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源氏物語について語る紫式部の手紙 ⑨
すべての項目を肯定しながら、最後に言いかけた言葉を遮られてバッサリと斬り捨てられた自らの意見。
少しだけ不満気な後輩蒐書官はその表情を隠すことなく口を開く。
「ということは、藤見坂さんは見当がついているのですか?」
それに対して、藤見坂はあっさりとこう答える。
「まあ、そうなる」
実をいえば、彼は後輩には知らされていない情報を主の代理人である男から事前に聞かされていた。
当然そこには後輩の言う矛盾を解き明かす要素も含まれている。
だが、彼は後輩にそれを伝えていない。
もちろんそれは彼が教育係として担当している鷲江の成長のため。
蒐書官は特別な例外を除きベテランと若手がペアを組むのはこのようにして経験を積ませるという理由があるのだ。
藤見坂は後輩蒐書官をじっとりとした目で眺め、それからもう一度口を開ける。
「では、問おう。どのような条件のときにそれが成立すると思う?」