3.王女アリスの立場。
オープニングはここまで(*'▽')
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「とんでもないことになった……」
ボクは思い切りうな垂れつつ帰宅した。
使用人たちが何事かと訊ねてくるが、答えられるわけがない。そのため適当に誤魔化しつつ、自室に戻って今後の対策を練ることにした。
「だけど、あのお転婆王女……どうすればいい?」
完全にこちらの失策であるが、アリスにはしっかりと弱みを握られている。
もしぞんざいに扱えば、ドラゴン討伐の一件を言い触らすかもしれなかった。そうでなくても不必要に目立つ結果となるのは明らかであり、ぐうたらに過ごす、というボクの掲げた理想からは程遠いこととなる。いっそのこと、こちらも何かしらの弱みを見つけるか……などと考えたが、それこそ普通を演じる自分とは乖離していた。
そこまで考えて、一つため息をつく。
「……ったく、仕方ないか」
悪態を口にしつつ、ひとまずこの問題については諦めることにした。
そして荷物を片付けると、ボクはおもむろに部屋を出る。
向かうのは、屋敷の端にある一室だ。
「どうだ、具合は?」
数回ドアをノックした後に、ボクは部屋の中にいる『彼女』に声をかける。
すると返ってきたのは、優しくもか細い少女の声だった。
◆
「今日はずいぶんと機嫌が良いのだな、アリスよ」
「はい、お父様……!」
――一方その頃。
王城では国王ガイスと、王女アリスが言葉を交わしていた。
もっとも、その距離感は親子のものではない。あくまで一国の王とそれに謁見する者、という体裁を崩してはいなかった。少女の方は嬉々としているが、父親である彼はどこか憮然とした表情を浮かべている。
父の問いかけに応えたアリスは、ゆっくりと面を上げた。
そして、こう言葉を投げかけられる。
「お前は昔から本当に落ち着きがない。頼むから、我々にとって不利益になる行いだけは避けるのだぞ?」
「…………はい、分かりました」
ガイスの言葉は、突き放したものに思われた。
事実、アリスは意気消沈したようにうつむいてしまい、黙り込んだ。
そんな彼女の姿を見下ろしながら、国王は淡々とした口調でこう続ける。
「良いか。お前はいずれ国のため、他国の者と婚姻を結ぶ存在だ。自身の置かれた立場と役割、努々忘れるなよ?」――と。
それはすなわち、アリスは道具に過ぎないという宣言だった。
親子の情というものから、かけ離れた内容。しかし周囲の者たちも、国王の発言に異を唱える者は一人もいなかった。何故なら、それがこの王国での常識だからだ。
貴族や王族に生まれた末女は、政略のための道具に過ぎない。
当たり前の価値観であり、違和感などなかった。
「承知、致しております」
それについて、アリスはどのように感じるのか。
答えは握り締められた拳が、語っていた。
「ならば、もう良い。……下がれ」
「はい……」
ガイスの言葉に、少女は短く答えて踵を返す。
そんな彼女には家臣からさえ、冷ややかな視線が送られていた。
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