第9章 遭遇
ちょっと長くなりましたが、気にしないでください。
僕は身を刺す激痛で目を覚ました。どのぐらい気絶していたのかは分からないが、感覚からするとさほど時間はたっていないように感じる。
周りを見渡そうと思ったができない。大きななにかが頭の上に乗っているようだ。
ちょっと力を込めてみると、そのなにかは思ったよりも簡単に動いた。さほど重い物でも無かったようだ。もっとも、重い物だったとしたら僕はとうにつぶれていただろう。
僕はわずかに動く両手で軽く反動をつけると、今出せる力の全力を上に乗っているなにかにたたきつけた。
上に乗っていたなにかは軽く吹っ飛び、空中で粉々になった。
立ち上がった僕は、軽く周りを見渡して驚いた。
なんと、さっきまで僕たちがいた建物が、がれきの山になっている。とすると、僕はこのがれきの下敷きになっていたわけだ。それを吹っ飛ばせたということはかなり力がついているということだろう。いや、その前にこのがれきの下敷きになっていたのならつぶされていたっておかしくない。体が人間をこえているんじゃ無かろうか。などと、どうでもいいことを考えていると後ろから声がした。
「ヒャハハハハハハ!!ようやく見つけたぜ!!裏切り者ォ!!!」
声を聞いただけでもあまり頭のいい人とは思えない。その口から出てくる言葉を聞けばなおさらだ。あまりお友達にはなりたくないタイプだ……またどうでもいいことに思考が走っている……
とにかく僕は声のした方向に振り向く。そこには黒いフード付きの永井ローブを着て、さらにそのフードを深くかぶった(僕は服に関する知識をあまり持っていない。そのためこの言葉で想像できる姿と今そこにいる人達の姿が一致しないかもしれない。しかしそれは仕方のないことだ)人達が四人ほど立っている。
ついに来た。奴らはあの組織だ。
僕はあの男(声を聞く限りは恐らく。外見での判断は不可能)がさっき発した言葉の意味を考えてみる。裏切り者、というのは間違いなく彼のことだ。ようやく見つけた、というのは長い間探していたから出てきた言葉に違いない。まあ、あの男はあまり頭が良さそうに見えないから、言葉の意味を考えても何にもならないかもしれない。第一あれだけの言葉でそのままの意味以上を考えるのは不可能だ。
そういえば、彼はどこにいるんだろう。
周りを見渡す。もしかしたら見つからないんじゃないかとも思ったが、意外とすぐに見つかった。近くにいた方が良さそうだ。僕はとりあえず彼の近くに寄った。どうせ向こうからは見えるのだからどこにいてもそう変わりはない。
「まだあきらめて無かったのか?暇だな。お前らも。」
「ごちゃごちゃ言うんじゃねぇ!!今日こそはおとなしく捕まってもらうぜ。お前の罪は今までよりもさらに増えてるからな。お前には罰を与えなきゃなんねぇ」
「それで私刑ってか。単純だな。」
そういうと彼はこちらを振り向いて言った。
「力もないくせに調子に乗ってるような奴らだ。あいつら弱いからな。お前が出なくても俺だけで何とかするぜ。実戦を見て研究でもしてな。」
そこまで言うと、彼は男たち(一人除いて生別不明)に向かっていった。
向こうの男たち(もう面倒くさいので手前の男からA、B、C、Dと呼ぶことにしよう)は、彼が走ってくるのを見て構えた。しかし、
「遅ぇんだよ!!!」
既に彼の拳は一番奥にいたDのみぞおちにたたき込まれていた。
僕から見て左にいたCが右手を振り上げるも、やはりその動きは遅すぎた。その動きの間に右肩に人差し指が入っている。無理に握り拳でたたくよりもよほど威力がある。そして動けなくなったところに蹴りが入った。
右にいたBはその間に腰の小剣を抜き、後ろから斬りかかっていた。彼はそれを前に倒れ込むことで軽くよけ、再びBが剣を持ち上げるまでの間にあごにアッパーを食らわせた。
その間Aは僕に向かって走ってきていた。人質にでも取ろうと言うことだろうか。しかし、Aが腰から銃を抜き、
銃の安全装置を外し、
銃口を僕に向け、
トリガーに指をかけるまでの間に、
頭にかかと落としがきまっていた。
戦闘時間約20秒。彼が強かったのか、向こうが弱かったのか。恐らくはその両方だ。
遅くなりました。待っていた皆様すみませんでした。