終幕
「ええと、ただいま。」
レイカは呆けた顔で、何も言うことができなかった。リョウ君が戻ってきたの?ああ、信じられない!絶対に帰ってきてくれるって信じてた!そのような滅裂な思考が頭の中をぐるりぐるりと何重にも回り、やがて彼女は静かに涙を流しながら、心底屈託のない満面の笑みを浮かべた。光溜まりに沈みながら泣き笑いするその姿は、まるで人魚姫のようでとても美しい。リョウは彼女の傍まで近寄り、光の海の中に並んで座った。
「いやぁ、情けないかな?もう戻らないなんて、大みえ切っといて、ノコノコと帰ってくるなんてさ。」リョウは、あははと笑った。自嘲も卑屈もない、澄み切った笑い。
レイカは黙ったまま、彼を見つめている。
「うん、やっぱり情けないよね。かっこ悪いな、俺。でも、犯罪者だって打ち明けた時の君の顔が、とても優しくて、まるで俺の罪を君からだけは全部許された気がして、それに甘えてみたくなっちゃったんだ。もう一度だけ会って、笑顔でお別れしたいなって思ったんだ。」
「……」
「あの?レイカちゃん?まだ喉の調子が悪いの?」リョウは心配そうな顔をしながら言った。
「愛してる。」レイカはささやくように言った。
「え?」
「愛してるの。ずっと私の傍にいて。」
リョウは、胸が詰まってはち切れそうな、もうこんなに幸せなのにこれ以上幸福をもらっても納める場所がないよ、とでも言いたげな、贅沢な悩みでいっぱいになって嬉しい悲鳴をあげたくて堪らないような、そんな表情で、レイカを見つめ返した。
「もちろん。もう二度と、君を不安や心配で苦しめたりしないよ。」
レイカは彼の肩に頭を乗せて体を委ねた。リョウは彼女の頭を撫でながら、髪の毛に鼻を埋めた。誰が見てもきっと、彼らを幸せなカップルだと思ったことだろう。
レイカはベッドの上で自分の横に寝ている恋人の顔を幸せそうに眺めていた。リョウは、よほど疲れていたのか、あるいは先日の疲れが抜けきっていなかったのか、ベッドに入るやいなや、何のムードも興もなく、すぐに寝息を立てていたのだった。
「リョウ君。もうあなたはひとりぼっちじゃないから、私がいるから。何も怖くないよ。私だって力になるから。だから、安心しておやすみなさい。」
レイカは愛おしそうにそう呟き、リョウの頭を撫でた。すると、寝ていたはずのリョウが、ゆっくりと寝返りを打つように動いて彼女によりかかり、彼女の耳元に口を添えた。
「――。」
リョウ君、ありがとう、大好き。おやすみ。
レイカは迷い一つなく、目をつむった。明日が私にとってもリョウ君にとっても、最高の日になりますように。明後日も、来年も、ずっと――。そのように祈りを捧げ始めた頃にはもう、彼女のまぶたは重くなり、意識も遠のきつつあった。誰かが頭を撫でた気がして、レイカは微笑む。深い眠りに落ちる瞬間も、彼女の心は幸せと喜びで満ちあふれていたのだった。