第11章 直前
タイトルが厳しいですが気にしないでください。
「封印されているんだったら、何で今持ち出されているの?」
「封印されたのはずいぶん前の話だ。今再び研究されていたって不思議じゃないさ。」
「ふーん。そうなんだ。」
なかなか難しい世界だ。
「それにしてもひどいことするよね……この街には人がいなかったからいいけど、もし人がいたら、生きている人はいないだろうね。」
「ああ。そうだな。」
そのとき、僕はまた彼の顔に一瞬悲しさがよぎるのを見た。この街に人がいないことと、彼との間には一体何があるんだろうか……
「街がこんなことになったのは何年前?」
「おいおい、時が止まってるんだぞ。何年前もあるか。」
彼はさっきの雰囲気を少しも見せずにいった。全く強い人だ。
「そういえばそうだった……」
「まあ、時が止まる前までで考えるんだったら二年前くらいか。時が止まってからはどのくらい過ごしたか分からないな。なにしろ時間の基準になるものがない。心臓だって動いてないわけだし。」
そこまで言われて初めて気が付いた。確かに心臓が動いてない。よく思い返してみると、ここに来てから水の一滴も補給をしていない。そのくらい気付けよ、と言われそうだが、なにぶん今まで必死だった(はずだ)からまったく気付かなかったのだ。
「ということは、僕たち今生命活動していないってことだね。」
「そういうことだ。脳は働いているし、体も自由に動く。五感もしっかりしている。だがしかし、生命活動はしていないという不思議な物体だな。俺達は。ちなみにこうなったのは世界の時間が止まってからのことだ。」
「そうなると、どう動いたって疲れないのかな。」
「肉体的には疲れないさ。長時間動き続けるのは精神の方がついて行かないがな。それも逆に言えば、精神さえしっかり鍛えておけばどれだけ長時間でも動き続けられるってことにもなる。」
「じゃあ、あの特訓って言うのは……」
「あれは精神力を鍛えるっていうこともあったが、単に力を鍛えるって言うことの方が大きかった。いくら疲労しない肉体って言っても、絶対値が小さかったら結局意味がないからな。」
たぶん普通だったら訳が分からないってなっているだろうが、しっかり理解できている。改めてあの光の力は便利だ。
「さて、俺たちが武器を用意しているところに敵が襲ってきた。これがどういうことか分かるか?」
「いや、分からないよ。そんなに深い意味はないと思うけど。」
「深い意味、あるともさ。戦いの準備をしているところに襲ってきたんだから……これは宣戦布告だ。」
「えぇ!!そうなっちゃうの!?あの人達が単独行動をとっていたっていう可能性もあるじゃないか。」
というか、あの人達見る限りそうとしか考えられない。
あの人達はとても集団行動ができるような人達には見えなかった(数分間見ただけだが)。どう見てもただのちんぴらだ。封印されていたという爆弾、ブラック・コアをなぜ持っていたかは分からないけど、持っている数は少なくなさそうだ。爆弾を使った時点では僕達とあの人達はお互いに存在が分からなかったはずだから、意図的にねらった爆発ではないだろう。今日のように無差別に爆発を起こしているに違いない。たぶん楽しんでいるのだろう。新しいおもちゃで遊ぶ子供のような感じだ。そして彼がたまたま爆発に巻き込まれれば出世のチャンス。何も考えなしに突っ込んで今日のようにやられるのだ。こだわっているのではなく、たまたま。そのまま突っ込むのは単に力の差が分からないだけなのだ。そうに違いない。
しかし、それは所詮想像の域を出ていないため、何も言えなかった。妄想で物事を解決することはできない。
結構見てくれている人多いですね。