源氏物語について語る紫式部の手紙 ①
紫式部。
ある程度の年齢以上の日本人なら誰でもその名を知るくらいに彼女は有名な人物であるものの、実際のところその実像はよくわかっていない。
もちろんわかっていることもある。
そう。
彼女があの「源氏物語」の作者であることだ。
ただし、この時代の物語には珍しいことではなかったのだが、「源氏物語」も後世の者が自らの感性に従った添削をおこないながら伝えているため、そこに書かれた文章のすべてが紫式部オリジナルというわけではない。
いったい現存する源氏物語のどの部分が紫式部のオリジナルで、どこが後世の編者が手直しした部分なのか。
そして、紫式部オリジナルの「源氏物語」とはいったいどのようなものだったのか。
それが多くの人が知りたいと思っていることだろう。
それについては、多くの専門家が自らの研究結果を基にしてそれぞれの意見を述べてはいるが、それが本当に正しいのかは結局オリジナルと見比べるしかない。
だが、肝心のオリジナルは残っていない。
つまり、その答えは永遠に謎のままとなる。
もっとも、それは日の当たる世界での話。
その真実に近い者たちが住む別の世界ではそれについて少し違う言葉が語られているのだが。