アリバイがない!
45歳鬱で引きこもりの主人公が縁を切ったの元親友が殺害された。
犯人候補は何人かいたが、その中に主人公も含まれてしまっていた。
何故か・・それはアリバイがないということだった。
そんな中ひょうんなことから隣に住む31歳のサラリーマンと事件を追うことになる。
犯人は誰なのか?そして主人公のアリバイは見つかるのだろうか?
そして何故隣の住人が事件の真相を一緒に追ってくれたのか・・・。
ピンポーン・・トントントン・・・。
玄関のチャイム音とドアを叩く音が薄暗い静かな部屋で響いている。
「・・誰?・・そして今何時なの?・・」
私は今一体何時なのかも解らず、ベッドの中で枕元にあるiPhoneを観る。
ピンポーン
「澤井さーん!」
澤井とは私のことだ。
iPhoneの時計を観て昼の11時半過ぎと知った。
私は昨日何時に寝たんだ?などぼんやり考えながら今玄関の外にいる人の事を考える。
この私に客?いやいや、ありえない。どうせ勧誘とかだ。
私は無視して再び布団に潜る。
トントントン…
「…澤井さんのお宅ですよね?」
はい……あってますが……と心の中でひとりごちる。
すると私の名前を叫んでいた声と違う男の声が聞こえた。
「留守なんですかね?」
2人組のセールスマン??と思った矢先、先ほどの男がまた声を出す。
決して大きい声でもないのだが、小さい声でもない。
「んー…澤井さん。神奈川県警察署の者なのですが、少しお話を聞かせてくださいませんかねぇ」
!?警察!?
私は一瞬布団をはいだ。
警察が私になんの用?それとも警察とか言ってやはり何かの勧誘か詐欺か!?
とも疑った。何故なら、私が警察に聞かれるような事も話すような事も全く何も無い。
私はパワハラに会社であい、鬱で会社を辞めている。その会社には2ヶ月程度しかいなかったが、とにかくひどっかったのだ・・。辞めてから3ヶ月。今は生活保護に助けてもらって何とか生きている。
そしてずっと引きこもっている。外出といったら、週に1度近所のスーパーに買い物に行くだけだ。
そんな生活をしている私に警察・・。そう考えても何も結びつかない。
「石井さん、今日はとりあえずメモと名刺ポストに入れて出直しましょう」
「……そうだな……」
2人組の警察と名乗る男が去っていく。
私はベッドから静かに足を下ろし、ドアポストの中を確認した。
ポストには
【お時間ある時にご連絡ください。神奈川県警 石井】
というメモと共にその石井さんの名刺が入っていた。
確かに名刺には神奈川県警察と書いてあるが、とはいえ謎だ、何故引きこもりの私に警察が?何の用で来たの?
近所で何かあったのだろうか……いや、それともやはり詐欺か…
私どうにも理解できず考えこんでいた。
ベッドに戻ろうと思い、メモと名刺を一応持って、部屋に戻ってきた。
それと同時くらいLINEの着信音がした。
一瞬驚いたが、画面を見ると相手は母だった。
私はしぶしぶ出る。
「もしも・・」
「由奈ちゃんが殺されたってニュースで報道されているの!それに警察もうちにきたのよ。美嘉何か知らないの?あんたのところにも警察来たんじゃないの?」
もしもしを言い終わる前に母から信じられない話を聞かされた。
由奈とは中学の時知り合い、その後も長らく仲良くはしていたが、彼女のあまりにも自己中心的で自分勝手な性格にいよいよ私はつきあえなくなり、数年前に縁を切った。
「美嘉?聞いてるの?」
「聞いてるけど・・知らないよ。お母さんもしっての通り、私の家にはテレビもないし、新聞も勿論とってない。それに鬱で外にも出るのも怖くって引きこもっているんだよ?」
「それはわかってるけど、あんた本当に由奈ちゃんとは縁が切れてるのよね?」
「・・・そうだよ。3年以上前かないかな・・最後に会ったの・・・。」
私は何となくの記憶をさかのぼって母に答えた。
「とにかく、ネットでもニュースみれるんだからみてみてよ!もう本当びっくりよ・・・。」
「警察とは話したの?」
「話したけど、娘はもう縁を切ったって昔言ってたっていうのと、今病気で寝込んでるって伝えたわよ・・何かまずかった?」
「いや、何も・・本当のことだし・・・とりあえずネットで見てみるよ」
私はそう言って母との通話を終わらせた。
由奈が・・殺された??
じゃーやっぱりさっきの警察ってのは本物・・しかも実家にもきていたらしいし・・。
それよりも、由奈が殺されたって・・どういうことだ・・・。
私はiPhoneでネットニュースを漁ったが、由奈のニュースはすぐに出てきた。
【昨日〇月〇日、冴木由奈さん(45)が自宅で絞殺され、鋭利な刃物で傷つけられ死亡した。死亡原因は絞殺による窒息死で、亡くなってから刃物で刺されたとされている。神奈川県警では死亡推定時刻は〇日のお昼13時から17時と発表している。犯人の指紋などは今のところ検出されておらず・・・】
「・・・噓でしょ・・本当に・・由奈が・・・?」
ネットには彼女の中学の時の写真が出ていた。
確かに冴木由奈。私の元親友だ。
「はぁ、はぁ・・」
冴木由奈の死体を上から眺めて、そして何度も包丁で刺した。何分、何時間経ったのだろう。すっかり疲れきってしまった。
もう冴木由奈という人間ではなく、ただのぐちゃぐちゃになった人間らしき肉の塊だった…。
はじめは由奈の部屋にあったヘアアイロンのコードで首をしめた。
抵抗し暴れていたが、次第に大人しくなり、そして目を大きく見開いて息絶えた。
口からはだらしなく舌とヨダレが少し垂れている。
なんて不細工な顔なんだろう。
生きている時は45歳とは思えないくらい美人というか可愛らしくそんじょそこらの女優よりキラキラしていたのに、死体という肉の塊になった由奈は生きていた時とは全く違い、人違いではないか?と疑うくらいのものになっていた。
「さて…」
ぜぇせぇと息をしながら、この遺体をどうするか考え始めた。
妥当なのは山奥に埋めるとかだろうか…。
人を殺したことなんてないから全くどうして良いのか分からない。
「とりあえず、シャワー借りるぜ」
そう言って俺は鼻歌交じりに由奈の家のシャワーを浴びて、由奈の血と自分の汗を洗い流した。
シャワーを浴びながらあの肉の塊をどうするか考えたが、特に思いつかず・・というより、
考えるのも疲れ切ってしまって、このままほおっておこうと思った。
警察に見つかるのはもちろんわかっている。
でも、肉の塊をどこかに運ぶのも体力がいる。
こんな奴ためにこれ以上の体力は使いたくなかった。
指紋などの問題は特に考えていなかったが、一応自分が触ったであろう箇所をシャワー上がりに身体を拭いたタオルで拭いていった。
「・・・気持ち悪いな・・こんな奴に俺は騙されてたのか・・情けない・・。」
そう思いながら拭き終わったタオルに包丁を包んでリュックに詰め込み、
由奈の部屋を出た。
カギは合鍵でしめる。ドアノブに指紋がつかないように服の袖で手を覆いそしてカギをして
何事もなかったように由奈の部屋を出た。
「これでよかったんだ。あいつを恨んでいる奴は俺だけじゃない。合鍵だっていくつもあるはずだ。スッキリした。ククク…」
秋から冬になろうとしている夕方の空気は肌寒かった。
が心はスッキリしていて心地よかった。
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