
そなたは、「自分」を汚され・・・
我らは「誇り」を汚されたわけだからだ。」
「貴族」・・・
「侯爵チー牛」は、割り箸を割って、丼を手に取った。