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「やっと会えたね、いろは」


「あたしは会いたかった訳じゃないんですけどね」


憎まれ口で返すあたしに、薄く笑うヨウ=彩さん。不機嫌そうに見えるように唇を尖らせているあたしだけど、ヨウの顔で、こんな表情でこんな台詞を言われると、心の中がすごくポワポワしちゃってダメ。ああ、もっと声が聞きたい。


「もう、イジワルなこと言うね。心配しなくてもヨウを取ったりしないわよ」


そっと頬を撫でながら、囁く。


「やめてよ…」


「ごめんね。あたしも分かってなかったのよ、生きてる時は。でも今は知ってる、あなたのヨウへの気持ち。ここで何回も見せられたからね、甘々いちゃいちゃ催眠」


「は、はあっ? 見てたのっ? やめてよっ、覗くなんてっ!」


恥ずかしさに顔が熱くなる、頭の中が湯だって、ああもう…


「覗きって言われてもねえ、ここ私の家なんだけど」


ニヒヒと笑う。そして、急に真顔に戻る。


「ねえいろは、私ね、多分この世に未練がある。だから成仏できないんじゃないかと思うの」


こっちもつられて真面目になる。


「未練、って…」


「うん、私と、ヨウと、いろはの事」


新しいタバコに火をつけながら、ヨウ=彩さんは続けた。


「あたしね、いろはが好きだった」


は?


「ななななな、なにを言い出すんですか彩さん! だいいち、あの時ヨウにキスしたじゃないですか!」


「あれねー、あれはいろはに嫉妬して欲しくてしたんだ。だってヨウなんて親戚のガキだし色恋の相手じゃないでしょ」


何それ、呆れるわ。


「ヨウの方ははそんな風に思ってませんよ」


ジト目で言ってやる。


「うん、この部屋でずっと見てたら分かった。私、あなた達との関係、グチャグチャにしたんだね。ゴメン」


フンだ。あ、でもシュンとするヨウの姿、可愛いな。


「あたしに謝られてもな…」


「だからさ、私は思いを遂げたら成仏するから、そしたらいろはもヨウとうまくいくよ」


ヨウ=彩さんは、あたしを抱きよせながら宣言した。


「だから、いろは、キスしよう」


はああああああっっ?


「やだ、やめてよっ…」


迫られて、寸でのところで顔をそむけて逃げる。


「ねえこっちを向いて、僕の目を見て」


こんな時だけ、ヨウの言い方になるなんて! ズルいよぉ。あたしはヨウ=彩さんの言葉に逆らえない。


「そう、良い子…」


唇と唇が、触れてしまった。


「いろは、かわいい」 そういえば彩さん、よくあたしの事、「かわいい」って。ずっと妹みたいだって意味だと思っていたけどホントはそうじゃなくて…


ヨウの優しい目があたしを見つめていた。中身は彩さんだとわかってても、脳が騙されて受け入れてしまう。指先で、そっと、優しく首筋を撫でられると、こちらからギュッと抱きついてしまう。ヨウは意外と筋肉質なカラダをしている。それを実感して、あっと思い目の前の顔を見つめ直すと、そこには当然ヨウの顔があって、だけどいたずらっぽく笑う表情は彩さん。あたしは精神と身体を両方攻められているみたいで混乱してしまう。


「もうっ… やだ」


「いろは、いろはとヨウを見ていて羨ましかった。ずっとこうしたかった…」


あたしの身体を優しく撫でながら、彩さんは感極まったように呟く。


「彩さん、ねえ本当にずっとここにいたの?」


あたしは想像してしまった。ヨウとエッチしているあたしを歯噛みしながら見ている彩さんの姿を。それはホラーというよりは…


「ぷっ、ぷははははっっ!」


急に笑い出したあたしを、ヨウ=彩さんはキョトンとした顔で見つめる。


「何なの、急に」


「だって、だって、彩さんが悔しそうにあたし達を見てるところを想像したら、ふふっ。」


一旦転がりだした感情は止めることができない。ころころ笑い続けるあたしを、ヨウ=彩さんは優しく抱きしめてくれた。


「いろは、大好き。」


「はぁーっ、笑った。あたしも、彩さんとこうやってよく笑ったの、思い出したよ。」


そうだ、最後がポンコツ彩さんのイミフな挑発行為だったので忘れていたけど、あたしとヨウと彩さんがいて、この部屋はあたしにとっても、楽しい場所だったんだ。


あたしとヨウ=彩さんは抱き合って笑い合う。あたしはいつの間にか泣き笑いになっていて、涙を彩さんが指で拭ってくれた。何だかホンワカした空気。良かった、彩さんとこんな気持ちになれて。


「彩さん、あたしも好き」


〜〜〜


そうして、あたしの捻くれた彩さんへの思いは、すっかり真っ直ぐになった。 だけど、残念ながら男の子の身体はそれだけでは終われないのであった、


ばばーん。 次回、想定外の衝撃が彩さんを襲う! 乞うご期待、です。

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