第20章 変化
ちょっと短くなってしまいました。
何だろう・・・・・・
何なんだろう・・・・・・
このわき上がってくる感情は・・・・・・
怒りだろうか、悲しみだろうか、憎しみだろうか、恐れだろうか。
あらゆる負の感情がない交ぜになっている。
ただ、はっきりしていることがある。
あの狂った科学者を、倒さねばならない。
感情に支配されるままに・・・・・・何かに突き動かされて・・・・・・
また、立ち上がる。
「むう。まだ動くか。もう無駄だと分かっているだろうに。」
走り出す。
「あきらめが悪いな。何度やってきても結果は変わらん。」
グレイが手を突き出し、力を込める。
エネルギーの塊がそこに生まれ、
消え去った。
「何!」
目の前に突き出された手が見える。誰の手だろうか?
いや、そんなことはもうどうでもいい。
邪魔なものは消えた。後はこちらの思うとおりだ。
右の拳を固めて、たたき込む!
「ぐあっ・・・・・・」
誰かの声が聞こえ、
ズガァァァン
一瞬遅れて大きな音がした。
「な・・・・・・何が・・・・・・」
誰かの声がする。さっき突き飛ばしたのとは違う声だ。ということは・・・・・・誰だっけ?
まあ、それもどうでもいいことだ。
今は目の前の敵を倒すことに専念しなければならない。
笑い声が聞こえた。敵の声だ。
「なんと、な。似たような力を持っているわけか。」
何を言っているのだろうか?よくは聞こえない。
「これがやつの言っていた、阻む者、というやつか。おもしろい・・・・・・どこまで行ってもこの世は面白いわ。」
また笑い声が響く。
もう誰が誰なのか分からない。
体が何かを待ち望んでいる。
動く、動く。
ただ望みを叶えるために。
何だっていうんだ・・・・・・?
青年はただ、笑い続ける少年を見ている。
変わった。何かが。
何かが一瞬で変化した。
何が変わったのか分からない。
何を原因として変わったのか分からない。
ただ、その変化がもたらしたものを、認識することはできた。
今まで指一本触れることのできなかった老人が、壁にたたきつけられたという現象。
今までおちつき冷静でいた少年が、何かにとりつかれたかのように笑い続ける現状。
どちらも、信じられなかった。
だが、いつまでもじっとしているわけにはいかない。
信じられなかったとしても、この機会を逃してはいけない。
一気に押し切れるチャンスだ。行動しなければ。
なんとかして、倒すとはいかないまでも、ここを突破しなくては。
少しでも早く、油断をしているうちに、現状を理解している隙に。
彼の目的は、ただ単に科学者を倒すだけではないのだから。
立ち上がる。立ち上がりさえすれば、後は何とでもできる。
・・・・・・自爆装置、作動しました・・・・・・
耳に機械的な声が響く。
今の衝撃でスイッチが入ってしまったようだ。
まあいい。この研究所が崩れ去ろうがどうでもいい。
それよりもここで奴らを足止めする方が重要だ。
それならば、わざわざ作動させる手間が省けたと、喜ぶべきか。
この自爆装置で起こる爆発はすさまじい。
奴らは確実に命を落とすだろう。だが私は死ぬことはない。この組織も不死身だ!
爆発まであと一時間。もう少しタイマーを短く設定しておけばよかった・・・・・・
時間の感覚などとうの昔に消え去ってしまった。
一時間がどれだけの長さか分からない。だが、今まで感じてきたどの時間よりも長く感じるだろう。
さて、ここからが勝負だ。
それぞれの胸にそれぞれの思いを秘めて、それぞれがまた激突する。
最後に誰が立っているのか、誰も分かりはしない。
まして、その後がどうなるかなんて・・・・・・
もうすぐ完結するはずです。