源氏物語について語る紫式部の手紙 ⑥
四季家。
それは古くからこの国の闇を支配し桐花家とともに現在まで消えることなく存在している一族の名である。
そして、彼らはそれがわかる者だけにのみ自らの存在を誇示するからのように所属する家を表す四季のひとつに花名を加えたものをその名としている。
ただし、彼らの多くは世間と関りを持つことを避けているので、闇オークションとはいえこのような表舞台に姿を現すことはほとんどないのだが、藤見坂がその名を口にした女性だけは例外だった。
なにしろ自らのコレクションを増やすために度々闇オークションに顔を出しているその世界では有名人だったのだから。
「ですが、冬桜女史は典型的な蒐集家。自らが持つ貴重なコレクションを売りに出すなどあり得ることなのですか?」
後輩蒐書官の言葉はもっともである。
特にクスミのように一度手放せば二度と取りもどすことができないようなものばかりを抱えているような特別な蒐集家ならばなおさらである。
先輩蒐書官が口を開く。
「その冬桜女史だって本当はそうはしたくなかったのだろうな」
「では……」
「だが、そうせざるを得なくなった。そういうことなのだろう」
「どういうことですか?」
「おそらく理由はこれだ」