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第21章 破壊

もうなにも言わずに読んでください。

「何が起きる?何が起こる?お前はいったい何を望む?」

 老人が立ち上がった。

「なにを言っているんだ。今のショックでおかしくなったか?」

 青年も立ち上がる。

「おかしい?この状況を見て、お前はいったい誰がおかしいと思う?」

「あえて言うならば全てがおかしい。なにも今に始まったことじゃない。」

「そうか・・・・・・そう思うのもまた良い。だが、私はおかしいのは一人だと思うがな。」

 笑い続ける少年を見て老人は言う。

 そう、誰の目から見ても彼はおかしくうつるだろう。

「俺たちだって似たようなものじゃないのか?」

「そうかもしれんな。全くこの世はいつまでたっても面白い。」

「そうかよ・・・・・・」

 青年は老人に向かって駆けた。

 老人は青年に向かって手を突き出す。

 老人と青年の間にエネルギーの壁が生まれて


 やはり消え去る。


 笑い続ける少年が、手をこちらに向けている。

「なんだか分からないが、ここはもらった!」

 青年の勢いは弱められることのないままに、老人に突き刺さる。

「やはり・・・・・・偶然ではなかったようだな。」

「なんだか分からないが、お前を倒せる手段ができたようだ。これで形勢逆転だな。」

「お前は彼の力が気にならないか?」

「気にはなるが・・・・・・あいにくと考えているだけの時間はない。」

「それならば簡潔に説明しよう。あの力は、私の力と同じだ。」

「何・・・・・・」

「この力をはばめるものは、同じ力だけだ・・・・・・同じ力を持ったものが、私をはばみにくる。実に面白いわ。」

 老人は静かに笑う。今までの狂ったような笑いではない。

「そしてここで力を排除してしまえば、私は真に神となる!」

 そういうと、老人は少年へと向かっていった。青年など眼中にない。

「させねえ・・・・・・」

 青年は老人へと攻撃しようとするが、こんどはあっさりと、はねとばされてしまった。

 今までの比ではない。勢いよく壁にたたきつけられた。この戦いの中で傷がつかなかった壁が初めてへこむ。

 立ち上がろうとしたとき、またも正面からの圧倒的なエネルギーによって押し戻される。

 青年の目の前で老人と少年が両手を前に出した状態で硬直している。

 いや、硬直しているように見えるだけで、実際に彼らの間ですさまじいエネルギーのぶつかり合いがあるのだろう。そして、そのエネルギーの余波が、この部屋の全体に伝わっている。

 部屋全体が悲鳴を上げている。

 そんな中で青年は、何もできないままに成り行きを見守った。




 おかしい。とてもおかしい。何がおかしいのか分からない。そんなことを思いながら笑っている自分がまたおかしい。止まらない。

 おかしすぎて何も考えられない。けれど、体の方は動いている。

 これが無意識の行動というものだろうか?いや、自分で気がついているのだから、無意識とは違う気がする。

 じゃあ何だ、と訊かれると、分からない、としか答えられない。

 とにかくおかしくて考えられる状態じゃない。


 ああ、誰かがこっちに向かってる。

 誰だろう。確か名前を聞いた気がする・・・・・・聞いていなかったかな。忘れた。

 すごい顔。変な顔。おかしい。

 ああ、やめてよ、こっちに来ないで・・・・・・おかしくて死にそうだ・・・・・・




 まだ笑い続けている。

 何がおかしいのか。

 状況はとてもじゃないが、良いとは言えない。

 こんな時に、なんで笑っていられるんだ?


 今の少年の心の中は、誰にも分からない。本人でさえ、分かっていない。


 青年は考える。

 この状況が続くのはあまりいいことじゃない。いつかはどちらかが力尽きるだろう。

 しかし、どちらか、ではいけない。

 確実に、勝利しなければならない。

 ここで勝利しなければ、何も変わらない。

 変えるために、ここまで来た。

 変わらなければ、自分がここにいる意味など皆無。

 自分が変えなければ、誰が変える?


 しかし、青年は何もできない。

 ぶつかり合う力の余波で、壁に押しつけられている。

 これでは、ろくに動くことさえも、できはしない。


 そんなとき、変化が起こった。

 いや、実際には、それは変化とは呼べないだろう。

 ただ、あるものが、床へと転がり落ちただけだ。


 それは、少年の懐から落ちた。

 自動拳銃。

 自分の力のみを信じ、今まで武器に頼ったことなどなかった彼が、ここに乗り込むときに、これを作ったのは、ただ単に、少しでも早く突破するため。そう、手榴弾を誘爆させることくらいにしか使い道がないだろうと思っていた。

 しかし今、この自動拳銃という武器が、この状況を打開する唯一の手段に思えた。

 まるで神でも崇めているようだ。

 中央でぶつかり合う二人は、この出来事に少しも注意を払っていなかった。

 ただ単に気付かなかったのかもしれない。


 弾丸(たま)は、まだ残っていた。

 青年の行動は早かった。

 すぐに銃をかまえ、照準もそこそこに発砲した。

 鉄の銃弾が銃口からはき出される。

 銃弾の軌道は曲がった。

 当然だ。中心ですさまじいエネルギーが発生しているのだから。

 軌道の曲がった銃弾は、しかし勢いを削がれることのないまま、壁へとたたきつけられた。

 その壁は、エネルギー派を長時間受け続けたことによって、脆くなっていた。

 脆くなった壁をはがすことに、銃弾には十分な威力があった。




 弾は壁に突き刺さった。

 壁がはがれ、内側から機械がのぞく。その機械はエネルギーの激突に絶えきれず、火花を散らす。

 跳弾、跳弾。

 弾丸は部屋の中を飛び回り、同じようなことが部屋の中で何ヶ所も起こる。

 火花がぶつかり合って炎となる。

 部屋の気温が一気に上がる。

 しかし、中心にまでは炎は届かず、二人は未だ、ぶつかり合ったまま。


 足りないか・・・・・・

 青年がそう思ったとき、

 突然、部屋の中心で爆発が起こった。


 手榴弾だ。気温に絶えきれず、爆発してしまったのだ。

 元々そんなに上等なものではない。

 部屋の中を白煙が包み込む。不思議なことに、部屋の中心共々。

 これによる怪我はほとんど気にする必要はない。

 なにせ、やつの体はあり得ないほど丈夫だ。

 そして、白煙は目に入れたらかなりしみる。

 何も考えられないくらいに。

 使っていなかった手榴弾が一気に爆発したのだ。煙の量は半端じゃない。


 ほとんど気にしていなかったが、自分たちはまだゴーグルを付けたままだった。


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